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糖尿病とお米の関係【管理栄養士】
先日YouTubeで動画を見ていたら、
「日本の糖尿病患者は大きく増加しているが、米飯の摂取量は年々減少している。よって糖尿病の原因は米飯ではなく、むしろもっと食べるべきだ」
という主張がされていました。
私はこれを見て、とても危険な主張だなと感じました。
今日はその理由と私の意見を、管理栄養士の立場からお話ししたいと思います。
糖尿病患者は本当に年々増加しているのか?
まず前提となる「日本の糖尿病患者は年々増加しているか?」について考えてみたいと思います。
確かに動画で示されていた厚生労働省のデータを見ても、患者数は年々増加しています。
しかし、これは主に日本の人口構成が高齢化していること、そして高齢者の方が糖尿病を発症しやすいことが要因と考えられます。
その証拠に、年齢調整後の糖尿病患者の推移*を見てみると、この10年程度で男性では微増、女性では横ばい~微減で推移していることがわかります。
*厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、2009年から2019年の10年間で、年齢調整後の「糖尿病が強く疑われる者」の割合は、以下のように推移しています。
男性:12.6%(2009年)→ 13.8%(2019年)
女性:7.8%(2009年)→ 7.7%(2019年)
したがって、動画配信者の主張には疑問があると言わざるを得ません。
糖尿病と米飯摂取量の関係について
次に、糖尿病と米飯摂取量の関係についてです。
確かに一部例外的な研究報告も存在します。たとえば、南スペインで行われた研究では、白米の頻繁な摂取と糖尿病リスクとの間に負の関連が認められたと報告されています(White rice consumption and risk of type 2 diabetes.Soriguer et al., 2013)。
しかし、多くの研究では「白米の摂取量が多いほど糖尿病リスクが高まる」と報告されています。
例えば、アジアと欧米の集団を含むメタアナリシス研究では、アジアの集団において特に強い関連が観察され、白米を1日1回食べるごとに糖尿病リスクが11%増加することが示されました(White Rice Consumption and Risk of Type 2 Diabetes: Meta-Analysis and Systematic Review. Hu et al., 2012)。
さらに、2010年のコホート研究でも、白米の摂取量が多いほど2型糖尿病のリスクが有意に高まることが報告されています。特にアジア人ではその傾向が顕著であることが確認されています(White Rice Consumption and Risk of Type 2 Diabetes: Meta-Analysis and Systematic Review. Hu et al., Diabetes Care)。
この主張が危険な理由
私がこの動画に危険を感じた理由は、視聴者がこの主張を信じ、米飯の摂取量を増やした結果、血糖コントロールが悪化し、将来的に糖尿病を発症するリスクが高まる可能性があるためです。
実際に動画のコメント欄には「ぜひやってみたい」といったコメントも複数見受けられました。
動画の配信者は、不特定多数の視聴者に影響を与える可能性があることを自覚し、発信内容の根拠を十分に検証した上で情報を提供する責任があると思います。
また、視聴者側も動画の内容を鵜呑みにせず、科学的根拠を確認する姿勢を持つことが大切です。
まとめ
以上、動画内の「糖尿病にならないために米飯をもっと食べるべきだ」という主張について、科学的な観点から考察してみました。
糖尿病の原因を短絡的に結びつけることは危険であり、正しい知識をもとに判断することが大切です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。