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入社半年でエンタープライズ営業攻略できたノウハウ

フルカイテン株式会社にてフィールドセールスチーム リーダーを務めております金子と申します。
フルカイテンにジョインし8か月(2024年9月現在)ですが、フィールドセールスの”リーダー”というポジションに任命頂きました。
社会人歴12年の全てのキャリアを営業に費やし、経験してきたことがフルカイテンでも良い結果を生み出せた要因となり、社内でも評価頂けたのだと認識しています。

フルカイテンは小売業の在庫課題解消に大きく貢献することができるとても魅力的なSaaSプロダクトです。
しかしながら一部の業界を覗いてはその認知度および実績はまだまだで、裏を返せばとっても伸びしろのあるプロダクトとも言えます。

この伸びしろを大きく塗りつぶしていくのが私のようなフィールドセールスであり、フルカイテンの大きな飛躍のために重要な役割をになっています(私はそう思っています)。

そして今、フルカイテンのフィールドセールスの最重要missionになっているのが『エンタープライズ攻略』です。これはフルカイテンだけではなくほとんどのSaaS企業が取り組んでいる最重要課題ではないでしょうか。

私は『エンタープライズ攻略』とは一部のトップセールスだけが数字を作れるようになることが達成条件ではないと思っています。重要なのは再現性です。
『エンタープライズ攻略』の手段を言語化し、他者へもスキル譲渡ができるようになって初めて攻略という目標達成ができるのではないでしょうか。

そこで今回私は、エンタープライズ攻略の再現性の取り組みもかねて記事を書いてみたいと思いました。

フルカイテンに入社後6か月目で年商1,000億、従業員5,000名以上の大手小売業の受注ができました。

先ずは弊社社員に、そしてこの記事を読んでくださった営業の皆様にこの案件の受注ストーリーを共有することでエンタープライズ攻略の参考になれば幸いです。

略歴

商談の流れ

  1. 初回商談

    1. 明確なゴールを設定する

    2. 顧客の現状/課題/問題/緊急度をヒアリングする

  2. 仮提案

    1. 現状とありたい姿を顧客と合意する

    2. キーマンと案件を阻む人物を特定する

  3. クロージング

    1. 稟議フローを正確に把握する

    2. 事務手続きを事前に完了させる

  4. まとめ

1.初回商談

今回、紹介するエンタープライズ案件の概略は次の通りです。

・社名:某社
・年商:1,000億以上
・従業員:5,000名以上
・業態:小売業
・案件流入経路:
- 2024年リテールテック(展示会)にて弊社ブースに役員が来場。在庫の販売予測をもとにAction(お店間での在庫の移動、値引きetc)を実行する、というプロダクトコンセプトに共鳴され、別日でのプロダクト紹介機会を得る。
・初回商談出席者:
- 役員(事業本部/事業部長を兼務)
- 現場/部長(店舗運営部=店舗の売上・粗利確保のためのサポートを行う)
- 現場/課長
- システム部

私が初回商談の際に実施していることおよび目標にしていることは次の3点です。

1)商談のゴールを設定する
2)提案に必要な材料をヒアリングで集める(現状、課題、問題、緊急度)
3)キーマンの特定とブロッカー(案件進行を阻害する人物)の確認

1)については「仮提案書のレビューを行う日を獲得すること」を目標に設定しました。ゴール設定に重要なことは商談対象者のレイヤーに合わせてできるだけ具体的なゴール設定をすることだと思っています。今回は初回商談から役員が出席されており、決裁権に近い方を相手にするので次回における課題解決のための手段とスケジュールを合意する機会を作りたいと考えていました。この商談ではまず「次回の場」をセッティングして終えることを目標にしました。

この仮提案を行う際に魅力的な提案書にするために必要な要素が2)「提案に必要な材料をヒアリングで集める(現状、課題、問題、緊急度)」となります。今回の案件では次の通りこれをヒアリングすることができました(できるだけ簡素にまとめております)。

