ふたりで働き続けるメリット──『共働き夫婦お金の教科書』読書感想文
もろもろの諸事情が簡単にそれを実現させないことは理解しつつ、家庭経済のみにフォーカスしていうと、「共働き」はメリットしかないことがよくわかる。
「厚生年金と退職金を二人分もらう老後が待っている」
もちろん最近は退職金がなかったりiDecoに代替する企業が多いし、年金はこの先目減りすることが確実だけど、そこに文句を言っていても全然意味がない。
だからこそなるべく対策しておく。
むしろ、減るなら減るで1人じゃカバーできないとすでにわかりきっているのだから、共働きを選択しないという選択肢自体がなくなりつつある時代なんだろうと思う。
ほんとうに、生きるってびっくりするほどお金かかる。
私と夫は社会人18年目(リーマン夫婦)になるが、最新の年金通知を見ると、夫婦でもらえる年金額は170万円/年……。しかも現時点の額だから、2、3割は平気で支給削減されると考えていた方が良いと思っている。
たとえ持ち家があったとしても……夫婦二人で生活できるか?
生活はできたとしても、メンテナンスのための通院、家族や友人付き合いやお祝い、ちょっとした余暇の楽しみ、そういうものをかなり節制しなければいけない。
夫婦二人で20年近く働いてもこれだ。
現職中も片方の会社が潰れるかもしれない。急に失職するかもしれない。大病を患うかもしれない。精神を病むかもしれない。
リスクは数えればキリがない。
だから、共働きは最高のリスク分散と言える。
共働きを選択しない家庭は、片方が働けないという何かしらの理由がもちろんあると思う。でもその理由が「子育てとの両立の難しさ」だけなら損だよなあと心の隅で思う。
家庭経済を考える時の最重要ポイント
家庭経済を考えるときに特に意識しなきゃと思うことは、ぜったいに隣を羨まないこと。誰がどのくらい資産を持っているかなんて、実は表向きにはわからない。
派手な生活をしている人が将来のことを全く考えていないこともあるし、
堅実な暮らしをしている人が実は超資産を持っているかもしれないし、
実家のパイプやサポートがめちゃ太かもしれないし、
将来の設計まで完全に見通した選択的専業主婦(夫)って選択をしている夫婦もいるかもしれない。
でもそれは、よそ様の話なので。
自分の家庭がどういう状況にあるのかを踏まえて人生を計画する。
土地や株などの多少の資産を持っている人も、それらは価値が変化する水物であることを考えると、ある程度時勢が反映され、定期的に獲得できる給与(月次収入)をベースに生活を組み立てていくのが理想であることは明らかだと思う。
共働きが「将来の自分たちのため」であることをちゃんと理解していれば、それを継続するための努力は夫婦で協力してするものだという意識が生まれ、きっともっと快適に共働きができる世の中になるはずなんだけど。
時代は変わっているんだけどな……
「寿退社を許さないのが今の時代の男の甲斐性」
これ、いい言葉だ。
30年前、私が子どもだった頃は、男が外で稼ぎ女は家庭を整えるみたいな形がわりとスタンダードだったと思う。
でも、今は違う。1人では稼げない。
平成時代に年収の中央値は100万円近く目減りしている。物価はインフレ方向に変化している。
2人で稼いでようやく家計が安定する時代だと思う。
誤解してはいけないのは、「甲斐性」の中身も変化していること。
今の時代の男性の甲斐性は、外で稼ぎかつ家庭を女性とほぼ同等に切り回せる。そういう類のものだ。(もちろん女性にも同じことが求められている)
私は子どもの保育園経由で仲良くなったママ友が多いから、共働きの夫婦の友人が多い。ママ友と話していると、共働きに関しては男性のマインド変化の方がゆっくりだと感じる。
女性が働くことは一般化したけど、男性が家庭で家事・育児をすることは一般化しているとは言い難いことも多かった。
この記事は2年前のものだけど、取り上げている統計結果の男性の家事育児参加の前提が低すぎて失笑してしまう。
でも長男入園から次女の卒園までの13年間、周囲のパパの育児への態度は確実に変化し、参加比率は格段に上がったと実感してもいる。
徐々にではあるけど、社会は変わっている。
