おじや
時々、無性に〝おじや〟が食べたくなる。
雑炊じゃなくて、おじや。
学生の頃お金がなさすぎて、実家から送られてくるお米と、業務スーパーで買った納豆と卵、あと激安の韓国のりを食べてなんとか暮らしていた。
ご飯と卵があれば、とりあえずお腹が膨れるし、栄養も取れると思っていた。全くそんなことはないけれど。毎日卵かけご飯を食べるのは味気なくて、卵かけご飯を炒めてチャーハンにしたり、おじやにして食べていた。納豆や韓国のりの値段に比べると、ツナ缶なんて高くて買えなかった。
たまにあの時の暮らしを思い出して、なんとかやっていけていたことを不思議に思う。
アルバイトもしていたが、稼いだお金は楽譜代や演奏会を聴きにいくのに使っていた。そもそも授業に追われ、合わせに追われ、練習に追われ、レッスンに追われているとアルバイトができる時間も限られていて、思うように稼げなかった。
それでも、あの時わたしは必死だった。何かきっかけがないと、この先やっていけないから。だから卵とご飯があれば大丈夫だった。
たまにあの頃を思い出さなければいけない、と思う日がある。そのきっかけが今日はおじやだった。おじやが食べたい。
場所や音、匂い、味で思いだす記憶がある。今日はおじやであの日に帰ってみたい。