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ワインをもっと楽しむには

ウチの店ではウイスキーだけで150種以上、ジンで50種、テキーラ、ラム、ブランデーの他、カクテルに使うリキュールもバー並みに揃えて洋酒好きなお客さんに色々なお酒と食事を楽しんでもらっている。
もちろんワインも5〜60種ストックしてて、小さな店がお酒で埋め尽くされている。
ここ数年はウイスキーブームで若い女性なんかも食中酒でウイスキーを飲んだり、最近はジンの人気も上がってて色々なお酒を好みを聞いてオススメするのは非常にこちらとしても楽しい。

ウイスキー好きな若者は知識欲も豊富で、こんなの飲みたい。とか、何処どこの地域のが飲みたい。珍しいウイスキーをオススメすると喜んでくれたりもする。
聞くと多くは、居酒屋で角ハイボールや、白州ハイボールを入り口にウイスキーにハマって行く人が多い様な感じ。
年配者は色んなモノよりも昔から飲んでいるコレだけ呑む。と言う人が多いかな。

若者に茶色いお酒を楽しんで頂ける一方、ワインとなるとチョット様子が変わってくる。

ワインが苦手って若者もチラホラ。イタリアンなのでとりあえずワインを、飲みやすいヤツで。くらいな感じが多い印象。
コレは初めてのワインがチェーン居酒屋のよくわからないワインのせいかも知れないが、最近のパックの安いワインでもソコソコ美味しいはず。

この違いを自分なりに仮説をたてて考察してみた。
『ワイン業界のプロモーションのせいじゃね?』

80〜90年代からワインはチョット高級なレストランで呑むモノだったが
チリなどの低価格で高品質なモノが入ってくるのと同時に、ワイン業界も『難しいこと考えずに気軽にワインを飲もう』って感じのプロモーションをずっと行なってる。
おかげで90年代以降、スーパーマーケットにも多くのワインが並ぶようになったし、家庭での消費も増えている。

ソムリエ達も次第に料理に合わせるとか気にせず、飲みたいモノを食べたいモノと一緒でいいじゃない。ステーキに白でも魚に赤でも良いよ!って意見が増えてきた。
今では、レストランやワインバーの店員さんでソムリエの資格持ってても、知識を語る人も少ないと思う。
楽しく呑めれば良いじゃん!ってのも良いと思うけど、ウイスキーやジンとワインの決定的な違いがある。

それはスイートスポットの広さ。

ウイスキーはハイボールだとほぼどのような料理が来ても空振りしない。
どストレートなコッテリステーキでも、クセのある変化球のイカの塩辛でも、難なく打ち返してくれるし、強いの料理が来ても酒の個性を消される事はほぼない。
ハイボールは余韻短め何で、料理の印象を邪魔する事も少ない。個性の強いアイラモルト系でも意外と料理からデザートまで相性は悪くない。
ピート系が好きなら。

一方ワインはハイボールに比べると圧倒的にスイートスポットが狭い。

相性がズレるとすぐ空振りするし、ソコソコヒットを打つ事はあるけど、重いボルドーの赤とイカの塩辛なんてどっちも絶望的に不味くなる完全なデッドボール。
だがしかし、スイートスポットが狭い分、ジャストミートするとびっくりする様な特大ホームランをカマシてくれる。
コレを体験出来たらワイン好きになりそう。

白ワインやスパークリングワインはスイートスポット広めなので、ソムリエにフルコース料理にワインボトル一本お願いするとどちらかをオススメしてくれるだろうが、全部の料理に問題なく合わせるのは至難の業。

そんなワインを気軽に飲んで内野安打やたまにツーベース、時々デッドボールだったらそりゃハマりにくい。

お店で呑む場合でも、あるワインを『これ美味しいよ』って知人に勧められても、一緒に食べている料理との相性によっては、だんだん『そんなにおいしいと思えないかも』ってなる危険をはらんでいる。

だからこそワインは難しい飲み物って印象を払拭する為に気軽さを推してきたが、推しすぎて、ソコソコの印象で終わってしまってると思う。

そろそろワイン業界も違ったアプローチをした方が良いと思う。

例えば、ウイスキーは語りやすいストーリーが多いと思う。
イチローズモルトの人気があるのはストーリーをお客さんに伝えやすい事だと思う。
昔オークションで1億円って話も飲んでみたくなる1つだろう。
作り手のこだわりやストーリーはどのお酒でもあると思うが、ワインはステータスにより過ぎている。葡萄品種や地域は参考にするには知識が必要だし、知識があってもなかなか難しいところでもある。

ストーリーにより、興味が湧いた時に飲んだ方が圧倒的に美味しく感じる。

最近自然派ワインがソコソコ好調なのは語りやすいストーリーを持っているからだと思う。普通のワインより飲みにくいものが多いのに、味わいよりも作り手の哲学やストーリーで売ってる気がする。そして、価格も比較的高い。

ワイン業界も安旨ワイン推しをそろそろ抑えて、
ストーリー推しを始めてはいかがだろうか。
レストランのソムリエもわかりやすい説明だけに留めず、好奇心を刺激する小難しい説明も加えていってはいかがだろうか。

長々と上から目線で語ったが、当方ワインを真面目に取り組み始めて、まだ10ヶ月くらい。コロナ規制もあけて、多くの試飲会まわりまくって250種くらい呑んで、ソムリエやワイン業界の人達と話して感じた事を書いてみました。

ウイスキーと違って、ワインは開けたら保存が短いとか、常時100種もグラスで売れない。等、不利な点もあるけど、ウチの店では時々、あえてデッドボールペアリングを体験してもらったり、引きのあるストーリーのワインを提供したりと、草の根活動行なっていきます。

小難しく考えながら、
気軽に呑まないワインは楽しい!



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