女子を踏まえて生きていく──『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』読書感想文
10年前2014年の40歳女子のリアル。
著者の主観がバシバシと書かれる内容は、これぞエッセイの醍醐味だよなあと感じさせるし、口語体の語り口が(ラジオパーソナリティをつとめているだけあって、さすがの話の巧みさ!)軽妙で切り込む話題も絶妙でおもしろい。
当然、書かれていることは個人の所感だから、未婚だろうが、既婚だろうが、子どもがいようがいまいが、「わかる」ってところと「わからん」ってところが入り混じる。
でもエッセイって、そういうものだよね。
一生、女子であるという女の業
身体的に衰えゆくが、精神的にはいつまでも「女子」。
著者はいう。
自意識、恋愛、結婚、社会的通念、自活、そんなものを乗り越えた未婚女子の「30代の自由やべえ」
(こんな書き方じゃなかったかと思いますが、意訳としてはこんな感じ)
で、40代の今をこのように。
経済力もある自由もある、30代を楽しみ尽くし気づいたら四十路。
ほんとうにそう。
まさに今40歳の私は、どう感じているかというと。
大半「くだんねえな」と思いながら最低限世の中に合わせてきた「女子たるものこうあるべき」のプレッシャーが薄れてきて、精神的にはすごく自由で楽しい。
(が、身体はどう足掻いても本当に衰えているので、ちょっと切ない)
一方で、その解放感に慣れると、周囲からの見え方を気にしなくなるということに繋がってきちゃうから、それも難しい。。。
内輪で盛り上がるべき内容を、のべつまくなしに外向けに吐いちゃったり。
当然でしょ? の精神で、社会的にNGな厚かましい行為しちゃったり。
……無意識にそういう行動が増えていそう。
節度、理性、品性。
40代からはきっとそのあたりが必要になってくる。特に外向きには。
ということを、最近ひしひしと感じ、考えている。
(でもすぐには変われない)
女として生まれてしまったからには、どんなに年取ってもジェン・スーさんのいうとおり女子からは逃れられないし、どこかそこはかとなく意識的にも無意識的にも女子でいてしまうと思う。
「おばさんになったわー」って口では言いつつ、その自覚が意外にないことがそら恐ろしくなることもある。態度が年齢不相応になるのはやっぱり痛いと思うし。
ああ、自由になったつもりでも、女の業とはこうまで深いのか。
女子から逃げられないとして、これからの過ごし方
たまに「50代からの暮らしかた」「人生のしまいかた」みたいな本を手に取る。自分より少し上の女性がどういうステージにいるのか、何を思うのか、気になるから。
今を生きるために、ちょっと先のことに目を向けることはとっても良いことだと思う。
今の世の中、メディアやSNSでは理想だけじゃないたくさんの人の「個人的、生の意見」が転がっているので、お手本や反面教師はゴロゴロいる。
一方で、メディアやSNSは理想を形にして切り取ることができるから、それはその発信者の「一部」にすぎない。だから、その前後の見えない何かにも目を配る。
自分の人生は、この世に存在する「切り抜き」ではない唯一の生き方だ。
いやが応にも連続しているその人生の中で、何を重視したいのか。そのために何をしなければいけないのか。
子どもの頃、祖母と友人の話や母と友人の話をそばで遊びながら小耳で聞いていた。
(来客があった時、同じリビングで過ごしていることが多かったから)
そこで語られるのは、まさに女性の生き方そのものの、生の意見だった。
それぞれに幸せと、不満とを抱えた人生が見えた。
そこから「この状況は取り返しがつかなそうだ」って学んだことは、極力避けてきたつもりだ。
(特に主導権を夫が握っている関係性、シチュエーションは、私にはとにかく辛そうだと思ったし無理だなと思ったから、もし結婚するなら経済的には自立しておこうと強く思った)
そんな話を(聞かせているつもりは毛頭なかったと思うけど)私に聞かせてくれたさまざまな女性に感謝している。
だからもっと、女性には子どもに対して自分の成功も失敗も共有してほしいし、私も共有しなきゃなと思う。
解釈は、きっと子どもが勝手にするから。ただ、話せばいいのだと。
100%理想通りになる人生なんてない。
切り抜いて書いてあることの後ろ側、その人の人生そのものに思いを馳せる。
「この人の人生は、どういうゴールにたどり着くのか」
「そのゴールとか、回答って、私にとってはどうなんだろう」
「わたしのゴールはなにか。そこに行き着くためにどう行動していくのがよいのか」
著者の考えとのシンパシーや違和感から「なぜそう感じるんだろう」と掘り下げることで、自分の考え方を探る。
エッセイって、そんな風に他者の人生から、自分の人生を考えさせてくれるから、いいんだよなあ。
ちなみに本書に書かれる「三十路の心得十箇条」は私も口を大にして同じこと説教しちゃいそう。若い子はババアの戯言と思わず、心して聞いた方がいいと思う。
……この態度と言い方がもうおばさんだよな。