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ツールとしての『手書き』を建築設計でどう活かすか

今日はとても暖かいですね、だから強めの風も、適度に肌を冷やし心地よいです。

たまには役に立ちそうなことを書いてみたいなあ、とふと思い立ち、

建築設計における「手書き」の使いどころとは、何かと考えてみました。


どうでしょう、設計を志している方や、すでに実務を行っている方にとって、「手書き」の存在意義はどこにあると思いますか。

建築設計者向けの、「手書き」での透視図や図面の書き方が記されている書籍は多くありますが、その多くはプレゼンテーション向けになっている気がします。

手書きは確かに、味があるといいますか、CADにはない不完全性ゆえの雰囲気の良さがあります。しかし、雰囲気重視のプレゼン手法としての「手書き」の手法が先行して、使い方が限定されているように思えます。


僕はというと、設計業務そのものに手書きを多用してきました。プレゼンのみならず、設計の過程で手書きを多用してきました、それは、最初に勤めた設計事務所が手書きを重視していたことに起因します。

僕は今30代で、学生の時からがっつりCADの世界になっていましたけど、設計事務所に勤め始めてから手書きを本格的に学びました。手書きはプレゼンテーションのみならず、様々なシーンで使い勝手があります。

僕なりのツールとしての「手書き」の使い方を紹介したいと思います。


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1.コンセプトドローイング

設計を学び始めたときから始まり、設計やめるまで書き続けることになるアイデアスケッチです。

脳から伝達されたアイデアを、手早く記録するために描く、断面やら平面の断片ですね。

当然CADではぜんぜん遅いです。書いている間に、流れゆく思考とともにアイデアが忘れ消えてゆくため、ここでは手書きが最適です。

手で書くことによって脳が刺激され、また新しいアイデアが起きることもあり、コンセプト立案段階において、非常に「手書き」は有用となります。

イメージの段階からガンガンに手書きパースが簡単に描ける手法を記事で紹介しています。よろしければ、どうぞ。


2.スケール感の把握と鍛錬

CADは、画面を無限に拡大できるし、縮小が可能です。それが便利な反面、スケール感の把握が難しくなります。手書きで書いた平面図は、縮尺が一定の紙面で書くことになります。

1/00の縮尺なら、全体構成、ゾーニング、法律を確認したプラン、構造や窓の配置を考えればよいし、1/50ならさらに基本的な納まりを記した全体の検討ができ、1/20からは製作方法の検討ができます。

設計に慣れてくると、縮尺を頭の中で予測できる分CADのほうが効率的と感じられますが、最初は図面の縮尺にあった検討をしたほうが、より効率的と考えます。

1/100で収まりを表現しても、図面が線の重複でつぶれてしまいますしね。反対に1/20でスカスカな図面になったら、それは検討不足ということでしょう。


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3.概略的な全体納まりの検討

図面の細かさでいうとCADに一日の長があります。

しかし、全体を左右するディテールを考えるときは手書きが有用です。

スケッチの上に、構造の仮断面ででてきた断面や設備機器を簡単に赤書きで乗せることができ、そのスケッチ1枚で、構造・設備設計との打合せの内容が瞬時に反映できます。

CADは良くも悪くも1ミリ(以下)単位で作図ができるため、どうしても施工ができるか、施工誤差を無視しがちになります。これは経験によって寸法を見ればわかることですが。

しかし、こんな言葉があります。「手書きでつぶれた部分は、おさまっていない」と上司に言われたことがあります。なるほどと思い、納まりの怪しい部分は今でも手書きで確認するようにしています。


4.施工者とのコミュニケーションツール

施工図を作成する規模の建築を設計する場合、必ずコミュニケーションは口ではなく、図で示すことが必要となります。(口で指示して問題を解決したと考える設計者は、施工者に責任を押し付けたようになるため、僕は好きではありません。)

施工者との打合せで、議論がヒートアップしてくると、施工者から必ず「分かりません、図で書いてください」とよく言われます。

その場ですぐ図や絵が書けないと、現場はもちろん進まないし、「こいつはこんなもんか」と舐められ、現場運営が円滑に進まないことがあります。

施工図の上に図を描きなおしたり、1からその場で図を書いたり、手書きは施工段階で、その効果を発揮します。


5.CG作成の指示としての手書き

設計者は、CGで検討はするものの、CGクリエイターではありません。でも、施主へのプレゼンテーションのために、あるいは施主の経済活動のために(銀行や売却先への提案など)CGが必要となる場面があります。

手書きの透視図など簡単にスケッチしてCGクリエイターに指示できれば、設計者にもCGクリエイターにも相互に利益が生まれます。

CGクリエイターにとっては、正確に意図が伝われば手戻りなくスムーズにCGを納品することができますし、設計者にとってはアングルや素材感、光の感じ、人や樹木などの点景など、思い描く絵になればよいプレゼンテーションができます。

指示書としての手書きの透視図は、とても重要だと思っています。


6.施主との打合せ

施主は、大体の場合一般の方か、あるいは専門の方であっても設計者より図面を把握していることはないと断言できます。

ですから、2次元の図面で提案しても、100%理解が得られることは少ないんじゃないか、と言えます。

そこで、打ち合わせの場で図面を補足する簡単な透視図が書ければ、打ち合わせは円滑に進みますし、施主の理解度も深まるので、後での思ってもない変更が少なくなります。

前職の上司は、対面で施主が座っていたとして、施主のほうから見た透視図を、話しながらでも描いているのを見て、びっくりした覚えがあります。僕も真似をして描いてみましたが、これは難しいと断念しました。

描いたときの相手の驚きと喜びはすごいので、ぜひ練習をしてみたらいかがでしょうか。


7.建築士試験

CADが一般的になったのに、あいかわらず試験は手書きです。試験のシステム的にも今後もCADに変わることは難しいんじゃないかと思っています。

手前味噌で恐縮ですが、僕は製図学校に通うことなく、1回の実技試験で合格しました(この話題については、どこかで記事にできたら、と)。平行定規を使うことなくT定規と、三角スケールを使ったフリーハンドでした。

大学を卒業し、設計業を始めたころから、手書きで検討をしていましたので手書きでの苦労なく、案の良しあしは置いといて作図の時間で苦労することはありませんでした。


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いかがでしたでしょうか。

これは僕の事例です。

このほかにも、「手書き」はひとによっては様々な使い方があると思います。

僕がいいたかったことは、「手書き」は楽しんで書くものだし、プレゼン以外にも使えればすごくいいよね! ということです。

「手書き」の技術を伸ばすことは、いいことしかない、と思っています。

CG作成技術よりも。

CGやCAD表現は年々美しく、精緻になっています。そんな時こそ逆に手書きを伸ばしてみるのはいかがでしょうか。


ぱなおとぱなこ

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