ひとりでも、ぽかぽかしていれば、それでも私は幸せです。(紆余曲折集感想文)
私はチャラン・ポ・ランタンが好きだ。
どれくらい好きかなんて言葉で例えることも憚られるほどに私はチャラン・ポ・ランタンに多くの時間とお金を使うことで様々な幸福を得てきた。
だから、今回3年ぶりのアルバムが出ると聴いて最高潮に嬉しさが湧いたが同時に私の銀行口座からは笑えないほどのお金が飛んだ。とんだ泣き笑いである。
だから当然買う。当然最高だった。
このアルバムが発売される前から各楽曲がラジオなどで解禁され続け、その時点で最高の嵐であったので確約された名盤であることは判り切って聴いたし案の定名盤で。むしろその期待を上回る名盤だった。
サーカスのようなアルバムだったと思う。そしてチャラン・ポ・ランタンが詰まっているような気がした。
ひとつひとつのピースを見てもチャラン・ポ・ランタンだけど、それが組み合わさるとそれがより強固なものになったような気がして鳥肌が立った。
ピースをひとつひとつ大事に聴いて、そしてそのピースを繋げて感じた大好きをそのまま言語化したいと思った。つまりはこの好きを、愛をぶちまけたい。
M1 ぽかぽか
明るいアコーディオンで、楽しいメロディから幕を開けるこのアルバム。もう楽しい。
お昼の番組のために書き下ろした曲だが、今のチャランポにもぴったりで、そしてこのアルバムの1曲にもぴったりなのがすごい。
「カツカツの予算内がんばれイェイイェイ」という歌詞も番組サイドから指定されたワードだったのが意外だし、このアルバムを作ったことで金欠フェスティバルが開催されるチャランポと驚くほどマッチしているのが最高。
そして、次への展開に期待するこの曲はアルバムのいちばん最初に持ってこい。
さあここから紆余曲折集がはじまる。まだ1曲目。手を替え品を替えどんなウキウキを見せてくれるのか。
”ウキウキのネクストは期待もイェイイェイ どんなのが来んのよ”
M2.恋と呼ぶなら
こんなのが来たよ。
”多分うまくいかない”が来たよ。リスクとか考えちゃってるよ。でもそういうところが大好きです。ええ。本当にありがとうございます。
転調が繰り返されることで迫りくるような雰囲気を醸しているのが良いし、何よりどんどん余裕がなくなっていく主人公の姿とリンクしているような気がする。
歌詞にもある“18”の頃って何かから守られていたし、恋愛も生活をまるごと捧げる必要もなかった。一番気楽だった。だから、無敵な気がしてくる。歳を重ねて経験を重ねて失敗をして、失敗を見て、どんどん臆病になっていく。わかります。これって恋愛だけじゃなくて全部そう。子どものころの無敵さといったらそれはもう尋常でなくて、平気で仮面ライダーになれると思ってしまう。前に続く道の先はまだ蜃気楼。あれ?これ、どこかで?
とにかく戸惑いを孕む歌詞に、迫りくる曲調が好きだし、大手の事務所を独立する決断をし、どんどん新しい試みに挑むチャランポでも臆病になっている部分があるのって人間らしさに満ちていて安心する。最高に好きである。
MVのアニメーションもめちゃくちゃ可愛くて大好き。
M3 みてるよ
まあ、こんな目にあったら臆病にもなるよね……。
ちゃんと理由が説明できるの、えらいね。
というのはさておき、過保護なメンタルがおヘラりになられている男性の曲。基本的に同じメロディーの繰り返しで、次から次へと恐ろしい言葉が出、次から次へと恐ろしい部分が見えてくるのがあまりにもおどろおどろしい。ずっと同じトーンで、同じようなことを迫ってくる様が思い浮かび背筋も凍る。聴けば聴くほどそれを消化する小春さんは安定の所業で笑えてくるし、怖くもなる。
パノラマで送らないといけないの、あまりにも怖いね……。
どうでもいいが私も割と付き合う男性をメンヘラ化させてしまいがちな節があるのでこんな目に遭わないように気を付けたい。
完全な余談だけど、先日のブタ音楽祭遠征時このMVが撮影された中池袋公園に行ったら完全にオタクたちの交換所と化していたのでオタクがいない時間に撮影したと思うと大変だったろうなと思った。
池袋ってかなりオタッキーな場所のイメージがあったけど、東口にはコンカフェが多くて特殊な格好をしたかわいらしい女性ズがわんさかいた。中池袋公園が位置するのは西口なので、ああ、この彼女は逃げてきたんだなと、解像度が高まった。
M4 無神経な女
以前より歯の話を小春さんがされていたのでとうとう曲ができてしまった……と期待値を膨らませていたが本当に期待値以上のもが来てしまったので私の心はダンシング状態である。
再植手術の話を聴いて「そんな、最新の医学、だいぶ無茶だ……!」と思っていたところに”最新の技術未だ原始的”という歌詞で爆笑してしまった。
歯科用語のコールアンドレスポンスも非常にシュールでいい。チャランポラーが歯科事情に詳しくなっていくの、だいぶ面白い。
度々曲に小春さんの子芝居が入るのが良い。個人的には“保険適用内カード使えません”という箇所の後ろ。「すみません…」「え〜…」の部分が好き。根本さんも台詞用意したくなっちゃうね。
かくいう私も歯医者に通っていないのであまりにも刺さる。おそらく私の口内環境はズタボロに違いない。虫歯もあるんじゃないかとさえ思っている。おまけに親知らずを放置しているので確実に”麻酔3本効果なし”案件が待ち構えているような気がする。ああ、怖い。けど通ったほうがいいですよって言われちゃあなあ、行かないとなぁ。
MVが最高すぎる。歯の痛みの苦しみをポップで狂気に表現されててめちゃくちゃに。チャランポはふたりが絵になるからそれをパッケージしても映えるMVになるけど、それはさておきアニメーション映えする楽曲たちでもあるから待望のアニメーションMVが観れて嬉しさが満載である。
M5 クソリプ・カリプソ
これで笑わない人いる???????????
