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要約:「子どもたちはネットやゲームの世界で何をしているんだろう」岐阜県大湫病院 関正樹先生 2019/12/14
「子どもたちはネットやゲームの世界で何をしているんだろう」
講師:関正樹先生(児童精神科医、岐阜県大湫病院)
2019年12月14日 「2019年度第2回子どものこころ診療部セミナー」における講演
要約
3:54 中学生のSNS利用
8割が,すでにLINEやTwitterなどのSNSを利用している。
利用目的は,友達との連絡,事務連絡,である。新しい友達を探したり,暇つぶしを目的に使用する子どもは,ネット依存になりやすい傾向がある。
5:52 発達障害児のSNS利用実態
発達障害児でもLINEとTwitterの利用が多い。SNSで「お金がない」「助けて」「家出したい」というワードを使用すると,悪意を持つ大人と出会う確率が高くなるので特に注意が必要。
10:07 SNSで起こりうる危ないこと
(1)いじめ。昔からあるリアルないじめは,いじめっ子/いじめられっ子がはっきりしており,そのためいじめの終わりもはっきりしていた。SNSでのいじめは皆が少しずつ加担しているので,常にずっといじめられている状態になる。そうなった場合の対処方法は,リアルないじめと同じで撤退すること=SNSをやめる。
(2)個人情報。友達がアップした写真の背景などから個人情報が流出しやすい。約束を断ったのに,別の人と遊んでいることがバレて人間関係に影響がでることも。
頭ごなしにSNSはダメだ!という大人は,子どもがトラブルになったとき信頼された相談相手になるだろうか?
12:50 SNSでの交友
SNSで出会った子ども同士が友達になることは普通である。いつかは出会うSNSと理解する必要がある。「ダメだよ」「危ないよ」だけでは,子どものリテラシーが身につかない。高校生になるくらいまでに,家族とのSNSを通じて教えていく方がよい。
16:49 YouTube
自分と近い人がクリエイターになっており,日常体験が共有されていること。また自分からアクティブに視聴できることが人気の背景にある。特にゲーム実況が人気。今の子どもたちはゲーム選びに失敗することがなく,かつ上達が早い。発達障害児でも,人気のコンテンツは同じ。
大人の価値観から安易に批判すると,子どもが何に興味を持っているかを話さなくなる。
26:05 ネット小説
書き手と読み手の交流がある。だからこそ,その境界が曖昧であるという特徴がある。また,読み手がいるからこそ,書き続けることができる。
書くことが「仕事」になると疲れてくる。今月中にアップしないと自分でノルマのように思う,続きを書いてくださいと読者から注文される,など。
29:51 オンラインゲーム
ASD/ADHDでも,小学低学年で4~5割,高学年では7~8割が利用している。ゲーム内のチャット利用は,高学年で3~4割は利用している。最近はゲーム障害(Internet Gaming Disorder)も話題に。
DSM-5でゲーム障害の症状が記載されている。ゲームを取り上げられると離脱症状を起こす点が含まれているが,これは議論の余地あり。実際には離脱症状はなくてもゲーム障害になるというのが一般的な認識になりつつある。
34:58 ネット依存の治療
①オンライン以外の活動を促すこと
②ネット利用のコントロール。認知行動療法などで自省を促す。ログを記録するなども。
1:02:51 なぜゲームにはまるのか
不安(難しすぎ)と退屈(簡単すぎ)の間にフローの状態があり,難しさと必要なスキルがバランスするように設計されている。自分のスキルや練度に応じて,リスクを背負ったりゆっくり進めたりと難易度を調節してプレイできるように作ってある。
1:08:24 ゲームとプレーヤータイプ(バートルテスト)
・Achievers:素直に楽しむ。装備の収集やクレストの達成などを重視する。
・Explorers:新しい世界の発見。裏技やバグの発見などを重視する。
・Killers:他のプレーヤーをキルすることを重視する。
・Socializers:相互に関わりコミュニケーションする。初心者や味方の支援を重視する。
1:10:36 なぜオンラインゲームははまりやすいのか
①他者とのコミュニケーションが埋め込まれている。ゲームの中でコミュニテイ=社会ができている。「いつも一緒」ができる。そこは匿名かつネット内のみの世界であり、気楽に付き合うことができる。それ故,一時的な感情に流され,ネガティブな行動が際立ちやすい。
②自由度。一般にクリア(=終わり)がない。居場所を求める人,賞賛や名誉を求める人,お金儲けする人,ツール開発を楽しむ人,などの人それぞれの楽しみ方があるため、飽きることがすくない。いつもの友達がいる=やめにくい
1:14:57 ゲームとうまく付き合うためには
子どもがどんなゲームが好きかを知ること。大人も一緒にプレイしてみること。
ゲームの区切りポイントを理解すること。ある達成感が得られるポイントでは一息付ける。そこでは次にゲームをやりたくなるまでにタイムラグが出る。一律の時間制限ではなく、このポイントを理解し利用すること。うまくなるほど,対戦の途中でやめるのは難しい。
1:22:39 プレイヤータイプから考えられるゲーム以外の活動
・Achievers:他の収集活動 = スタンプ集め。楽しんで取り組める細かな目標設定をするとよい。
・Explorers:新しいことにチャレンジできる = 習い事。ただしやらされたり,辞めるなと強制されると,どんどん飽きてくる。
・Killers:競い合うこと = 誰かと魚釣りをして釣った魚の数を競う。ボードゲーム,カードゲーム
・Socializers:他者との交流ができる居場所 = 委員会,ボランティア
1:35:30 ASD/ADHDの子どもがはまりやすいジャンル
ADHDは負けることが嫌いなので,FPS・サンドボックスにはまりやすい。また,衝動性からFPSを好みがちだか、残虐性は関係ない。
1:42:45 オンラインゲームとコミュニケーション
コミュニケーションすることによってゲームでの有用である。ゲーム自体は役に立たないかもしれないが,居場所として,あるいはコミュニケーションの場として人生の役に立つ。
1:43:34 事例の提示
まとめ
・大人の価値観から安易にゲームやSNSを批判すると,子どもが何に興味を持っているかを話さなくなる。子どもがどれが好きかを知ること。大人も一緒に参加したりプレイしてみること。
・不安(難しすぎ)と退屈(簡単すぎ)の間にフローの状態がある。好むゲームによってタイプが異なるので,これを利用し,オンライン以外の活動を促すこと。ADHDは負けることが嫌いなので,FPSを好みがち。
<バートルテストのタイプ>
- Achievers:素直に楽しむ人たち。装備の収集やクレストの達成など。= 他の収集活動(スタンプ集め)
- Explorers:新しい世界の発見。裏技やバグの発見など。= 新しいことにチャレンジ(習い事)
- Killers:他のプレーヤーをキルする。= 競い合うこと(魚釣り)
- Socializers:相互に関わりコミュニケーションする。初心者や味方の支援。= 他者との交流ができる居場所(委員会,ボランティア)
・ゲームは、居場所として,あるいはコミュニケーションの場として人生の役に立つという良い面もある。