最終的な家事育児の分担比率は、家庭の事情に合わせて各夫婦で決めていけばいいけど、その比率がすでに決まりきったものではなく、夫婦で検討するという考えが浸透し始めている。もともとが酷すぎたとはいえ、社会全体のマインド変化があるのは良いことだ。
ママ友と話す中で出てくる夫への不満は軽口から本音レベルまで様々だけど、私たち母親が次世代をよくするために気をつけるべきことは、「夫に対して文句を言っている、そのダメポイントを持つ人間を再生産しないこと」じゃないだろうか。
世の中の母親を見ていて、若干思う。子どものこと、世話しすぎ。
小学校も中学年になれば、お腹空いたら自分でおやつくらい準備できる。
合宿や旅行の準備も、習い事や部活の準備も、ユニフォームの洗濯も、自分の部屋の掃除もできる。
任せると達成されないこともたくさんあるけど、本人に尻拭いさせればいいのだと思う。世渡り上手、言い訳上手も生きる知恵。
これからをもっと共働きしやすい世の中にするために、自活できる男性・女性を育てること。パートナーの男性に「困った」と思わされたことがあるのなら、その反省を生かして次世代を育てなきゃ、と思う。
目の前の待遇・給与にめげない
第一子である長男を産んでから、私が働き続けるにあたってなにがキツかったかというと、給与が目減り・頭打ちになることだ。
下記は同い年の夫と私が入社してからの二人の年収の推移をグラフにしたものだ。
我が家は実家が遠く、保育園以外の子育てサポートは利用しなかったため、子どもが幼いときは私が時間を制限して働くという選択をした。
時短を選択すると、どうしても給与が頭打ちになる。
自分の出しているパフォーマンスに給与が伴わないと感じたり、組織から評価されていないと感じたりして、モチベーションが上がらない(もちろんこれは主観的な視点を含むので、頭打ちの理由は時短だからということではなく組織に評価される観点と自分の動きがずれていることが原因なこともある)。
その時期が、めちゃくちゃきつい。
稼ぐ金額が明らかに違うから、夫にもなんとなく頭が上がらなくなる。その時の家事・育児の比率は、送り迎え全部私・病欠対応ほぼ私・平日の家事ほぼ私で、控えめに言っても私8:夫2だったにもかかわらず。
ちなみに最近は6:4くらいになったと思う。うれしくて泣ける。
しかも2人以上出産する場合、育休と育休の間が2年くらいだと、業績もめざましくは上がらないので給与の伸びはさらに頭打ち。
そんな期間が5年も続くと、「あーもう一生こうなのかな」って捨て鉢な気分になってくる。
変化を感じたのは次女の出産後3年経ったあたりから。
私は中小企業に勤めているから、会社の業績の調子もあるし、私自身の業績の伸びもあるし、管理職手当などもろもろ、時短解除以外の要因も複合的にあるが、最後の育休復帰時点の2019年4月から現在2024年12月までの給与伸び率約95%w
(ただ、現状の自分の業績的にいうとたぶんここで一旦頭打ちになる感はある。これからは、これから次第)
現在の夫と私の給与比率はだいたい55:45。
ひどい時は二倍以上の差額があった夫と私の給与比率は、長男を産む前の水準、つまり大企業平均と中小企業平均の給与額くらいの差に戻ってきているといえる。
そう考えると、子どもが1人だった場合の給与減額期は、小学校入学までがいったんの目安。そういう一例になるのではないか。
だいたい年数にして5〜6年。
人生50年働くなら、そんなの一瞬という考え方もあるのでは?
目の前のことで忙しいけど、将来の設計もちゃんとしていこう!
共働きにはたくさんのターニングポイントと決断が必要だ。
妊娠・出産のタイミングどうする?
夫婦の生活費シェア・こづかいどうする?
資産形成どうする?
どのくらい貯蓄するべき?
キャリアアップやジョブ選択は?
家事育児のシェアはどうすれば「平等」?
住宅購入はするしない?
子どもの数と教育費の方針は?
年金の現実・リタイア後の生活は?
どれも、まさに共働きの夫婦が頭を悩ませる問題ばかり。
お互いにバリキャリでもゆるキャリでもなく、残業は極力しないようにしながら仕事も家庭もふたりで回して働き続ける。それを夫婦で目指すのもわりと今の時代にあっているのかも。
書かれていることは「たしかにそうだよなあ」と思うことが満載なので、ぜひ20代、30代の夫婦にお薦めしたい書籍です。