働き続けたい会社に進化するヒントは「退職理由」。『転職支援ロボット』に酷評される前に!

職業柄、在職者の方から退職の相談や退職理由を伺う機会が多くあります。「キャリアアップしたい」「夢に向かって次のステージへ……」といったポジティブな理由もあれば、「会社の方針に共感できない」「上司についていけない」「職場の人間関係が……」「仕事の価値が見い出せない」「ここでスキルアップするイメージが持てない」といったネガティブな理由も少なくありません。筆者の周りだけの話ではなく、このようなネガティブな声が現場から聞こえる会社は少なくないでしょう。そして、そういった声が聞こえてきても耳を閉ざし、優先順位を下げてしまっている会社もあるのではないでしょうか。本記事では「退職理由をヒントに会社が進化していくこと」についてお伝えしたいと思います。

ホンネとタテマエ、真の退職理由にこそ改善のヒントが

退職者が出てしまった事実とその理由を問題視する声は、現場の社員からしか聞こえず、経営層である上層部からは「若手の退職が多くないか?」「あの優秀な〇〇さんを退職させるなんて、会社の大きな損失だ」「離職原因を追究し、改善施策を実行することが最優先だ!」といった発言や意見が聞こえてこない会社もあるようです。

あなたの会社では退職者に退職理由をお聞きになっていますか?

聞かれている場合は、どのような退職理由が多いでしょうか?そして、それは本音で打ち明けてくれていると感じますか?本心で伝えてくれていると感じているならば、おそらくその本当の退職理由をもとに、すでに改善に取り組まれていることでしょう。しかし、「本音で伝えてくれているかどうかは不安だ」ということであれば、以下のデータから貴社の実情と照らし合わせてはいかがでしょうか。

「雇用を取り巻く環境と諸課題について」

【正社員の退職理由 トップ3】
1位.労働条件(賃金以外)がよくなかったから(28.4%)
2位.満足のいく仕事内容でなかったから(27.9%)
3位.会社の将来に不安を感じたから(26.6%)
※3つまでの複数回答を集計したものであり、合計は100%にならない。
(厚生労働省職業安定局、平成30年4月23日付)

【退職理由の本音と建前 トップ3】

本音 建前
1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%) 1位:キャリアアップしたかった(38%)
2位:労働時間・環境が不満だった(14%) 2位:仕事内容が面白くなかった(17%)
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%) 3位:労働時間・環境が不満だった(11%)
出典:リクナビNEXT「転職理由と退職理由の本音ランキングBest10」

上記とは他の転職エージェントによる調査では、調査対象者の約50%が本音で退職理由は伝えていませんでした。

【退職理由の本音と建前 トップ3】

本音 建前
1位:人間関係が悪かった(25%) 1位:結婚、家庭の事情(23%)
2位:人事制度に不満があった(11%) 2位:体調を壊した(18%)
3位:給与が低かった(13%) 3位:やりたい仕事内容ではなかった(14%)
出典:en 月刊人事のミカタ「退職理由のホンネとタテマエ」

表現は異なるものの、会社が引き止めにくく、かつ円満に退職できるような退職理由が「建前」として会社へ伝えられていることが想定されます。しかし「本音」の退職理由は、組織や人間関係に起因するものである、ということが分かります。

調査機関が異なれば具体的な結果は異なるものの、本音と建前が異なっているという点では同じです。そして、本音の退職理由にこそ、「働き続けたい会社」になるための改善のヒントの多くが隠されています。そもそも本音の退職理由の確認に取り組んでおられない企業様は、ぜひそこから取り組んでみてはいかがでしょうか。離職防止につながるとともに、新たな人材を確保する際にも魅力ある会社として求職者に選んでもらえる可能性が高くなるはずです。

『転職支援ロボット』に滅多打ち?情報技術の進化により、求職者のための会社情報(評価)の精度が向上


退職理由をヒントに会社をより良くすべき理由は他に2点あります。まずは「労働人口減少に伴う雇用確保への険しい道」が待っているということ、そして「情報技術の進化によって、求職者側から簡単に会社の内情を知ることができる環境」への対応が迫られていることです。

1点目の理由については皆さんもよくご存じのとおりです。生産年齢人口(15~64歳)は平成 28(2016)年の7,656万人から平成 47(2035)年には6,496万人まで減少、つまり20年で1,161万人も減少する計算です。 (参照元:日本の将来推計人口(平成 29 年推計) )有効求人倍率が44年ぶりに高水準を記録し、今後も労働需要はますますひっ迫していくことでしょう。すでに人手不足を訴えている企業は50%を超えており、最悪のケースでは人手不足が原因で倒産に至った会社もあります。

もうひとつの理由について、筆者は今後の展望を以下のように予測しています。これからはビッグデータ×AIの活用により、大量の会社の情報(評判)を一元的に集約、分析されるでしょう。そして求職者は転職時に、学生は就職活動時に、その情報を大いに活用することになるはずです。また、ブロックチェーンの技術により、情報を操作することも難しくなるでしょう。

その情報は退職、在職に関わらずそこで働いた経験のある人々から提供されるもので、組織風土や人間関係、仕事の面白さ、スキルアップ、賃金、福利厚生、諸制度などの観点で評価されるものです。現在複数の企業により提供されているそれらの情報や他のデータが繋がることで、求職者の「働く価値観」にその会社がマッチングするか判定されるようになる日も近いでしょう。

このマッチングサービスを請け負う 『転職支援ロボット(仮称)』 に 「その会社はあなたを不幸にするでしょう」 と判断されたら……。あなたの会社に入社したいと考える人は激減してしまうでしょう。

将来にわたって「働き続けたい会社」に進化するために社員が長く働き、新たな仲間を増やすためには、社員が「この会社で働いていて幸せだ」と感じる会社にしなければならないのです。

働くことに対する価値観も多様化しています。先述の理由に加え、環境が変化していく中、「これまでと同じ」では人材確保はますます難しくなるでしょう。

あなたの会社が今後も発展し続けるためには、人材を確保することは不可欠です。そのために、まずは退職する社員には退職理由を聴き、在籍している社員にはどうなればより良い環境となるのか意見を聴いてみてはいかがでしょうか。

最初は本音を引き出すのが難しいかもしれません。在籍している社員には、匿名や集団など個人を特定しない方法でより多くの意見を集めることができるでしょう。退職する社員は特定された個人からの情報提供となり、上司や人事部などにはなかなか伝えにくいこともありますが、少しでも本音を伝えてくれるよう取り組んでみてください。また、退職する社員の同僚に話を聞いたり、外部機関のサービスを活用したりするのも一手でしょう。

そして、魅力ある会社になるためには、組織風土、コミュニケーション活性化、人事制度の見直しなど、様々な施策を講じなければなりませんが、改善には相当の時間がかかることも忘れてはなりません。

『転職支援ロボット』が誕生するときには、情報は既に蓄積され、それを操作することはできないのです。その時に危機感を持ったところで、時すでに遅し、です。

これを良い機会としてとらえ、あなたの会社を進化させてみませんか?

社員のエンゲージメントレベルの測定方法はこちらも参考になさってください
弊社代表のブログ:従業員エンゲージメントを測る「12の質問」

BREEZEは、経営者、社員、人事部門が一体となって改善に取り組む会社を応援しています。会社の人的資源の状態を多面的に分析し、改善に向けた施策立案とロードマップ策定をぜひお手伝いさせてください。

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