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ブラッディバレンタイン
2006年2月14日
都内某所
バレンタインのその日も、
午前中からみっちり稽古をして、
こってり絞られ、
たっぷり汗をかき、
ごっそり台本が変更になって終わった。
連日の稽古なので、その日は少し早めに夕方くらいには終わったと思う。
稽古終了後、いつもは私が愛車ミニクーパーを運転するのだが、この日は、たまたまスペースクラフトのマネージャーが見学に来ていて、稽古後に打ち合わせをするので、稽古終了後即座に稽古場を出るのと、変更箇所が多いので、役者陣は、残って整理しておいた方がよいというので、事務所にいた劇団員のNさんにつか先生とマネージャーさんを送ってもらうことになった。
Nさんに愛車のミニクーパーの鍵を渡したとき、なんともいえない胸騒ぎがした。
Nさんは、10期生で、いろいろ面白い伝説がある人だった。
豪快なエピソードは、「ロマンス」という舞台で、大石先生役をやっていたNさん。
本番直前に、つか先生からコース台のシーンの稽古をつけられた。
本番まであと30分くらいという時で、
大幅にセリフが変わったNさんは、
なんと変更されたセリフを手に書いたのだそうだ。
覚えられないところは、手に書いた文字を読んでその場をしのごうとしたそうなのだが、
いざ本番中、そのシーンになり、手に書いた文字を読もうとしたら、汗で字がにじんでいたって。
「風を見た女」の稽古場では、稽古中張りつめていた空気も、稽古終了後はのんびり穏やかな空気に代わり、窓を開けると、2月の冷たい風も心地よく感じられた。
稽古場の窓から、青いミニクーパーが校門をくぐって出るのを見届けるとほっと息を吐いた。
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少し休憩してから、岩崎さんと赤塚さんと3人で、変更シーンについてまとめた。
それらをパソコンに入力して本日の稽古場台本を完成させる。
その日の稽古を振り返って笑いも出るほど穏やかな時間だった。
稽古着を着替えて、今日は何を食べようかななんて考えていた。
その時、私の携帯電話がけたたましく鳴り響いた。
(実際にはごく常識的な音量だったけど)
つづく