【現状】
・よくある「滞留在庫を消化」という課題は1年前からの取り組みで解消できており、今、現場として取り組んでいるのは売上の最大化

【課題】
・季節やイベントを絡めたシーズン品の消化が、より計画的に実施できれば強気な発注が叶い、売上増加に寄与するはずだが、根拠を持った計画が立てられていない

【問題】
・販売計画が在庫管理担当者の属人的判断によるものになっており、こんなに沢山不要なのでは?もっとあったら沢山売れてたのでは?の確からしさがわからない
・一人当たりの担当商品数が数万単位になっており、在庫管理の業務負荷も非常に高い、業務削減が現場管理者の重要missionになっている
・各店舗の売上を最大化させるためのアイディアはあるものの、店舗側に施策の実施権限があるので本部でコントロールできていない

【緊急度】
・「いつまでに」という期限は無いが、重要度の高い課題と認識している

また、エンタープライズ攻略をするうえで、できるだけ早いうちに、3)「キーマンの特定とブロッカーの確認」を行うこともとても重要です。キーマンを正しく特定し、こちら側に引き入れることがクロージングの確率を引き上げるとともに早期クロージングのためにもとても重要であることは皆様もご承知の通りです。
しかし大手企業の商談では自身がいない社内協議の場での登場人物が多く、この中に反対意見を持つものがいるために、知らない間に前向きに進んでいたはずの案件が停滞するということが良くあります。

最悪、受注目前のところでひっくりかえされることもあります。
これらのリスクを早い段階で少しずつ潰していく活動が着実に大手企業案件を進めるために重要であると私は認識しています。

今回の案件も、初回商談を単なる「機能紹介」の場として終えずに、1)2)3)のように目的を明確にし質の高い提案を行う準備ができたことが結果的にクロージングに繋がったと振り返っています。

2.仮提案

初回商談時に仮提案日までお約束できたので前回商談時のゴールは達成されました。仮提案日を頂けるということは先方のこちらへの期待度も低くないということなので、出来れば1週間以内に仮提案日は設定できるようにしています。

 私が仮提案書の内容で最も重要視していることは、冒頭でお客様のイメージする「現状とありたい姿」を示し、『これであってますよね?』と問いかけ、「うん」と言わせることです。このときに、私が整理した「現状とありたい姿」にお客様との認識のずれがあっても良いのです。
その場で素直に聞き、その場でお客様の考える「現状とありたい姿」を確認できればそれだけでもこの案件は一歩前進した、と割り切ってしまいましょう。

『現状こうだからこうなりたいんですよね?』が合意できていない案件は絶対クロージングにたどり着きません。お客様とこれからの取り組みのゴールを合意することがこの段階で最も重要なことです。
 「現状とありたい姿」が合意できれば後はこちらがハンドルを握って進行しやすくなります。

『現状とありたい姿についてOOさんと私とで目線合わせができました。現状からありたい姿になぜ向かわないのか?このギャップこそが御社の課題です。具体的には「1.xxxxx。2.xxxxx。」です。この課題を払拭できればありたい姿にぐっと近づくということが言えるので、この課題解決を我々が次の手段で提案します』
上記のような論調で弊社プロダクトによってありたい姿に到達できそうという期待感を最大化させるようにしています。

エンタープライズ案件ではこの動きを複数回取ることを余儀なくされる場合があります。私の案件がこれです。

この案件ではもともとは役員をキーマンに設定し、現場の課長がブロッカーになると認識していました。
「滞留在庫促進はできている、今やるべきは売上の最大化である」という考えの役員に対し、私のこれに対する解決提案は役員には刺さっていました。しかし、横で聞いている課長の表情はあまり明るくない。

ここで重要なことは、大手企業では一部の役員のトップダウンな進め方では案件は停滞しやすく、実際にプロダクトを使用する担当者ともコンセンサスを得なければならない、ということです

