傲慢、色欲 1988
英会話に通っていた時、彼女と出会った。名前は理佐という。彼女は金融機関に勤めていた。会社帰りなのでいつも清楚なスーツを着ていた。身長は168cm。すらっとしているが、胸は大きく、スカートから伸びる足はとても綺麗だ。いつもヒールを履いているので、さらに足が長く見える。
俺は彼女と付き合い始めた。俺は彼女の体が好きだった。ウエストは細いのに、胸とお尻が大きい。彼女もそれを自慢できるものと自覚していた。3回目のデートの時、タイトなミニのワンピースを着てきて、どう?って聞かれた時はマジでむしゃぼるようにエッチした。
それから、彼女は俺の求める格好をするようになった。
髪の毛は、ブラウンに染めていて軽いパーマをかけている。俺はどんどんセクシーな服を要望した。極ミニスカートに高いハイヒールを履かせ、小さめのシャツを着てもらい、彼女とデートをする。マニキュアも口紅も赤だ。歩き方もとてもセクシーである。街ですれ違う人々は、彼女の魅惑的な体に視線を投げかける。そういうことも快感であった。夏、海に行った時には、彼女の体にはどう見ても小さいサイズのビキニをつけて、俺は日焼けした体に金色のビキニパンツをはいてビーチを闊歩した。2人共思い上がりをしていた。
会うたび会うたびセックスした。時には彼女の会社の階段で、制服を着たまましたり、おもちゃを使ったりした。SMだってやってみた。
俺も彼女も、快楽に落ちていった。ただただセックスする為に会った。そして他のことはどうでもいい。親も他の友達もどうでもいい。ただ、快楽の海に溺れた。彼女は会社も辞めてしまった。セックスしていない時はよく喧嘩になった。
それでも一年くらい付き合った。彼女は、別れたいと言った。このままではお互いダメになってしまうから。そう言って、彼女から別れた。俺は、頭も心も空っぽな人間になっていた。そして、周りには誰もいなくなっていた。
憤怒、暴食 1992
優香は小学六年生の時の同窓会で再会した同級生だ。22歳になる。暑くむしむしする夏の夜だった。同窓会のあと、二次会には行かず、2人で抜け出してバーで飲んだ。長めの綺麗なストレートの黒髪が素敵な女性だ。昔話で盛り上がり2人は気分が良くなりそのままホテルへ行って照れながら、セックスした。大人になった優香は、当然だが手足も伸びて、身体もくびれて胸も膨らんでいた。最初はお互い照れながらしていたが、最後は気持ちよくなり、汗ばんで呼吸も早くなって、見つめ合ってイった。
彼女の家は豪邸で庭には池がある。父はマンション経営を営んでいる。要はお嬢様だ。
俺の家も、貸し家をしていて、空いている家に俺は住んでいた。なので優香は、よく泊まりに来た。季節は冬になっていた。
来週の金曜日は、2人で俺の家でキムチ鍋をやる予定だった。日曜日にあれこれ鍋とか取り皿とか道具とかを買いに行った。当日になった。当日の食料は優香が会社を早めに切り上げ、デパートで買出ししてくることになっていた。が、俺はこの日は会社の忘年会だったことをすっかり忘れていた。
俺の家で段取りしている優香に電話したら、そんなの断って。
って言ってきた。ごめん、俺新入社員だし、えらい人も全員参加する。ドタキャンは、やばい。
優香には申し訳ないけど、会社の忘年会に参加した。
会社での忘年会。何度も何度もポケベルが鳴る。外に出てかけ直すと、ねえ、どこにおるの?早く帰ってきて。
今すぐ帰ってきて。繰り返しだ。ポケベルをバイブにして上着に入れた。結局先輩に二次会まで強引に誘われて、終わり次第タクシーに乗って家に帰った。
彼女はテーブルに座っていた。
鍋はもう食べ終わっていた。2人分を1人で食べてしまったようだ。うどんまで食べてあった。
優香 何時だと思ってるの?
俺 だから忘年会だって。会社の。
優香 行かなきゃいけないの?
俺 会社の忘年会だよ。
優香 はっ?私の気持ち考えたことある?
俺 だから仕事と同じじゃん。
行かなかったら良くないよ。
優香 何が良くないの?
俺 新入社員だし、立場だって悪くなる
し。
優香 参加しないだけで立場悪くなるの?
優香 私に謝って!
