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現代的な近代 ロームシアター京都(建築物語24)

今日は、とらや京都一条店(建築物語20)に続いて京都の建築です。新築時は前川國男さん、改修は香山壽夫さんという、今昔を代表するなんとも豪華な合作という意味で、かなりレアな建築となっています。

今は「ロームシアター京都」というオシャレな名前になっていますが、改修前の旧名称は「京都会館」とのこと。名前通り、劇場が主な用途となっています。大小の3つのホールからなり、カフェや蔦屋書店が入っている商業施設でもあります。



1960年に前川さんの設計で「京都会館」が完成しました。前川さんは、以前紹介した福岡市美術館や熊本県立美術館などの美術館建築、また上野の東京文化会館などの劇場建築など、公共建築デザインの大家です。



その半世紀以上たった2016年に香山さんをはじめとした現代建築家事務所が「ロームシアター京都」を完成させました。香山さんの建築に触れたことはあまりないですが、長久手町文化の家のホワイエのつくりこみが圧倒的だなと感じたのを覚えています。


ちなみに事業者は京都市で、PFI事業で民間会社を入れた事業計画となっています。


場所は平安神宮の手前、大鳥居を抜けた岡崎公園内にあります。一番近いのは京都駅からのバスですが、大鳥居の迫力がすごいので、僕は「東山」駅から参道正面を歩くのをおすすめします。


劇場というだけあって、その建築ヴォリュームは大きなものになっています。ともすれば長大な連続壁のファサードになりかねません。

そこで前川さんは美術館建築で見られる手法のように、中庭を設けて建築の「箱」を分割し、物量の圧迫感を和らげています。

以前にも前川さん建築の特徴を言いましたが、他のシンボリックなモダニズム建築と違って、現代的なテーマが感じられます。ヴォリュームを都市になじませて木々に埋没していく時間的デザイン。内外が同素材や同テーマでデザインされており、内外が一体に感じられ統一された世界観。

この建築はそれに加えて、重層の庇が用いられ、寺社仏閣のような、京都に代表する日本的な要素がデザインされています。60年前の建築ですよ?

ちなみに外観の大部分は当時のまま、内部は割と刷新されたようです。


軒の出は深くないものの、重層の庇は水平性を強調し、高さの印象をやわらげます。この四周に回された庇は、全体の一体感の創出に一役かってます。


ガラスの多い建築をデザインするとき、重要だなと思うことは、ガラスの向こう側=インテリアを含めて外観設計することです。木調の軒は内部にまで貫通し、浮遊した回廊は外観と同じくRC打ち放しの表情となっています。ガラスの向こう側も含めたファサードは、多様な表情というか、楽しげですよね。


大きな軒のあるバルコニーは、別の場所ではカフェになっていたり、休憩コーナーになっていたりします。これも現代的なデザイン要素ですよね?もう一度言いますが、60年前の建築ですよ?



1階ホワイエ(回廊)。回廊部分も大々的に回収されたようですが、左手は前川建築のなごり「大判のレンガタイル」がそのまま配置されています。


2階ホワイエ。まるでU字溝というか、土木的なデザインの手すりは、外部空間と同じデザインとなっています。ガラスの向こう側に見える景色を意識した要素ですね。

久しぶりの現地調査?です。 最近は建築か自ら矩計図を紹介する書籍がありますが、こんな昔の建築はなかなかないので図解したくなります。それとやはり自分で書いたものは、記憶の解像度が高いですね。

軒先廻り、吹き抜けの壁の部分がファサードデザイン上重要なポイントでしょう。軒先は金物とかやぼったいものを隠すデザイン、手すりはRC表しで手すりのベースも隠さないという、率直なデザインです。新旧で作者が違うこの建築の意図のちぐはぐ感というか、新旧の対比が見られて、ある種の不完全っぽさが親しみを感じます。


なんかいい窓辺ですね。。ごつい手すりと、スレンダーなサッシの対比が美しい。木調の軒が回っているのもいいですね。。

1時間滞在の予定でしたが、3時間以上も(測定やスケッチに1時間かかりました)滞在してしまいました。


ホワイエと同じかたちの手すり。雨がかかる場所なので、くぼみに雨水が流れるデザインになっています。



この気持ちの良いカフェも香山さんによって大改修されたわけですが、天井が特徴的ですよね。スケッチしていると、その設計の苦労が見えてきました。


天井を平面的にみたスケッチです。へたでごめんなさい。この手のパターンデザインは、やはりCADで書くに限ります(汗)。

で、この天井の一番大事なところは、設備を美しく収めつつ、個性的なパターンデザインすることでしょうね。僕がもしこれを設計するならば、、とふと考えていました。

まず、スプリンクラーは法律上で大体3m間隔で必要なので、これでモジュール(寸法)が決まります。各菱形にスプリンクラーヘッドが配置されています。6角形の中にはペンダントライトとダウンライトが交互に配置され、整然とではなく多様な印象に。図形を形作る縁には1つ飛びで空調吹き出し口(ブリーズライン)が配置されています。

こんなてんこ盛りに設備がありながら、写真ではシンプルな天井に見えていますよね? 



それでは前川さんデザインのピロティからさよならしましょう。


もう一度言いますが、

この建築には(前川さん建築のままの部分をいうと)他のシンボリックなモダニズム建築と違って、現代的なテーマが感じられます。ヴォリュームを都市になじませて木々に埋没していくような時間的デザイン。内外が同素材や同テーマでデザインされており、内外が一体に感じられ統一された世界観。加えて、水平の庇がたくさん用いられ寺社建築のような、京都に代表する日本的な要素。

すこし時代背景を振り返ってみると、

この時代は東京オリンピック1964に向けて、日本は欧米文化に倣うこと一色でした。丹下健三はあの有名な「東京計画1960」を打ち出し、未来都市のマスタープランを計画していたころです。世界に追い付け追い越せでイケイケな時代だったんですよ。

その時代背景の中で前川さんの建築は、時代を逆戻りするような、当時としてはノスタルジーというか、古いコンセプトだったのかもしれません。今でこそ、その地域や環境との「親和」が大事になって、威圧的なシンボルは無用となりました。むしろ前川スタイルは先進的ともいえます。

前川さんは、60年も前から時代の流れを予想していたのでしょうか?


ぱなおとぱなこ






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