この担当者がイコール課長だったわけですが、何が理由かわからないものの課長は乗り気でないことが表情から感じられたので、私は「役員のいない場で、現場の業務について理解させてください」という理由で課長以下店舗現場の方に話を聞く場を頂戴しました。結果的にこの動きが正しい動きだったためにこの案件はぐっとクロージングに向けて動き出すことになります。
このヒアリングの場でわかったことは次の3つです。

1.役員が解決できている、言っていた在庫消化の手段は実は、現場のスタッフに大きな負荷の掛かっている業務になっている
2.現場が弊社プロダクトに期待していたのは「業務工数の削減」
3.役員が目指す「売上向上」は課長以下ももちろん成し得たい目標であり、業務工数削減とこれが両立するのであればとても協力的になってくれる

課長以下の皆様の期待値の最も高いことは「業務工数削減」である、且つこれは役員の目指す売上増加にも向けた取り組みになることが再認識されました。

このやりとりがあったおかげでブロッカーの可能性のあった課長は協力的になり、且つ役員と課長の間に立ち、やり取りくださった部長が現場の意思を反映しながら業務削減を実現する基盤構築を一緒に進めるということに強く賛同下さり、役員任命の元、協力に推進下ることになりました。

3.クロージング

顧客内に強い賛同者もつくることができ、いよいよクロージングが見えてきました。この時にやらなければならないことは次のとおりです。

1)決裁フローの確認
 ・誰が起案し、誰(複数人)の承認が必要で、どんな場で決裁されるのか(会議、電子承認etc)
2)事務的な残タスクと管轄部署
 ・利用規約(法務etc)
 ・NDA(法務、システム部etc)
 ・セキュリティチェック(システム部etc)
3)案件がひっくり返る可能性の考慮
 ・今まで登場していなかった人物で承認を得なければならない人物はいるか

上記を各工程に掛かる時間とともに詳細に確認しておくことが重要です。
今回の案件では最終決裁は定例役員会での起案でしたので、3)「案件がひっくり返る可能性」の確認が最も注意が必要でした。
ほとんどの役員は私の面識が無い人物であり、役員会議の場に私はいませんので、どのような反対意見があるかわかりません。なので私は、当日のプレゼン内容を事前に担当者とすり合わせ最も訴求すべきポイントを確認することと、役員会の登場人物の把握を実施しました。
ほとんどの役員へは弊社プロダクトの導入意向は事前に頭出し済みとのことでしたが、そのうち2名は役員会議当日に話を聞く人物と判明したので事前に手を打つことを計画しました。
1名は経営企画部長とのことで、本プロジェクトの意義を事前に伝え、必要であれば私からもプレゼンを行う計画でした。結果的に担当者の説明のみで経営企画部長の理解を得ることに成功しリスクの1つは潰すことができました。
残りの1名は総務部長であり、利用規約について指摘があることは充分想定されるとのことだったので、利用規約精査は早期に実施頂き、法務部からの依頼ごとは全てクリアしてから役員会議を迎えることに成功しました。

結果、役員会議では細かな指摘事項はあったものの、契約開始については承認がおり、弊社との取り組みが開始するに至りました。

4.まとめ

自身の案件を振り返る形で既述してまいりましたのでわかりにくいところや説明不足なところがあるかもしれません。
 最後に『エンタープライズ攻略』に大事なことを私なりに挙げるとすれば、如何にクロージングを阻むリスクを排除できるか、ということになろうかなと思います。
そのためには、お客様が言っていることを常に疑いながら、とことんネガティブな発想を持ち続ける必要があると思います。

営業とは常に数字にこだわる生き物です。そのために数字に追われるプレッシャーもとても大きく辛い職種ですが、このプレッシャーを抱えながら、盤石な案件ももしかしたら失注してしまうかもしれない、と日々おびえられる人間が強い営業になるのかな、と思っています。

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