AIは小説が書けるようになるのか
AIが小説を書けるのかどうかという議論をネットで見かけました。僕の予想では、早晩AIは小説を書けるようになると思います。
AIの進化は凄まじく、ちょっと前は静止画を描くぐらいだったのが、すでに動画を生成できるまでになっています。
「ストーリーを創作したり、人間の内面心理を描写したりできないのでは?」 という意見もあるでしょうが、文章の生成はAIの得意分野です。
言語は論理的なフォーマットで構築されています(そうでなければ、人間も他者と意思疎通できませんからね)から、プログラミングに置き換えやすいのです。
「イヤイヤ、小説家の文章はビジネス文書ではなく、知的な文学だ。AIに書けるわけがない」と思う人もいるでしょうが、小説も基本的には論理的なフォーマットに基づいて書かれていますし、小説の文章の多く(全部とは言いません)は誰かが過去に書いたものです。故事成語や慣用句などは最たる例ですよね。
「おまえのような新人作家の文章ならAIは書けるだろうけど、大作家先生の芸術的な文章は無理だよ」と言う人もいるでしょう。確かにそうだと思います。大作家先生が書くような傑作を完璧に創作するのは難しいと思います(少なくてもここ数年では)。
しかし、繰り返しになりますが、多くの文章表現はすでに書かれたものです。過去の文章を学習したAIなら、大量に生産される、いわゆるテンプレート的小説にかなり近いレベルの作品を創作することは可能になると思います(学習における著作権の問題はさておき)。
ただ、AIが書けたとしてもそれを人間が読みたいかは別問題です。
よく例えに出てくるのが将棋です。将棋の世界ではプロ棋士よりもAIの方がはるかに強くなっています。藤井聡太竜王・名人でもAIには敵いません。
高レベルの対局が見たいなら、人間ではなくAIの対局を見た方が良いのですが、多くの人は人間の対局を見ますし、AIが発達してもプロ棋士は存在しています。
陸上競技も同様です。バイクや車の方が人間よりはるかに速いからって、アスリート競技はなくなっていません。
じゃあ、誰もAIの小説を読まないかというと、将棋や陸上競技と小説は異なります。将棋の対局や陸上競技はリアルタイムで人間が行うから観ていて面白いのです。
小説は作家がリアルタイムで書く姿を楽しむものではありません。AIが書いた小説が、人間と全く同じクオリティで著者名が隠されていたら、見分けがつかずに読んでしまいますよね。
ここまで読んで「おいおい、おまえはAIが仕事を奪うのがわかっていて、小説家になったのか? おめでてーな」と思う人もいることでしょう。
AIが小説家の仕事を奪うと僕は考えていません(少なくても数年以内には)。
その根拠のひとつは、銘です。陶器や刀には作者の銘が入ります。名工の銘があるから、その作品に価値が出るのです。
同じようなものは他の人でも作れるかもしれませんが、銘の入っていないものの価値は低くなります。有名画家の贋作にそこまでの価値がないのと同様です。
誰が作ったのかも芸術には重要な要素なのです。
AIが人間に似せて小説を書いたとしても、名無しの作品と同様にそこまでの価値は出ません。そして、価値が出ないなら、そこに投資をして開発する人も増えません。
もうひとつの根拠は、物語の非論理性です。言語はロジカルですが、言語で組まれる物語が全て論理的かというと、そうではありません。常識では考えられない矛盾した展開や、感情に任せた人間の行動など、ロジックでは辿りつかない物語を綴った小説も多々あります。
むしろ、よくできた小説とはロジックだけではなく、矛盾と非現実的な要素を含んだものかもしれません。
過去に蓄積したデータを元に生成するだけでは、矛盾を含んだ物語を作るのは難しいと思います(現段階では)。
ただ、小説すべてを創作することはできなくても、人間の指示により小説の一部を書くことは現時点でもできます。
AIが作ったものを元に修正を指示していけば、ある程度の文章を書けるようになります。
創作にAIを使ったダメなのか。そんなことはないと思います。すべてを作者だけが行う必要はないです。漫画家さんはアシスタントを雇います。小説家は単独で作業することが多いですが、PCや辞書、ネットで調べ物など、さまざまな資料やグッズにサポートしてもらいます。
どのような「道具」を使っても、作者が責任を取り、著作権違反をしていないのであれば、それらの使用を止めることはできません。
少し前に、ワープロやパソコンで小説を執筆するのは邪道だと言われていましたが、今では多くの作家さんがパソコンを使っているのと同様です。
もうすでに、生成AIを使いこなしている作家さんもいらっしゃいます。AIが人間の小説家に取って代わるのは先かもしれませんが、ひとつしての道具として、AIは小説家をサポートするのは普通の行為になるかもしれません。
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