2016コロンビアの旅#3|オリノコ川を諦めてアマゾン川に向かった話|Travelogue
さあ、コロンビアに戻ろう。
この旅でオレが行きたかったのはアマゾン川ではなく、オリノコ川のほうだった。プエルトカレーニョという街があって、そこはオリノコ川がメタ川という支流に分かれる分岐点に位置する。この界隈にはフィッシングロッジが数軒あることがウェブサイトで確認できている。高額な釣りツアーもあるが、ちょっとそこまで投資する気にはなれない。もっと風の吹くまま気の向くままな釣りがしたい。だからロッジか普通のホテルに宿泊して、地元の漁師のボートと1日単位で契約して、近場のポイントまで船を出してもらうことを思い描いていた。そんなスタイルならカンクンでも経験してるし、たぶんなんとかなるでしょ、って高を括っていたんだ。
ボゴタでなんやかんやしてた頃まではプエルトカレーニョ行きの飛行機は空席があった。でもオンダに行ったりしているうちに満席になってしまった。予定日の前後も同様で、キャンセル待ちしか打つ手がない状況だ。正直そんなに乗客がいるような路線とは思っていなかったのでビビった。いつでも予約できるでしょ的な見通ししか持ち合わせていなかった。
オリノコ水系にこだわるのは、旅をした12月が乾季だからだ。熱帯の釣りは基本は乾季が旬で、それは雨季だと魚が浸水域に散らばるから釣りにくいため。この年は雨が長引いているという話もあって、実際オリノコ川に行けていたら釣れてたかっていうと、それは正直わからない。それでも乾季にこだわるのは釣り人の性だと言ってよい。あと、オリノコ川は落ち葉からタンニンが溶け出したブラックウォーターで、蚊がいないっていうのも魅力だった。
ちくしょう、これだよ、肝心なときに神様はそっぽを向くよ。小関くんは「早く予約しないからだよ」と言ってバカにしたが、「こないだ飛行機も落ちてるし、よかったんじゃない」とも言って慰めてもくれた。
代替案にはカミーロん家に行く前にオリノコ川プランを先回りさせる手もあったが、いきなりかつてゲリラも活動していたというディープなコロンビアに浸かるのにも不安があった。ポパヤンで身体も気持ちも馴らしたかった(ポパヤンのほうはコカインマフィアの巣窟のわりと近くではある)。旅行のほんの少し前に、メデジンで日本人旅行者が強盗殺人にあったことが、オレの冒険者マインドをすっかり冷え込ませていたのだった。
プエルトカレーニョは諦めて、近場のメタ川だったらバスで行けるんじゃないプランもあった。実はボゴタで別の日本人に会ったのだが、その方は数年前までコロンビアの釣り情報をブログ発信していて、旅マエにけっこう参考にさせてもらっていた。彼の話によると、日本人会で釣りのトーナメントをメタ川のプエルトガイタンあたりでやったことがあるよ、漁師にも頼めるんじゃないかな的な内容だったんで、それもありかもと思った。でも、標高差のあるバス旅はきつそうだし、時間もかかるという理由で断念した。
そんな悶々とした気持ちでポパヤンに旅立ったのだけど、そこでカミーロから「だったらレティシアはどう?」って言われたんだ。
それは旅行前に選択肢から除外した場所だった。アマゾン川本流のソリモンエス川(アマゾナス川ともいう)に面するコロンビア最南端の街。ブラジルとペルーに国境を接する河川の十字路。
なぜ候補から外れたかというと、そこがどっぷり雨季だったからだ。さすが本流のど真ん中あたりだけあって、雨季が長いのだ。それにというか、それもあってというか、釣りの情報がまったくない場所だった。少なくともルアーフィッシングを目的とする旅行者が訪れる場所ではないと見限ったのだった。
「カミーロ、そこって釣れるの?」
「知らない。でも去年バカンスで行った友だちはとってもいいとこって言ってたよ」
「いや、でもその友だちって釣り目的じゃないよね?」
「そうだね、女の子だし。でも漁師はいるから、釣れるんじゃない、ハハハ」
こんなやりとりの末、消去法で結局行き先はレティシアになった。
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