上記の感想(前編)に引き続き、『複雑系』について。
当記事では2つ目の「多分野をまたぐ組織のあり方」について、気になった箇所を本文より引用しながら書き留めておきたい。
サンタフェ研究所
About
Research Themes
組織の目的に応じてメンバーを選ぶ
サンタフェ研究所には「新しい研究を目指す、学際的で何の制限もない自由な研究施設」という設立のビジョンがあった。それに向かない人物は、メンバーの候補から除外されるなどしたという。
新しい組織を設立する際には、目的やビジョンにあわせて人間を選ぶこともある程度必要なのかもしれないな、と。人の選別という事実は、きれいごとではない分、良い組織の作り方について考えさせられる。
「真の専門技術と独創性を発揮していながら、新しいアイディアに対してオープンな人間」……この希少な人材を集められる時点でもう勝ちのような気もするけど。
サンタフェ研究所は、そのような人材の獲得(というか惹き寄せ)に成功した。理由の一つはビジョンと問題意識の共有だと思う。
時間でもなく、ルールでもなく、「共感」をベースに集う集団が、もしかすると一番強いのかもしれない。
参考|Our Mission(Santa Fe Institute)
共通言語を探せ
数的に実証できない理論を、どれだけ理数系の研究者が疎んでいるかが何となく匂う部分。「感覚でものを言うんじゃないよ」といったところか。
異種のコミュニケーションにおいては、普遍性のある共通言語探しが大切。
雑事を疎かにしないこと
仕事には、成果との直接的な結びつきが目に見えないような地道・回りくどい・根気のいる雑事が大半を占める。
しかし、直結しているように見えないからといって劣後して良いというものではなく、それぞれが「必要な雑事」を積極的に行うことが組織運営にはとても重要だと思う。
ここで私のいう「必要な雑事」とは他者の仕事を支援する行為であり、巡り巡って組織全体や自分の仕事を向上させる行為のこと。目の前の煩わしさから逃れようというだけでこのようなことを他者にばかり押し付けたり、忌避し疎かにする人間は、結局何も成し遂げられない。
未来永劫、破綻しないシステムはあるのか
社会(組織)のシステムは時代によって最適なものが考案され(意図的にまたは自然に)選ばれる。いったん安定すると、現状維持バイアスがはたらくために秩序とカオスのバランスの不具合を看過する。
そしてシステムは破綻し、その反省をもとにまた新たな仕組みが生まれていく。
ファーマーがいうように、社会構造が柔軟であり、それがうまく機能して逐一不具合や変化の兆しを見逃さずに即座に修復・是正をすれば「破綻を見ないサステナブルな社会」が実現するのだろうか。
同じ方向を見据える、同じ熱量を持った人材
多様性というのは、ただただ雑多なものを交わらせれば良いというものでもないなと最近思うことが多いが、サンタフェ研究所のようないわゆる異種格闘技のような現場において良質で活発で発展性のある交流は、どのような土壌があれば生まれやすくなるのだろうか。
「真理の一端に辿り着きたい」──この世に生きる人間なら、誰しもぼんやりそう思うことがあると思うが、サンタフェ研究所に所属する面々は「本気」だ。
目的が同じで、見ている方向が同じで、熱量が同じ。これは、多様性のある組織がうまく成立する一つのセオリーではないか。
組織の構造や仕組みどうこう以前に、個々人のその本気──情熱が、何かを成し遂げるにはきっと必要なんだろうなと思う(という精神論みたいな結論になってしまった)。