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小説家になる夢を信じられなかった

大学生の僕は小説家になる夢を持っていながら、普通に就職しました。仕事をしながら執筆するのは今では普通のことですが、当時は就職をせずに夢を叶えるために精進する人が一定数いました。
同級生の中にもフリーターをしながら俳優を目指す人がいました。

どうして夢だけを目指さなかったのか。
「普通」と言われる道から外れることが怖かったのだと思います。多くの同級生が就活をしている中で、その流れから外れる勇気がありませんでした。
中学、高校、大学といわゆる「普通」の人生を歩んできて、就職という次のステップを踏み外すことができませんでした。

悩んだ結果、折衷案として、編集者になることを希望して出版社への就職を希望しました。若くて無知だった僕は、編集者から小説家になるのが近道だと思っていました。多分、何名かの小説家が編集者出身だったのをどこかで見たのだと思います。あ、新聞社も応募したんでした。司馬遼太郎さんが新聞記者から小説家になったのを知っていたからでしょう。

結果的に、小さな出版社に就職しました。編集者を希望したのですが、なぜかシステム課に配属になり、そこでコンピューターの楽しさと将来性を知り、3年後に外資系コンピューター会社に転職することになります。

そこから商業デビューするまで25年かかりました。
就活のときに自分の夢を信じられれば、もっと早くデビューできたかもしれないと思うことはあります。
そうなっていれば、今よりも書店が多く、小説を読む人がもっといっぱいいた頃に自分作品を読んでももらえたかもしれません。

すべてはタラレバですし、若くて人生経験がない自分は満足な小説が書けず、生活が苦しくなり、小説家になる夢を断念したかもしれません。

それでも、どこかで小説になる夢を自分が信じられなかったことが、心のどこかに残っています。
でも、そうした後悔があるからこそ、今の自分は全力を尽くそうと思える気もします。どのような選択をしても、後悔は必ず残りますから。

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