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連作短編集が増えた理由

最近、連作短編集が増えた気がします。
短編小説集は売れないというのが、出版業界の定説だと思っていましたが、最近は違うようで、今年の本屋大賞ノミネート作品のうち3作品が短編集です。
と思って20年前の2004年本屋大賞ノミネート作品を調べてみたら、3作品が短編集でした。昔から一定数のファンがいるようですね。

最近は、短編集の中でも連作短編集が増えている印象です。データが見当たらなかったので、本当に冊数が増えているかわかりませんが、青山美智子さんの作品などが人気ですよね。
連作短編集とは、登場人物や特定のもので繋がった短編の集まりです。短編ごとに主人公が変わることもありますし、登場人物が次々と主人公になる連作短編集もあります。

(僕の印象が正しいとして)どうして連作短編集が増えているのでしょうか。個人的な意見になりますが、連作短編は長編と短編のいいとこ取りだからなのではと思っています。
長編小説が重宝されてきた理由は、壮大なテーマの物語を描きやすく、同じ登場人物と長く一緒にいられるなどのメリットがあるからだと思います。映画化しやすいのも、長編小説ですね。
ただ、長編小説は文字通り長いので、読むのに時間がかかり一気に読むのが大変です。しばらく経ってから読み直すと、筋を忘れてしまい、その世界に没入するまでに時間がかかることもあります。

短編小説なら一気に読めるボリュームなので、前読んだ話を思い出さなくても良いですよね。
ただ、短編も主人公や環境が違うので、新しい物語を読みたびに舞台を一から理解する必要があります。
新しい登場人物の名前を覚えて、この物語がどちらへ進むのか毎度把握しなければなりません(それが面白いのですけど)。

連作短編集なら、長編のように一度知った世界にずっと浸れますし、短いので一気に読むことができます。
連続ドラマやアニメみたいですよね。サザエさんやコナンみたいに、主要な登場人物や物語の舞台を読者が知っている前提で話を進めることができます。
連作短編の中には主人公が異なるものも多いですが、同じ世界観なので、一から全てを理解しなくて済みます。

長編小説の中には、短い話が連続するものもあります。章ごとにオチがついて、小さな物語が連続するような長編も多いです。
連作短編では共通の環境があり、最後に大きなオチがつくものもあります。
そう考えると、そもそも連作短編集と長編の違いは小さいのかもしれません。

今まで、僕は長編小説ばかり書いてきましたが、昨年「ひとりたちの余命」という連作短編集をAmazon Kindleで刊行しました。
長編小説「ふたりの余命」を読んでくれた人から「登場する死神の物語がもっと読みたい」という感想をもらったのが「ひとりたちの余命」を書いたきっかけでした。
ひとりたちの余命」は、死神ミナモトが登場し余命を告げることは共通していますが、他の登場人物と舞台は短編ごとに異なります。
初めて連作短編を書いて感じたのは、「筆が進みねえ」ということでした。フォーマットが同じなので、ネタさえあれば、一気に書き終えることができました。
思いついたネタやテーマを小説で表現するまでが結構大変なのですが、フォーマットが決まっていると、そこに流し込んでしまえば、物語ができ上がります。
連作短編集は、クッキーみたいなものかもしれません。クッキーの型が決まっていて、中に注ぎ込む具材次第で味が変わるような。

長編と短編のいいとこ取りである連作短編は今後も人気が続くかもしれませんね。





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