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繊細な超高層 ニューヨークタイムズビル(建築物語13)

今回は、ところ変わってニューヨークの中心地にある、レンゾピアノ設計の超高層ビルを紹介します。

超高層ビルって大味なデザインで、身体とはかけ離れているオーバースケール建築で、やっぱりこじんまりとした建築の方が良いという方もいますが、僕は好きです。

超高層ビルひとつで街を変えてしまうパワーを持っているし、大体は事務所やホテル、ショップなどたくさんの用途を抱え、ひとつのまちをつくるような、とても設計のしがいがあるビルディングタイプだと思います。

このニューヨークタイムズビルの規模に比べたらアリのサイズですが、ある地方都市に17階建ての高層ビルを設計したことがありまして、高層部がオフィス、低層部が医療系と飲食のビルで、2人で設計してましたからやりごたえのある設計でした。それが地域のランドマークになる様は、設計を終えて、なんだかじんときました。

それはさておき。

ニューヨークの娯楽・文化の中心地、タイムズスクエアに程近い、8 番街沿いにそびえる、52 階建てのニューヨークタイムズ紙の本社ビルです。

高さ228 メートル(避雷針を入れる348 メートル)あり、周囲の超高層ビルとは群を抜いて高い、スカイスクレーパー。

超高層の立ち並ぶニューヨークの中でも、8番街では群を抜いて高く、遠くからでもその姿を望むことができます。

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超高層ビルのデザインにおいて、心臓となるのは全体の印象を決めるような、ファサードシステムにあるのではないでしょうか。

このニューヨークタイムズのビルは、とても繊細な印象です。日よけとなる水平(ヨコ型)ルーバーをこの超超高層ともいえる規模の建築で建築全体に取り入れたのは、レンゾピアノからではないか、と思っています。

ルーバーをファサードシステムに取り込むのは、他の低層建築でもよくあることです。ですが超高層の場合、延べ面積が何十万㎡になることは必至でして、例えば窓から受ける、建物全体の熱負荷のエネルギーは莫大なものなのですよ。

ですから、超高層のファサードをエコロジーデザインの観点から設計することは、とても地球にやさしいのです。


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冒頭で超高層のデザインは大味だ、と言いましたが、このレンゾピアノ設計のビルは超高層の印象を覆すものでした。

細い部材のルーバーの相互の間隔(ピッチ)は大きくとられ、日本でいうところのすだれのような、奥の窓がおぼろげにみえるような繊細な熱負荷低減装置をまとっています。


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ルーバーの支持金物も美しくデザインされていて、いつもながらそのメタルワークの美しさに脱帽します。窓は、通常は内部に方立(サッシ受けの縦材)がつくのですが、この建築は外側についており、またその縦の小気味よいラインが全体の印象を繊細に見せています。

ところで、ルーバーの穴あき感といいますか、その感じが新聞にある文章に似ていると感じるのは僕だけでしょうかね?



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低層部は、建築を構成する様々な部材がファサードに出ています。柱、梁、サッシ方立、、本来建物内側にあるものが、外側に出され、多くの部材が外側に出ることによって建築の情報量が多くなり、繊細な印象を与えます。この点が、他の大味といわれる超高層ビルとは一線を画します。

雨除けの庇も、屋根がガラスなので、金物がシースルーになってそのデザインを見せています。

そのおかげで、低層部も身体スケールのデザインとなっており、歩いていてとても楽しいです。


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とくに、穴あきの方立のディテールが美しかったですね。超高層ビルの場合、サッシのスケールメリット(たくさん使うことにより、普段は高価なものも安く使える)が大きいので、凝ったオーダーメイドのデザインもすることが比較的容易にできます。

ところで、柱細くないですか? 海外の建築は、柱・梁が細くてうらやましいです 笑 日本は地震大国ですからねー。


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エントランスホールの奥には中庭があります。中庭のサッシは内方立。見える側に方立が設えられています。柱の仕上げもただの四角じゃないですね。ところで、アメリカの柱梁の耐火被覆(日本だとある程度の規模の建築には必ず耐火被覆材をまく)って、どうなっているのでしょうね?


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オフィス・エントランスです。目の覚めるような黄色いデザインの壁は、外からもうかがい知ることができます。日本の超高層オフィスエントランスって、やれ石やら木(のようなもの)を使う傾向がありますが、このエントランスはオシャレですねー。


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ニューヨークタイムズビルに限らずですが、超高層を下から見上げると、おもしろいですよ! 同じデザインの重なりといいますか、リズミカルな重層性のある景色に圧倒されます。


このビルはとても繊細なデザインで、遠くから見ても近くから見ても、その建築から受け取る視覚情報といいますか、要素が多いので見てて飽きません。

その要素群は決して装飾的ではなく、熱負荷低減のためのルーバーのほかは、柱や梁、サッシ方立など建築に必ずあるものをちょっとデザインして外観に見せることによる繊細さなのですね。つまり、無駄な要素は一つとしてない。装飾されたニューヨークの超高層ビル群の中でも、ひときわ際立つ存在なニューヨークタイムズビルでした。

いつかまた、超高層を設計する機会があったら、僕も美しくメタルワークをデザインしてみたいですね。

ではでは~


ぱなおとぱなこ


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