覚えているのは文字なのかタイピングなのか

どーも、札幌にある多機能型児童デイサービスSOYNEの伊藤です。
今回は「覚えているのは文字なのかタイピングなのか」というお話をしたいと思います。

ソイネに通っている子の中に、アルファベットやローマ字の理解が難しいメンバーがいます。
言葉に関しても、あいさつ等はできますが、会話となると難しいといった感じです。
そんなメンバーの一人が今はまっているのもeスポーツです。

eスポーツには「ログイン」がある

eスポーツをやるのに避けては通れないのが「ログイン」です。
ソイネでは、家のように自分だけが使うゲーム機でもPCでもないため、1回1回ログアウトしております。
そうしないと、他のメンバーに自分のアカウントでゲームをされてしまうので、必ずログアウトをするようにしています。

そうなると、必然的にログインが必要になるんですが、PCゲームのログインにはほとんど『メールアドレス』と『パスワード』が必要となり、アルファベットを打ち込まなくてはなりません。

この子のアルファベットの理解度についてご説明します。
・完璧ではないが「エー」や「ビー」と声をかけると分かるアルファベットもある
・メモとまったく同じアルファベットを選んで打つことはできる
・小文字の理解が難しく「a」が「A(エー)」のように結びつかない。
・ローマ字の理解はほとんどない

このため、最初のうちは、スタッフが協力をしないとログインすることができず、一人で活動を始めることができませんでした。

そこで、なるべく自分でログインしてもらうために、最初の頃は全て「大文字」のメモを渡していました。
理由は「キーボードに書かれているのが大文字」だからです。

打ち終わった後の画面に表示されているメールアドレスが小文字でも気にはならず、メモとキーボードを照らし合わせて打つので、無事にログインすることができるようになりました。

ある時自分の名前をメモも見ずに打てるようになった

少し話は変わりますが、ソイネでは通所するとすぐにExcelに自分の名前や取り組む活動を記入する「シフト表」というものがあります。
ある時、スタッフがその子がシフト表に打ち込むところを見ると、自分の名前をメモも見ないで打ち込んでいることがわかりました。
そこで、「もしや毎回ログインやシフト表を打ち込んでいるうちに自分の名前はローマ字で理解できたのか?」となり、今度はワードを開いて実際に名前を打ってもらいました。

「イ ト ウ ハ ヤ トって打てる?」(本来は自分の名前ですが、この記事では私の名前を使います。)

すると、何も見ずに自分の名前をスムーズに打っていました。


おぉ!!!

すごい!!

今まではメモ(全て大文字で書かれているもの)を見ないとできなかったことができていて、かつ「言葉」で伝えたものに対して完璧に打つことができたのです!

ただ、これだけだと「ローマ字」を理解しているのかわかりません。もしかすると自分の名前の文字だけ理解しているのかもしれません。

そこで

「じゃあ次は『ト ウ イ ト ヤ ハ』って打てる?」と名前を紙に書いて、見せながら聞いてみました。
名前をランダムに並べ替えたものなので、使っているローマ字やアルファベットは全く一緒です。

すると、「一文字も」打つことができませんでした。

ローマ字表を見せて「トってどれ?」や「イってどれ?」(自分の名前に入っている文字)と聞いても答えることはできませんでした。

つまり彼は、ローマ字を覚えているわけでも、自分の名前のローマ字だけを覚えているわけでもありませんでした。

この子が覚えていたのは
『キーボードを打つ順番(タイピング)』だったのです。

ログインの話に戻りますが、ある時ログインのメールアドレスやパスワードが書かれているメモも、大文字ではなく小文字で書いて渡してみました。
その時も、無事にログインすることができたのですが、のちのちローマ字やアルファベットについて質問してみても、やはり理解はできていませんでした。

この子は、「反復」することでメールアドレスやパスワードなどの「タイピングの順番」を記憶して打ち込むことができるということがわかったのです。

実は、パスワードの1文字目だけは『大文字』なので、スタッフが打ち込んでいました(シフトを使うので)

大文字や小文字の理解も難しいので、『シフト』を押すことで大文字になるということの理解はできていないかもしれませんが、反復によって『押す順番』を完璧に覚えているので、シフト込みで今では全て自分で打ち込み、ログインをして、スタッフの手を借りることなくeスポーツを始めることができています。

正直、今回のこのメンバーの目的は「ローマ字を覚えること」でも「アルファベットを覚えること」でもなく、「活動をスタッフの力を借りることなく自分の力で始めることができる」だったので、このメンバーの目的は現段階でクリアすることができました。

もちろん

ゆくゆくはアルファベットやローマ字を覚えることで、できることは増えていくと思うので、引き続きタイピングやeスポーツを通してレクチャーしていきますが、彼の強みである「反復によって記憶する力」が立証されたので別の支援や活動にも活かしていけるなと思いました。


なんかまとまっていませんが、結構楽しい発見だったので、共有いたしました。

それではまた明日。

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