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決算早期化における事例紹介:会計システムへの取込データに誤りが生じているケース

上場企業の決算早期化に向け、実例を交え、決算早期化の阻害要因を解消するための具体的なアプローチや決算早期化プロジェクトの進め方を紹介します。

本記事では「よくある阻害要因」の中から、以下画像でハイライトした箇所の具体的事例をお伝えします。

上場企業の決算早期化における「よくある7つのボトルネック」に関しては、以下記事をご覧ください。

決算早期化や管理体制の強化に関心をお持ちの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

※本記事は、2024年8月に開催された『上場企業のための決算早期化セミナー』の内容より、一部抜粋して作成しております。


なぜ決算の早期化が必要なのか

①適時開示:決算短信、業績予想

決算の早期化が求められる最も大きな要因は、決算短信の45日開示や業績予想の修正の開示など、開示に関する要求への対応です。

②社内利用:経営意思決定・管理会計

経営層が迅速に意思決定を行うために、経営指標を早期に提出することが求められる場合があります。また、場合によっては、開示情報とは異なる視点での分析や、より詳細な単位での数値を求められることもあります。

経営課題を迅速に把握し、次の施策をすぐに検討・実行するため、結果として決算業務の早期化を望む企業が多い状況です。

③人材流出防止:効率化による残業削減

決算早期化を目指す中で業務の無駄を排除することにより結果として残業時間が削減されることで、人材流出の防止やコストの削減につなげたいといった理由も挙げられます。

特に最近では、経理人材の流動化が激しくなり、採用の難易度も高まっています。この観点から業務改善を通じた早期化を進める企業も少なくありません。

決算早期化を実現した企業の解決事例

事例紹介:会計システムへの取込データ誤りが生じているケース


「上場企業のための決算早期化セミナー」資料より引用

会計システムへのデータ取込の上流工程で誤りが頻発するケースがあります。

たとえば、システムを活用して自動取り込みが可能なフローであっても、取り込み元の販売管理システムやExcel・スプレッドシートへの登録ミスや漏れによって、結果的に誤ったデータや不足した情報が会計システムに反映されることがあります。

さらに、会計システムに取り込まれたデータと元の証憑との照合を月次で行っている場合、販売管理システムなどの整理が必要となり、月次処理に大きな時間がかかることも少なくありません。

決算早期化の阻害要因の分類と本事例での検討

「上場企業のための決算早期化セミナー」資料より引用

今回のケースにおける阻害要因を分析し表形式に整理したところ、全て内部要因であることが見て取れました。

最適化されていない業務フロー

たとえば、「そもそも販売管理システムのデータ整理を月次決算の段階で行うべきなのか」、という視点が考えられます。販売管理システムへの登録の際など、会計システムに取り込む前の段階で証票との照合を行う業務フローとなっていない場合には、月次決算の段階で多くの修正が必要となり決算早期化の阻害要因となる可能性があります。

人的リソースの限界

日次や週次で証憑との照合が必要であると認識していても、それに対応できていない場合は、人的リソースの不足や限界が原因であると言えます。

整備されていないチェック体制

販売管理システムへの登録に関する統制では、担当者が入力した情報を他の担当者が正しく登録されているかチェックする体制が整っているかを確認する必要があります。

このようなチェック体制がなく、不正確なデータが取り込まれてしまったために下流工程でのチェックに工数がかかっている場合は、業務リスクが許容範囲内にコントロールできていないと言えます。

決算早期化実現に向けた施策例


「上場企業のための決算早期化セミナー」資料より引用

業務改善:業務処理の平準化や担当の見直しによる平準化

業務フローの最適化という観点では、まず業務フローの平準化を検討することが重要です。たとえば、会計システムに正確なデータを取り込むため、月次処理で行っていた証憑の突合を上流工程である日次処理に移行し、さらにチェック体制を整備する必要があります。

リソースが不足している場合の改善策としては、可能であれば採用が最適ですが、業務分担の見直しによる平準化や担当者の配置の再考などでリソースを確保する方法も検討すべきでしょう。

システム改修・導入:アラートの設定やERPの導入

販売管理システムを使用している場合は、アラート機能の設定が有効です。
一方、Excelやスプレッドシートで管理している場合は、システムの導入を検討することも選択肢に入ります。

いずれの方法にしても、短期間での実現は難しいため、まずは実行可能な手法を取り入れることが重要です。このケースでは、上流工程での照合(場合によっては日次や週次)を早期化することが現実的な対応策となるでしょう。

また、業務フローが変更される場合は、担当者との密なコミュニケーションを取り、J-SOXの3点セットの更新も忘れずに行う必要があります。特に当該プロセスがJ-SOXの評価範囲に含まれる場合は、関連する部署と連携しながら進めることが求められます。

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ブリッジコンサルティンググループ株式会社
RM事業部 シニアマネージャー
公認会計士 藤井 佑介
大手監査法人にて、法定監査業務、内部統制構築支援業務などに従事した後、大手外資系金融機関、東証一部上場企業の経理部門にて、主に月次決算・年次決算・連結決算・開示業務に従事しつつ、組織再編やシステムリプレイスなどのさまざまなプロジェクトを経験。企業内部での経験から、お客様の潜在的なニーズの発見と、ソリューションの提供に努めることをモットーとしている。

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