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海で禊、お伊勢参り【三重県伊勢市】

目覚ましはかけていないが、早くに目が覚める。空調のきいた部屋で足を伸ばして寝られることのすばらしさを実感。体の疲れがとれているのがわかる。気取りながらカーテンを勢いよく開く。曇天。朝食もとらずに車を走らせた。

二見興玉神社ふたみおきたまじんじゃ

海は灰色の空と混ざり、青緑色となって凪いでいる。「お伊勢参りは二見から」と言われるように、伊勢神宮を参拝するときは、先に二見興玉神社で禊をするのが一般的な作法とされている。

さすがに海に体を浸している人はいない。波打ち際までいって手を濡らしている人はちらほら。二見興玉神社は、地上に降り立った神様たちの道案内をした猿田彦(さるたひこ)を祭神としている。

夫婦岩

手水舎をはじめとして、境内いたるところに蛙の銅像がある。猿田彦の神使である蛙。漁に出た人たちが無事に帰るようにという意味での蛙。二見浦の龍神信仰で、「龍は雨を喜ぶから」という意味での蛙。由来はいろいろあるようだ。

海面に突き出た岩のなかで、しめ縄をこさえてひときわ存在感を放っているのが夫婦岩。遠目では小さく見えるが、しめ縄の長さは35mもあるという。参拝を終えたタイミングで雨が強くなってきた。

月夜見宮 つきよみのみや外宮げくう別宮べつぐう

伊勢神宮には天照大神を祀った内宮(ないくう)と、豊受大神を祀った外宮(げくう)とがある。さらに各宮には摂社、末社、別宮が合わせて百二十五社あり、それらは三重県内各地に点在している。

外宮から歩いて5分ほどのところに鎮座しているのが月夜見宮。祭神は月読命(つくよみのみこと)。古事記ではアマテラス、スサノオと一緒に生まれているが、それ以降これといった出番や描写がない不思議な神様だ。

学校で何かと手のかかる生徒が教師に可愛がられ、真面目な生徒ほど教師との関係が希薄だったりする状況が重なるといったら不敬だろうか。

良かれ悪しかれ大事件や大失敗を起こすアマテラスやスサノオに神話のスポットライトが当たり、真面目に働いていた(であろう)ツクヨミがほとんど描写されないのは損な話だと思う。

大楠

豊受大神宮とようけだいじんぐう外宮げくう

外宮、北御門口

豊受大神(とようけのおおみかみ)は、衣・食・住のあらゆる産業を司っている神様。アマテラスの専属シェフ的な役に抜擢され、内宮創建から500年後にこの地に迎えられた。

写真ではタイミングよく人が写っていないが、参拝客の多さはさすが伊勢神宮といったところ。雨でも国籍年齢を問わず、大勢の参拝客で賑わっている。

正宮

写真撮影ができるのは正宮の鳥居前まで。幾重にも張り巡らされた垣根により、正殿を間近で見ることはできない。金の縁取りをした千木が遠目に見えた。

正宮の真隣にある遷宮用の敷地

伊勢神宮といえば、二十年に一度、すべての社殿と調度品を新たに作り直す「式年遷宮(しきねんせんぐう)」の行事が有名だ。境内の本宮、別宮には同じ広さの空き地が隣接しており、二十年ごとにまったく同じ社殿を建てて引っ越しを行う。

遷宮にかかる費用は、2013年はおよそ550億円ほどだったらしい。調度品は当代随一の匠たちが、伝統的な手法に則って作り上げる。社殿に使うヒノキおよそ1万本は、もともと神宮の背後にあった山では不足するようになり、現在は尾張の木曽谷で計画的に植林しながら調達している。建材として利用できるのは樹齢200年以上の木(式年遷宮で使われる木材)。何もかもがスケールの大きな話だ。

つづく

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