2023奄美大島の旅#1|そろりそろりと海山千里に風が吹く話|Travelogue
ゴールデンウィークって家で過ごすには長すぎるし、海外旅行するにはまだ使える空路が少ないし、どうしようか――そう考えているときに、サーバーダウンしたJAL片道6600円セールのリベンジマッチに運よく成功して、奄美行き往路チケットをゲットした。復路は同セール第2弾で二匹目のドジョウを狙ったが不発。そもそも変則運行で奄美→那覇の直行便がないことにあとから気づいた。
「まあフェリーもあるし、なんとかなるよね」とレンタカーのみ4泊5日で予約し、直前まで帰りの交通手段のことは捨て置いていたため、予定外に長い旅になってしまった。
奄美はこれで3度目。最初は仕事で奄美パークや喜界島を調査した。次はアイランドホッピングの回で、沖永良部島と徳之島にそれぞれ2泊したのちに、加計呂麻島など島の南部をレンタルバイクで踏破した。思えばこのときもGWで天気が悪かったなあ。
今回は島の北部を中心にしたSUPフィッシングをメインに据えた。SUPは風が大敵なので、入江が多くて風の影響を受けにくそう、砂地の浅瀬が広いから比較的安全そうという理由で北部の西海岸を選択したのだ。
天候が崩れがちで風もそれなりに強かったので、SUPで海に浮かんでいた時間はトータル12時間だった。うち青空の下でのSUPは4時間くらいで、釣りが苦戦したのは日光が弱くて根が見えづらかったことも一因ではある。でもこの時期の奄美は梅雨入りしていることも稀ではなく、短くてもSUP遊びができたことに感謝しよう。なんと言っても、遠征用のSUPは子ども対象の小さなタイプで、立ち漕ぎができないから悪天候には弱いのである(ふだん使いのSUPは重すぎて老体が長い距離を担ぐには厳しい)。
赤木名海岸周辺はほとんど砂地で、アマモを食みにきたアオウミガメには何匹か出会えたが、釣果はボウズだった。このあたりは人圧が少ないのか、ウミガメがこっちに気づくのが遅くて比較的近くで観察できた点は、オレのホームの沖縄本島南部の海との違いだった。打田原海岸はサンゴのない岩場が点在していて、イシミーバイを何尾か釣り上げたが、海が荒れてきたので早々に撤収(水上バイクで海上保安庁が様子を見に来たのも心理的プレッシャーだったし)。
東風6~7㍍予報の別の日にその近くの海岸を攻めてみたが、予報に反して風が巻いていて、流される進路が定まらず、落ち着いて釣りができなかった。天気はよかったけどね。タマンがいそうな根が点在する場所だったが、ここでもイシミーバイが戯れてくれるのみ。
今回もっともいい釣果を出したのが龍郷町の久場海岸。朝7時からド干潮の10時半までの間に、ヤミハタ9尾、クサビベラ8尾をかけた。どちらもふだん行く沖縄のイノーではほとんど出会わない魚だ。久場海岸は赤い砂礫にハマサンゴや岩の根が点在するポイントで、航路でもある深い澪筋がわりと近くを走っている。北風が岬を回って東風となっており、それに乗って何度も何度も根のポイントを流しての釣りだった。クサビベラ(イノーマクブ)のほうは最大が40㌢近くあり、初物でもあって満足のいく釣行となった。
もう1ヵ所、奄美市住用のマングローブ林でも釣りをした。風が強い日はマングローブが風除けになってくれる河川の小場所のほうが安全そうだと事前にリストアップしていたのだが、2日目にしてその切り札を使うはめとなった。だが、カヤック発着場は満員御礼状態で、そこを利用してエントリーするには忖度力が高すぎるオレ。だから、ナビをみながらぐるりと迂回して、住用川の反対側から入水することにした。
川の流れと風向きが逆行する二枚潮のような状況で操船が難しく、おまけに上げ潮が効き始める前だったので水深も浅かった。マングローブの根本はまだ陸地で魚を狙えるポイントが少ない。カヤック体験で混雑しているエリアでの釣りは論外だ。以上、釣れない理由をくどくど列挙したのは、実際釣れなかったからであ〜る。
今回訪れた奄美の海は、山との近さがヤンバルみたいに目に映るが、入江の内側だからかリーフの発達が弱いように思う。浅場から深場へとなだらかに続いていて、風が強いと深みまで流されてしまいそうなのがこわい。でも反面、入江なので流されてもどこかにたどり着きそうなのは安心材料だ。それに、どの風向きであっても必ず風裏があるという地形もアドバンテージになるだろう。SUPライフを極めるなら移住もアリではないかと留置しておこう。
さて、海に行けない時間はなにして過ごそうか問題のひとつの答えがトレッキングだ。てなわけで、龍郷町の「奄美自然観察の森」にやって来た。
環境省の展示施設があって、その周りの園内には遊歩道が結構広範囲に整備されている。森には望遠レンズのでかいカメラを構えた野鳥観察のグループがいたりして、実際にズアカアオバトの尺八に似た不思議な鳴き声が聞けたから、野鳥は多いようだった。ギーッギーッという声は、あれはルリカケスだったのかな? ドラゴン砦という展望台からは、緑・黄緑の山々の裾野と青いグラデーションの龍郷湾の素晴らしい景色が一望できた。
オレの中のなにかが「おがみ山展望台」にも行ってみろと告げた。名前からして以前は拝所・聖域であったのだろう。名瀬の街なかからほど近い場所にある標高97㍍の山頂めざして、県立奄美図書館側から登った。あっけなく登りきり名瀬の市街地を見渡すと、この街がいかに狭い沖積平野に立地しているかがよくわかった。
「そうだよな、奄美大島には開けた土地が少ないもんな」と独りごち、幕末頃に代官所がここに移転してから発展した街だという古い記憶を思い出した。この日の万歩計は9,013歩とたいした歩数を示していなかった。