俺 ごめんね。
俺はよくわからず、言った。
彼女は、立ち上がり、鍋をシンクの中に叩き入れた。
ドンっと音が響いた。
確かに、彼女は、本当に楽しみにしていたのだろう。あの鍋は2人でいろいろ見て選んだやつだ。
冷蔵庫を開けると、スーパードライと、グラス、そして彼女が作ったつまみが冷やしてあった。
そんな彼女の気持ちを俺は踏み躙ってしまった。彼女とはその後、二度と会うことはなかった。しばらくして同期から連絡があった。優香にコンビニで話しかけられて、最初は誰か分からなかったらしい。すごく太っていたようだ。フライドチキンやたくさんのお菓子、アイスクリームを買っていたらしい。
嫉妬、怠惰 1996
真美は、とても明るくて人の気持ちを理解できる人だった。彼女は、俺のことをどんな時でもまず、いい方向に捉えてくれる。俺が会社の上司の愚痴を言うときも、最悪だね。って共感してくれる。俺が間違っていることはきちんと注意してくれるけど、基本的に俺のことを認めてくれる。まずは第一に俺のことを考えてくれる。そんな彼女と一緒に暮らしたいなって思う。俺は一人暮らししている。なので彼女には合鍵を渡した。
いつの間にか、ほぼ同棲していた。とても楽しい期間だった。料理も作ってくれたし、朝俺より早く布団から出て洗濯もしてくれた。キッチンも、使いやすいように棚とか付けてくれた。そして、エプロン姿の彼女の後ろ姿が俺は大好きだった。高校時代は、テニス部だったらしく、肌の色も健康的な色をしていた。頭の形がよく、ショートカットヘアがとても良く似合った。キスする時にさらさらのとても指通りのいい髪を、俺はよく触ったりした。いい匂いがした。
女性の友達も多い人だ。
真美は、俺を信用している。
なのに俺は、そんな彼女の気持ちを裏切ってしまった。
たまたまキャバクラで仲良くなった女の子がいた。今日真美は友達と旅行に行くって言っていた。俺は女の子を部屋に連れ込んでセックスした。使い終わったコンドームは、蓋付きのゴミ箱に捨てた。その中にはその子と食べたマックの袋とかも入れた。
次の日、俺は会社から帰ったら、彼女がいた。こたつに入って横になっていたが、目は天井を向いたままだった。俺が部屋着に着替えて、こたつに入っても何も喋らない。
俺 どうしたの?
真美 昨日誰か来た?
俺 いや。
真美 コンドームあるんだけど
ゴミ箱の方を見たら、袋が出されてあった。
俺 あぁー、オナニーする時使ったやつ。
真美 ふーん、そーなんだ。
よく見ると、口紅の付いたマックの紙ナプキンが出してあった。
彼女は、そのままずーとこたつから出ることがなかった。
次の日、彼女は、会社へ出かけていった。夜帰ったらまたこたつにいた。何もせず天井を見ている。食べ終わったコンビニ弁当がこたつの上に置きっぱなしになっていた。明日は土曜日だ。どこかドライブでも行こうと思った。朝、彼女はトイレ行ったりするだけで何もしようとはしなかった。ドライブに誘ってもそんな気分じゃないって言った。昼頃になった。
彼女 お腹すいた。
俺 パスタでも食べにいこ。
彼女 なんか買ってきて。
俺は近くのコンビニへ行って青じその入った和風シーチキンパスタとカルボナーラ、ペットボトルのレモンティーを2本買ってきた。
真美の好きなアーモンドチョコも買ってきた。
彼女は、起き上がってレモンティーを少し飲みカルボナーラを食べた。
そしてまた何もすることなく寝てしまった。
いつも俺のことを考えて、おそらく結婚を考えていたと思う。全て俺を受け入れてくれていたのに、俺は彼女を裏切った。彼女に嫉妬させ、心の傷を負わせ、怠惰な人に変えてしまった。
案内人 2000
7つの大罪に、嫉妬、怠惰、傲慢、色欲、
憤怒、暴食がある。あと一つは強欲だ。7つの大罪の絵画には、裁判官が悪そうな人から賄賂をもらっている絵が描かれている。それが強欲だ。
キリスト教では、7つの大罪を犯したものは地獄に行くとされている。俺が付き合った彼女らは、少なからずそれぞれの6つの罪を2つずつ犯してしまっている。ただ、彼女らをそれらの罪に導いたのは、俺なのだ。彼女らの心を傷つけて、踏み躙り、それがスイッチとなって彼女らの暗黒面を心の奥底から引き出したのだ。この俺が彼女らを地獄に導いた案内人なのだ。
どのような罪にも、引き金があると俺は思う。俺が彼女らのことをもっと考え、正しく思い、正しい行いさえしていれば、地獄に誘因することはなかった。罪源は全て俺なのだ。なぜ俺は人を不幸にしてしまうのか?俺は一体何をするために生まれてきたのか?
俺には愛がない。俺は愛されることは相手に求める。しかし、自分のことしか考えていないのだ。いや、自分のことも考えてない。相手のことも自分のことも愛していない、ただ好き勝手に生きているだけの生き物だ。
地獄へ導く案内人だ、、、。
注意せよ注意せよ、神がみている。
その絵の真ん中には、神の目が描かれており、愚かな人間を見つめている。
完