夏の幕開けに思うこと 〜“Sun Is Shining”を聞きながら〜|Essay
沖縄地方の梅雨が明けました。
早朝から太陽がジリジリと、いやフツフツと照りつける季節の到来です。
Bob Marleyを聞いたのは18の夏。
アルバム『Kaya』をレンタルレコード店で借りたのが最初で、次に借りたのが『Exodus』だった。
この2枚でその年の夏だけでなく、その後のすべての夏が調律されたように思う。
『Kaya』は1978年の作品で、『Exodus』はその前の年だが、制作されたのはほぼ同時期らしい。
身体の調子はおいといて、ミュージシャンBob Marleyにとって脂の乗り切った時代の産物だと言ってよいだろう(脚注1)。
『Kaya』はА3に"Is This Love"、A5に"Satisfy My Soul" というスマッシュヒット曲があり、"Sun Is Shining"はそれらに挟まれる形で収められている。
ラブソングだとする意見もあるが、そう思いたくない。
ボクがこの曲を聞いて最初に感じた気分が、(「Bitter & Sweet」というアルバムの宣伝文句に洗脳されたからかもしれないが)、夏の弱さやせつなさだったからだ。
夏の陽射しは強く、あらゆる風景が光と影になる。
そのコントラストに無常感がしのびこむ。
生の隣にはいつも死がいるように。
しかし、死があるからこそ生が輝く。
島国の蒸した夏の空気は“Natural Mistic”(自然の神秘)そのものだが、生命感がビビットであるぶん反動も大きい。
成長を加速させることは老化を早めることでもあるからだ。
湿度が邪魔をして汗は乾かない。
蝉の鳴き声もこもって聞こえる。
驟雨が夜をかえって眠れなくする。
――この曲ではマイナー調のカッティングギターのリズムが、そうした空気の重さをよく表現している。
"Sun Is Shining"にはこういう詞がある。
はたして虹は光だろうか影だろうか。
彼は救われたのだろうか。
夏休みという巨大な日曜日を夢中で過ごした子ども時代を持つ人なら、夏の終わりはいつも寂しく感じるだろう。
ボクもその一人だ。
だが、夏には初めから華やかさと哀感が同時に内在されている。
だから夏は美しい。
<注釈>
この曲の原曲は、ザ・ウェイラーズがリー・ペリーとセッションしていた頃にできたようであり、1970年頃の音源ではピアニカのような楽器が使われている。
下記のないんまいるさんの記事をみると、レスキューの対象が違うみたい。(2024.8.5追記)
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