抱腹絶倒のダディつるし上げシリーズである。
楽し気なメロディなのにちくちく言葉とツッコミが癖になる。
”「クソリプかもしれませんが」 自覚あるのなんでよ”
で堪えていた笑いが漏れ、
”「この曲、カリプソじゃないです」 言われそうな気がすんよ”
で決壊する。ずるい、こんなのずるい。
つるし上げ曲、どんどん愉快になっていくの本当にだめ。どうしようそのうちクソリプサンバとかやり始めたら。もうまともな顔して聴けないよ。笑いすぎて。
つるし上げ楽曲、大好きだけど聴くたびに「私、地雷踏んじゃってないかな?」と不安になる。人間だから時折迷惑をかけてしまったり地雷を踏んでしまうことはあるけれど目に見えた地雷は踏まないように気を付けたいものだ。
お互い楽しく、愉快なオタク活動を心がけましょうね。
M6 マジシャン
インスト曲入れてくれるのめちゃくちゃ最高では?
チャラン・ポ・ランタンは歌とアコーディオンの姉妹ユニットではあるんだけど、小春さんの創る世界だとも思っていて。改めてチャランポの自由ぶりがインスト曲があることで伺えるような気がしていい。
別のバンドの話を出すのは違うとは思うのだけれど、どうしても好きな考え方だから許してほしい。私の好きなとあるバンドはたまに他のメンバーが演奏に参加していない楽曲をリリースすることがある。それを彼らは「消せるということはあるということ そしてまた鳴るということ いつでもすぐにバンドになる」と表現していた。歌がないことでももさんの存在を強く認識もできるし、小春さんの世界の自由度が増すし、カンカンの演奏も堪能できる。
そして、閑話休題的な役割も果たすというありがたづくしなのだ。
曲の話をしていなかった。私はふーちんのオタクでもあるため、ニタニタしながらドラムソロ聴いている。ボンゴのポコポコ感もさながらいかつい変拍子がたまらない。そしてこの次に繋がるリバイバル上映の幕開け前のオープニングのような味わいも感じられるのである。
M7 リバイバル上映
旅立讃歌で感動的に旅立って、独立後最初に出した曲が夜逃げで大爆笑しちゃったよ。
アルバム用にバンドで録り直してくれるところに気合いが入っているのがよくわかって嬉しい。金欠になってでも本気で作ってくれてありがとう……。これからもお金、払い続けるね……。
リアルなLINEをそのまま歌詞にしているとのことで相変わらずの小春さん節で笑顔に心配になってしまう。
何度も同じ展開を繰り返してしまうという点ではこの後に続く懲りない女と同じで一貫して小春さんという人間が改めてこのアルバムには色濃く出ているような気がした。あまりに元がリアリティすぎる故に差し替えられたらしい最後の「また観に来ます」がよりそれを演出しているのが良い。
先のマジシャンでチャラン・ポ・ランタンは小春さんの世界と評したけれどそれに色をつけるのがももさんだと思っていて、それは歌だけではなくアレンジもなのだ。
でも、「私は私だけでいたいだけ」と歌うのって改めて独立とすごくマッチしているよな、と。
無理に明るい曲を作ったって変わらないからね。
M8 Color
ショートドラマ「独立前夜」のために作られたこともあるのか、前向きな1曲。
“私にしか描けない未来は何色? どれも私次第なんて怖くてシビれるわ”というフレーズを聴いてこの先のシナリオは貴方次第を思い出したポラーはきっと私だけではないと思っている。“危ない茨の道は私にお似合いだわ”である。怖くてシビれるけどそれを嬉々として突き進む姿はまさにチャラン・ポ・ランタンそのものだし、“誰かに言われたエネルギッシュは褒め言葉。”というフレーズは今まで言われた言葉たちを原動力にしている部分とも重なる。
正直、この曲を最初聴いた時あまり刺さらなくて「ぽくないな」と思ってしまったのだけれどそれは本当に大きな間違いで、噛めば噛むほどチャラン・ポ・ランタンらしい曲だった。
そもそも表面だけ見て◯◯らしいなんていうことの方が浅はかな話なのだから。そりゃそうである。ごめんなさい。
