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一世を風靡した「かまいたちの夜」というサウンドノベルゲーム。シルエットだからこそ生まれた『想像の余地』
画像「かまいたちの夜」より
当時、「かまいたちの夜」のヒットを皮切りに、この形式のサウンドノベルゲームが数多く作られました。
キャラクターはシルエットで表示され、その独特の雰囲気とミステリーの相性は抜群でした。
2017年に「かまいたちの夜 輪廻彩声」としてリメイクされたが、その評価はあまり芳しいものではありませんでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1650249595729-4z899PiDGD.jpg?width=1200)
キャラクターがシルエットからイラストになったことで、プレイヤー側が『想像する余地』が失われたことが大きいと思います。
ミステリー=謎解き、においてこの『想像の余地』というのは非常に大事だと思います。
シルエットキャラから感じる『顔が見えない不気味さ』は、ミステリーやホラーおける不気味さを引き立て、作品世界への没入感を高める要因となっていました。
我々、ぶれるめんでも「シルエットを使ったゴシックホラーな作品をつくってみたい」ということで、「探し物」というサウンドノベルを制作しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1650258843378-2Es0qpfa27.png?width=1200)
脚本は「しのだ」が担当。
以下、動画とシナリオの本文を掲載します。
「探し物」
〇(背景)廃ビル・中
会社が倒産して急に無職になった俺。
早く次の働き口を決めなきゃと色々探してはみたがこのご時世、全然仕事がない……。
なりふり構っていられないと、見つけてきた仕事が解体工事の後片付けだった。
片付け作業員は解体工事が終わったあとから仕事が始まる。
夕方から夜にかけて黙々と後片付け。
仕事は正直きつい。
おまけに一番下っ端だからこき使われる。
今日の現場は都内の廃ビル。
取り壊した後はお洒落な商業ビルを建てるらしい。
俺「何が商業ビルだよ。俺ばっかがこんな目に……」
悪態ついてちんたらしていたら他の作業員がみんな帰っていることに気づく。
俺「うそ……」
誰もいない廃ビルに一人。
廃ビルとは言え、ここは東京のど真ん中。
すぐそこはネオンが煌びやかなのに、
ここは、まるで、この世ではないような不穏と不気味さに包まれている。
?「ゴォォ……うぅぅぅぅ……」
風の音か?人のうめき声に聞こえて気味が悪い。
静寂の中に響くうめき声はコンクリートに反響して四方八方から聞こえてくるようだ。
俺「気持ち悪っ、俺も帰ろう」
その時、
〇人影
俺「うわぁぁぁ!!!」
吉村「あれ?まだいたの?」
突然現れた吉村さんに俺は本気で叫んでしまった。
俺「ちょっと、やめてくださいよ~マジで心臓止まるかと思いました」
吉村「ごめん、ごめん。ってお前こそ何してんの?」
俺「いや、自分のとこ、今終わったんです」
吉村「そっか。まっ、慣れるまでは大変だと思うけど、慣れちゃえば簡単な仕事だからさっ」
吉村さんは比較的話しやすい先輩で、こういう仕事の人にしてはお洒落でイケメンだった。
俺「吉村さんは何を?」
〇アクセサリーがついた鍵
吉村「これ探してんだよ」
俺「鍵落としたんですか?」
アクセサリーがついた鍵だった。
猫のような動物をかたどったその飾りは象牙みたいに白く滑らかで高級感のあるものだった。
俺「なんか高そうなキーホルダーですね」
俺はなぜか鍵についているアクセサリーに興味をひかれた。
吉村「これ、手作りなんだよ」
俺「えぇ、ホントですか?」
得意げな吉村さんにただただ驚くしかない。
吉村「昔から手先が器用でさ。実は暇があるときにピアスとかペンダントとか作ってネットで販売してるんだよね。結構人気で、いい小遣い稼ぎに
なるんだよ」
俺「これデパートとかだったら一万円とか普通にしそうですね」
吉村「そんなに褒めてくれるなら、これやるよ」
吉村さんは勾玉みたいな形をした別のキーホルダーを俺にくれた。
俺「あ、ありがとうございます」
タダで貰って、そのまま帰るわけにもいかず、
俺は吉村さんの鍵探しを手伝うことになった。
〇人が2人、暗い廊下にライトを照らしている様子
すっかり日も落ち、廃ビルの中は暗闇に包まれた。
湿ったコンクリートとカビの匂い。どこか血生臭くさく感じ、むせかえる。
俺と吉村さんはスマホのライトを地面に照らしながら歩いた。
?「ゴォォォォ~うぅぅぅぅぅ……うぅぅぅぅぅ……」
うめき声がどんどん強くなっていくようだ。
俺「鍵ないですね~。しかも、このうめき声みたいなの、気持ち悪くないですか?」
吉村「お前にも聞こえる?」
俺「気持ち悪いですよね。今日そんなに風強かったかな~?」
〇穴
吉村「あった」
それは作業用に掘られた穴ぽこだった。
解体作業などの現場では砂埃や泥を埋めるための穴を掘ることがある。
昼間の作業で掘られたその穴に吉村さんは飛びついた。
俺「鍵ありました?」
吉村さんは一心不乱に穴の中でまた穴を掘り始める。
俺「吉村さん?鍵探してるんですよね?そう言えば、なんの鍵落としたんですか?」
吉村「あった、あった!……ん?鍵?鍵じゃねーよ、これだよ、これ」
〇骸骨
俺「それって……」
吉村「人の骨だよ」
俺「うわぁぁぁぁl」
それは明らかに人の骨のようだった……。
俺はあまりの恐怖にうまく息ができなかった。
そして、絞り出すように声を出す。
俺「け、け、警察、呼びますか?」
吉村「何バカ言ってんだよ!やっと見つけたんだぞ」
俺「か、鍵、探してたんじゃないんですか?」
吉村「鍵はあるよ!鍵じゃなくて、鍵についてるアクセサリーの材料!」
俺「えぇ?」
吉村「俺のアクセサリー、人骨で作ってんだよ」
俺「?!」
俺は吉村さんの言葉をすぐには理解できなかった。
ただ、手の震えは止まらない。
吉村「東京の地下って今でも掘ると人骨がうじゃうじゃ出てくんだよね。
戦争の時のらしいんだけど、こういう解体作業中に見つかることが多くてさ」
俺「……」
吉村「人骨で作るアクセサリーがなぜか売れるんだよね。元値もタダだし、だからいつも仕事終わった後、探してるの、骨」
〇アクセサリー
俺はすぐさま震える手で、貰ったキーホルダーを投げ捨てた。
〇吉村の影
吉村「あと、さっきから聞こえるうめき声……風の音じゃなくて本物……俺が骨ばっか集めてるからかな?
霊が寄ってくるんだよね……お前にも……聞こえるんだな?」
〇俺の周りにたくさんの霊
霊「うぅぅ……グルシイ……うぅぅ……アツイ……」
恐怖で体は動かなかったが、俺にははっきり見えた。
俺の背後にはおびただしい人の影がある。
そして、どれも戦時中であろう昔の服を着ていて、顔や体がただれていた……
霊「うぅぅぅ……グルシイ……助けて」
俺「うわわわわわわ」
〇廃ビル・全景
翌日、すぐに仕事を辞めた。
今でも吉村さんはネットで人骨アクセサリーを売っている……。
【完】