2016コロンビアの旅#5|オレのアマゾン釣り日記トトホ編 その2|Travelogue
次の朝、おそらくツアー会社に雇われていた村人と対岸にある島に渡る。この島がコロンビア領なのかペルー領なのかもわからない。
ボートを砂浜に乗り上げて、徒歩でラグーナ(三日月湖)へと向かうらしい。それほど遠くない場所にラグーナはあったが、用意されていたのは沈みかけの古いカヌーのみ。一応ガイドと二人で乗ってみる。が、すぐに沈(ちん)しそうになってあわてて岸辺に戻る。どうしよう。周りはジャングルで竿が振れそうな場所はなさげにみえた。
ひとまず開けた場所をめざして歩くことにした。実際は人の手が入った森なのだろうが、アマゾン奥地の密林のイメージがオレに覆いかぶさってきて、なんだかとても冒険チックなことをしているように思えて気分いい。
小一時間ほど歩いたところに大きな倒木が湖面に突き出している場所があった。この木の上からは投げれそうだと思い、ガイドにここで試そうよと伝えた。
いかにも釣れそうなセッティングだったけど、やはり枝が邪魔をして思うようなコースにルアーをトレースできない。一尾も釣れないまま、その場所を断念した。だけど、倒木から眺めてこのラグーナにはおかっぱりできる場所などないことも確認していた。
残されていたのは元の場所に戻ることの一択だった。二人では沈むけど、一人ならなんとかなるかもしれないーーもうその考えしかなかった。それと、ここまで歩いてきて、道すがらに板根が発達した大木を何本も見ていた。渋るガイドにお願いして、彼のマチェテ(山刀)で板根を切り出し、パドルをつくってもらった。さっきは棹しかなかったが、オレはカヤック経験者だからパドルのほうが使い慣れているのだ。
とはいえ、船尾が沈みかけのおんぼろカノアなんて乗ったことはない。なるべく船首のほうに正座し、船が回転しないくらいの力加減でパドルを漕ぐ。何度か試すうちに慣れてきて、沖に漕ぎ出す。
大丈夫、ここにはワニはいないーーそう言い聞かせても、「いや、もしかして・・・」の不安は拭えない。でも、ようやく自由にルアーが投げれる喜びのほうが勝った。
ときどきゴフッという呼吸音が聞こえて、遠くの湖面に波紋が広がる。ピラルクーがいるのだ。正直ピラルクーがかかったら、たとえ小型であってもこんな老朽カヌーでは太刀打ちできない。すぐに沈められるだろう。釣りたいという気持ちと、ピラルクーだけはかからないでという気持ちがないまぜのままキャストを繰り返すが、ここでも何も反応がない。
「おかしいなあ、パヴォン(ピーコックバス)やアロワナがいても全然おかしくない雰囲気なのになあ・・・」
ようやくヒットしたのは黒いピラニア、ただ一匹。大きめのサイズだったのが救いだが、まったくあとが続かない。1時間もしないうちに時間切れとなった。ちゃんとしたボートからいいポイントを狙えたら釣れるのになあ、と後ろ髪を引かれながら納竿した。釣れなかったが、できうる限りのチャレンジをしたから満足している。
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