木村夏子

木村夏子

最近の記事

ブラッディバレンタイン(その2)

稽古終了後和やかな雰囲気の稽古場に鳴り響く携帯の着信音。 その電話は、Nさんからだった。 「途中で崖から落ちて、車が宙づりになってるのでJAFに連絡して」 ちょっと意味が分からないんですけど。 こんな住宅街に崖なんてあるはずないんだけど・・・。 私毎日往復してるから道把握してるけど、崖なんて通ったことないよ? よくよく聞いてみると、近道をしようとして、 細い坂道を通ったらしく、 その坂道は、細い道で、 車輪を踏み外すと崖になっている道だった。 近道だと思って通ったら、

    • ブラッディバレンタイン

      2006年2月14日 都内某所 バレンタインのその日も、 午前中からみっちり稽古をして、 こってり絞られ、 たっぷり汗をかき、 ごっそり台本が変更になって終わった。 連日の稽古なので、その日は少し早めに夕方くらいには終わったと思う。 稽古終了後、いつもは私が愛車ミニクーパーを運転するのだが、この日は、たまたまスペースクラフトのマネージャーが見学に来ていて、稽古後に打ち合わせをするので、稽古終了後即座に稽古場を出るのと、変更箇所が多いので、役者陣は、残って整理しておいた方がよ

      • 5本の指に入るってお墨付き

        2006 年、2月某日 北区にある小学校の元音楽室だった場所は、 一瞬にして空気が研ぎ澄まされ、 ヘアピンが床に落ちた音すら室内に響いてきそうなほどの静けさと緊張感に包まれていた。 「風を見た女」の稽古初日である。 戯曲のタイトルははじめ「初級革命講座飛龍伝」だったのだが、それが前年の秋に「テロリストの朝」というタイトルに変更した台本になり、 そして、稽古直前、「風を見た女(ひと)」というタイトルになった。 その日稽古場に集まったのは、岩崎雄一さん、赤塚篤範さん、小川智之

        • 戯曲は机の上で書かれてたわけじゃなかった

          私が初めて稽古をつけてもらったのは、 2005年の「熱海殺人事件~平壌からきた女刑事」だった。 ある日いきなり、「お前、これに出るからな」と言われてドキドキした。 1年間の研修期間を経て、劇団員になっての最初の舞台だった。 黒谷友香さん、石原良純さん、春田純一さんや劇団の大先輩が稽古するなか、稽古期間も終盤にさしかかったころいきなり呼ばれた私は身の置き所がないように感じられたが、 実際は、稽古中にどんどん変わっていく台本をタイピングするのが精一杯で、緊張するどころではなかっ

        ブラッディバレンタイン(その2)

          演劇で無料公演は可能なのか?限界に挑戦!

          「北区に来ればいつでも芝居が安価で見ることができる。そういう場所にしたいんだ」という木村夏子の師匠であるつかこうへいの教えや想いを胸に自主公演が出来ないかと模索していました。 そんな折、高円寺K'sスタジオのオーナーである日下諭さんが、 「お祭りで小さなお子さんからお年寄りまでたくさんの人が盛り上がっているのを見かけたらついふらっと立ち寄りたくなる。高円寺K'sスタジオがそんな場所になれたらいいな」という想いを口にし、演劇に触れたことのない人にも観てもらえる機会が作れたらいい

          演劇で無料公演は可能なのか?限界に挑戦!

          『小夏の青春』を上演する理由(その2)

          2009年冬、『小夏の青春』が誕生した。 常々、「お前は小夏」だといわれていた。ある日、一つの台本を渡された。否、正確に言うと、1枚の紙を渡された。真っ白の紙に右端に『小夏の青春』と殴り書きがしてあった。 「これ、やれ」と。 そこからは、突然シーンの口立てが始まる日々だった。一つのシーンを作るだけ作って、「あと適当につないどけ」と。 適当って言ったって、いや、私には文才はないから無理なんだよ。 悩んでいると、また新しいシーンが追加される。 そうやって出来上がったのがひとり語り

          『小夏の青春』を上演する理由(その2)

          『小夏の青春』を上演する理由(その1)

          2000年夏、私はTV画面に夢中だった 普段はうるさくなくセミの声すら耳に入らないほど 「ヤス、上がってこい、おまえは志半ばにして倒れた勤皇の志士だ。上がってこい、ヤス」 と手を差し伸べる銀ちゃん、なんてかっこういいのだろう。 その時のドキドキを胸にわたしは憧れの大都会東京へと向かった。スーツケース1つだけ手にして。 2004年春、たび重なる偶然が私をつかこうへい氏に出会わせた。 偶然もたび重なると必然になるのだと知った。 4月、★☆北区つかこうへい劇団に入団し、厳しい研究

          『小夏の青春』を上演する理由(その1)

          小夏の青春

          作:つかこうへい  企画・構成:木村夏子  出演:木村夏子 2024年10月18日(金)~10月20日(日) 18日(金)19時30分 19日(土)14時/18時 20日(日)14時/18時 @高円寺K’sスタジオ本館 杉並区梅里1-22-22 パラシオン高円寺B1-100号 入場無料 ご予約はこちら https://stage.corich.jp/stage/331646/ticket_apply (お席に限りがございますので予めご予約頂けると幸いです) <あらすじ

          小夏の青春