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編むように生きる


以前、誰かと話をしているときに「編集の仕事というのは、素材や情報をたくさん集めて取捨選択し、それらをうまく加工してコントロールし、想定される読者層へきちんと届ける職業です」と何気なく口にしました。そして言った瞬間「あ、ぜんぜんちがう」と思いました。

「編集とは何か?」
奥野武範(ほぼ日刊イトイ新聞)


「編集」「編集者」に惹かれます。
それも、
「書きたいが書けるに変わる創作講座」で
編集者を務められた講師に教わり、
たくさんの編集者の講演を聞き、
自らエッセイを書き、自ら「編集」のまねごと
のような校正をやってみたからです。

「編集とは何か?」

「〇〇とは何か?」

という問いは、根源的で答えがなくて、
10人10色な世界があって好きです。

「編む」って、最近好きな言葉、仕草です。
手芸ができるわけではないけれど。

生産性や効率化
スピードと結果
単一化、同一化

とは縁遠い気がして、
時代を逆行してるようで実は王道のようで。

ですので、
「集」めて、加工してコントロールしてって
よりも、

「人を編む人」

というのが、
最近お会いした憧れる編集者の方々から
受けるイメージで、しっくりきます。

かっこいい。

たしかにそれは、編集者という仕事の重要な一側面であると思います。そして同時に「編集者という仕事の、あんまりワクワクしない一側面」だとも思うのです。

同上


自分の「会社員という仕事」を
語るとき、と置き換えてみると、

・会社の業績のために働く仕事

であるのは大事で欠かせない一面ですが、

「よりワクワクする一側面は?」

と問われると、

・お客さんのために役に立つ仕事
であり、
・社会の役に立つ仕事
だなと。

新入社員のときに、
会社人でなく社会人になろう
と、ノートの見開きの表紙裏の硬いところ。
に書いたのを思い出しました。

編集という仕事の醍湖味やよろこび、編集者自身に「これだから編集はやめられない」と思わせる何かは、まったく別のところにある。それはけっこう「得体のしれない何か」です。そして、その「得体のしれない何か」こそが「編集」という仕事の真髄だと思います。

同上

「得体の知れないもの」を編むのだから、
すごい仕事です。

得体の知れてる目に見えるものではなく、
だれもまだ見たことのないわからないものを
編む営み。

それはまた、自らの体得してきた経験に
依存しすぎずに、ほどよく世離れしてみて
こそ見える世界。なのかな。

と思うだけでワクワクします。
決して決して簡単ではないことは
想像に難くないけれど。

何というか、編集者って「もっとおもしろくしたい人たち」なんです。この本に登場してくれたどの編集者も、心のうちに爆発物のようなものを秘めていました。

同上

心のうちに爆発物。

あぶない!

「面白きこともなき世を面白く」

という高杉晋作さんの言葉が好きです。

そんな野心や志を、これまで出会った編集者の
方々から感じます。

会社員だからといって、爆発物は、
会社への不満を秘めた危険物ではなく、
社会への期待と自らが着火マンになりうる
自分への期待を秘めていたい。

この非常識なほどぶあつい本を通して、そんなことが伝わったらいいなとも思っています。

同上


ほんと、分厚いです笑

「読んだらわかるから」と秘めておらず、
「なんだこれ」と見た目から思わせる、
爆発物を秘めてます。見たくなる。

得体の知れないものを、
得体の知れない自分を、見に行こうと。

自分の人生を編むように。

編むとは、
糸と糸を編むのではなく、
糸と糸の間の空間を編んでいくもの。

人と人を編むのではなく、
人と人の間の人間を編んでいくもの。


自分を編むとは、
自分にないもの、自分でないものを、
編み合わせていくもの。

仕合せ。


きょうもお付き合いくださり
ありがとうございます。

写真は宮崎から大阪への帰りの飛行機
の窓から。

海に映る雲のかげがあまりに美しくて。
海空雲をかげが編む。

得体の知れないかげが編むんだなあ。

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