父と母
仲の良いご夫婦ですね。お父様は嫌な顔ひとつせずにお母様お世話をされて。
と施設の方に言われてびっくりした。自宅にではそんな光景を見たことがない。
母にとっては何もできない駄目な夫。その世話をするのが自分の努め。
愛情や思いやりが、あるのだろうかと思われるほど父を悪く言った。
父は世話をされるのが当たり前で
自分が自立していないことに気づいていない。
身体が思うように動かなくなってから、母はその苛立を父にぶつけていた。耐え切れなくなった父は怒ってどなる。怒鳴りつけられたと言って母がなきながら私に電話してくる。
はた目には仲が良いようには見えない。共依存のようにも思える。
父の通院にも母が付き添い、医師の質問には母が答える。着る服は母が用意いて、母の心づもりと違う物を着ているとなじりながら着替えさせる。自立した大人として扱っていなかった。父もぶつくさ言いながら、結局、母の言いなりになる。自分ひとりでは生活できない。
たしかに父の退職後は2人であちこち旅行し、アルバムには旅先で父が撮った母の写真が沢山ある。どこに行くにも2人で出かけていた。仲が良いのかもしれない。
夫婦の間にはふたりにしか分からないものがある。私にはよく理解できないけれど強い結び付きがあるのだろう。どの夫婦も、みんなそうなのだ。