「白切鶏、広東魔法ソース添え」
店はいつものように賑わっていて、厨房も忙しい。熱気が立ち込める中、皿がぶつかり合い、調理道具がきらきらと光る。そんな中、他人の目を盗んで、陳建國が何か荷物を胸に抱えて、店の裏手に出ていく。彼の目は周りに気づかれないようにうろたえていた。
林麗華は、忙しく客をさばいている。彼女の笑顔は明るく、お客様たちの心を引き付ける。だが彼女は建國がいないことに気づく。
「建兄!白切鶏(パイチェーケー)、一!蒸し鶏よ!」
返事がない。
「建兄!建兄!」
三人組の女性客が点心の蓋を開ける。
「ここの点心って蓋を開けると、他の店より甘い香りが強いのよね」
「そうそう、で、デザートが欲しくなって、つい食べ過ぎちゃうのよ。」
それを聞いた麗華がはたと気づく。彼女の目がキラリと光った。何かを感じ取った彼女は、店の裏口を出て、路地を眺める。そこに背中を丸め肩を震わせている建國がいた。
「やっぱり。」麗華は心の中で合点した。
「今日は点心多めでうれしい収穫になったなぁ。」
建國は胸元に抱えていた物を木箱に並べていくようだ。
「まずは、馬拉糕(マーラーガオだろ。」
熱々の中華風スチームケーキが木箱に置かれる。
「そして、蒸しパン(バオズ)だろ。今回はカスタードにしたぞ。」
これもまた熱々の蒸しパンが木箱に並べられる。
その時、背中から黒い影が近づき、手元が暗くなる。
「ちょっと、手元が見えないじゃないか!」
鬼の形相で麗華が言った。
「建兄ぃ!」
建國が振り返り、彼女を見る。
「あ、麗華。何?」
「何じゃないわよ、建兄!またつまみ食い?もうそれはつまみ食いじゃないわ。掴み食い、いいえ、抱え食いよ!」
「忙しいんだから、厨房に帰って仕事なさい!」
とぼとぼと厨房に向かう建國。
ただ、通りすがる時に麗華が建國の手をつかんだ。
建國の手に「糖不甩(タンブウェイ):米粉の団子」が握られていた。
「置いてけ。」
麗華が冷静に鋭く注意した。
さらに小さくなった背中を見せながら建國が裏口から厨房に戻っていった。
「しかしまぁ、あれだけお客様のお料理を蒸しながら、これだけの物をよくこしらえるわねぇ。」
怒り顔だった麗華のほほが緩んで、一つつをかみあげた。
「雪山飛狐(シュエシャンフェイフ)じゃない!建兄のこれ最高なのよね。」
麗華はココナッツミルクを使った蒸しプリンをまじまじと眺めた。
「今日だけ、今日だけ許してダイエットの神様!」
麗華は建國を許したのだから、神様も私を許してくれるはず、と、ついでに建國が作った点心を口に運んだ。
麗華の顔は満面の笑みでいっぱいだった。
材料:
鶏肉(胸肉またはもも肉):1枚
塩:適量
生姜:1片(薄切り)
長ねぎ:1本
水:適量(鶏肉を蒸すため)
広東魔法ソース:適量(お好みで)
レシピ:
鶏肉に塩をまぶし、15分ほどおいておく。
蒸し器に水を入れ、沸騰させる。
鶏肉を蒸し器に入れ、薄切りにした生姜と長ねぎを上にのせる。
蓋をし、鶏肉が完全に火が通るまで蒸す。鶏肉の厚さにより、蒸す時間が異なりますが、一般的には15-20分ほど。
鶏肉が完全に火が通ったら、蒸し器から取り出し、冷ます。
鶏肉が冷めたら、約1cm幅の薄切りにする。
皿に盛り付け、広東魔法ソースを添えて完成。
注意:広東魔法ソースの味が強いため、鶏肉に付けすぎないよう注意してください。お好みで、鶏肉を切る前に広東魔法ソースを少量かけるか、切った後に別の皿に広東魔法ソースを入れ、ディップして食べるようにしても良いでしょう。