発育発達
前回老年学について記事を書いたため今回は反対の「発育発達」について書いていきたいと思います。
人類は長い進化の過程を経てこの地球上で健康で健やかに生きていくための基本機能(=「直立」「直立二足歩行」)手にしました。
脊椎動物が陸に上陸したのが今から約3億8千万年前。最初の人類「ホモ・サピエンス」は25万年前に現れたといわれています。我々人類は3億7千975万年の年月をかけて直立二足歩行を獲得したことになります。
この人類の進化の過程を人は生後約1年かけて再現し人類と同じように直立二足歩行を獲得していきます。3億7千975万年の過程を生後約1年で獲得するため歳をとるにしたがい老化という形で獲得した機能を失いやすいとも考えられています。
まずは胎内での運動の発達について書いていきます。
○5週目まで 3週目前後で神経管発生。4週目~5週目にかけて上陸劇(水中→陸上に行く過程)を再現。鰓穴がふさがり肺循環がスタートして四肢の形が発生
○8週目 頭殿長(頭からお尻)1cmくらい。脊柱の神経細胞は完成。自発運動が始まる。大脳では神経細胞が分化しはじめる
※脳は完成していないけど自発運動が見られるため身体発達が脳発達に先駆けて発達する理由としても考えられています
○10~16週目 身長7cm。神経細胞は手足まで伸び、全身の活発な胎動が始まる。呼吸様運動も開始。脳は大脳・中脳・小脳・延髄に分かれ始める
○20週目 脳では筋肉と脳の伝達を結ぶ無数の運動ニューロンや神経が発達する。胎児は不随意な動きの他に指しゃぶりや頭を動かすなどの動きを意識して行えるようになる。
○30週目 視神経も発達し眼球運動が可能となる。生後行うほとんどの運動は可能になり羊水内であればコントロールされた動きも可能
○37週目 大脳皮質も発達。脳の活動が一時的に抑制され出産を待つのみとなる
上記のような経過をたどるため37~41週の間赤ちゃんが母体にいることの必要性があります。また37週母体にいたとしても赤ちゃんの発育が不十分だった場合には赤ちゃん⇔子宮との間に隙間が多く動いた際に赤ちゃんが感じる感覚が少なくなり、生まれた時の筋緊張(筋肉の張り)が低下してしまう可能性があります。赤ちゃんの大きさだけでなく子宮壁の弾力性の影響でも同様な状況に成りえます(高齢出産)
→胎内での運動発達を振り返った理由として人は日常生活やトレーニングなどのすべての活動を重力下で行っています。そのため人の体は日常生活において偏った姿勢や動作を強いられます。そのことが特定の筋肉を緊張させ身体をアンバランスにさせてしまいます。アンバランスは身体のアライメントを崩す原因のひとつです。緊張している筋肉を緩めてアライメントを整え、赤ちゃんが生まれてきた時のように歪みのない状態にすること、日常のどこかで力を抜きリラックスする場面を持つことは身体的にも心理的にもとても重要な意味を持ちます。
次に生後の運動について記載していきます。
○定頸(3ヵ月):正中感覚の獲得
○仰向け:優位な屈筋を使って手足の存在を認識
○うつ伏せ:屈筋優位から伸筋の発達を促し体を伸ばす・脊柱周りの筋の筋力強化
○寝返り(5~6ヵ月):正中感覚の強化・胸郭の最適化
○腹這い:ロコモーションのスタート・コア機能の向上
○四つ這い(7~8ヵ月):臼蓋の形成・腰椎の前弯・コア機能向上
○座位(6~10ヵ月):仙骨の前傾・腰椎の前弯・コア機能向上
○高這い:足底機能の強化・下肢の連鎖
○立ち上がり(10ヵ月):立位時の姿勢保持機能を発達
全ての運動は直線的に進むわけではなく、螺旋的に進んでいきます。赤ちゃんは上記のような動きをドリル練習のように繰り返しながら機能獲得のための運動を行っていきます。ここ最近の状況として家の環境からすぐに立ち上がってしまい四つ這いでの移動の経験が少なくなっていることが問題として挙げられます。四つ這い移動が少なくなると手で支える経験が不足するため転びやすくなってしまいます。また四つ這いの右手→左足→左手→右足の対側性の交互運動は歩く時の上・下肢の動きにも繋がってくるため大人になっても実施する必要があると考えます。
大人になってから必要な動きとして四つ這いに加えうつ伏せから肘を伸ばし胸椎・腰椎伸展運動(胸を張る)、側屈+回旋運動が姿勢変化に伴い行う頻度が少なくなるため実施する必要があると考えます。