曲調の新鮮さも小春さんの引き出しの多さの証明だし、それでも軸はブレていないからどんどん明日が楽しみになれる。今はそんな楽曲だと思っている。
M9 懲りない女
令和一のトホホ。らしい。
素直になれない報われない女を書かせたら小春さんの右に出る者はひょっとしたらいないんじゃないかというか、小春さん自身がそれだからなのか(怒られろ)。でもそれをトホホで済ませる気概、最高。
アコーディオン1本だからムーディかつ歌謡曲らしい雰囲気を醸していて味がある。
ドーナツ盤とかで聴いたらめちゃ味があるんだろうなあ。
「どうしたってみんなひとりぼっちさ」ともはや悟りの片鱗が見えているがそれでも誰かを求めてしまうのが懲りなくて、それも人間っぽくて愛おしい。
私は人間離れしている人の人間らしいところが大好物なのだ。
MVのコミカルでシュールなこと。最高ですね。それでいて間奏の小春さんの仮面姿にやられたのは私だけではないはず。ありがとうございます。
M10 隣の足元
超絶アコーディオンのシングルバージョンも大好きで、何度も聴いたのだけれど、配信ライブで聴いたバンド編成の演奏がどうしても大好きでずっとこのバージョンも音源化して欲しいと思っていたので念願が叶い嬉しい限りだった。
個人的にサビ前の「青い 青い 青い 青い」がすごく日本語的で好きだ。隣の芝生は青いという言葉は英語にしても「青い」という訳にはならない。日本語だからできる表現で何にも替えられない感じがして良い。
どんなに好きな人でも隣が気になって羨ましく思ったり、嫉妬してしまう。どうしようもない焦燥、劣等感、そして思ってるだけの現実。そんな二面性が曲調からも感じられるような気がして引き込まれてしまう。
以前チャラチャンラジオでおふたりが劣等感や嫉妬心を抱くのは自分でもできるかもしれないと心のどこかで思っているのかもしれないという話を聴いて、なんとなく腑に落ちた。
諦めきれないから隣の芝生は青い、青い、青い。
確かに、私にとってチャランポを含む推し各位は皆雲上人すぎて羨ましいの対象にはならない。
でも別に誰かと比較することは決して悪いことじゃなくて、むしろ比較対象がなければ何かを感じることがないと私は思っている。わかる、その気持ちわかるよ、暴れずに済んで偉いね。
とっ散らかってしまったけど何が言いたいかと言うと、素直になれない不器用な主人公の気持ち、私も痛いほどわかるから共感もできるし、抱きしめてあげたくなるということだ。
M11 Russian-wine
某ブロックを消すゲームのような、とどのつまりはロシア民謡的な雰囲気を醸している。
異国の情緒が漂うこの曲、まるで、この後国を超えて何かをするのではないかという含みも感じられる曲順である。深読みしすぎか。
マリナさんのクラリネットとオカピさんのテナーサックスの掛け合いがまるで会話しているよう。でもその後ろのアコーディオンもすごくメロディアス。
バーでワインを飲みながら、会話するふたり。そして流しで演奏するアコーディオンやチューバ等々……。そんな光景が思い浮かんだ。
個人的にブタ音楽祭でゼロコのパフォーマンスに合わせてこの曲が演奏されていたのも印象的。大道芸と同じリズムで息をするように繰り広げられるこの曲が心地よかった。大道芸の演奏は動画で見たことがあったけど生で浴びるとそのリアル感がすごくて感動した。大学の講義で明示知と暗黙知についての話があったけれど、やっぱり生で観ると解像度は高まる。
M12 輸入コンテナディスパッチ
一言。好きすぎる。
アコーディオン輸入の大変さが伺える。それ以外はわからない。輸入手続きって、大変なんだね……。
曲の荒々しさ、カッコ良すぎるラップ、魂からの叫びをありがとう。
すべてがなんことやらと思っていたけれど、9桁のH.S.codeがアコーディオンの番号ということに気付いたポラーさんの話をラジオで聴いて改めて芸の細かさに感嘆。裏で「FAXがないよ〜!!」と言う小春さんも、FAXがない悲痛(?)をより際立たせていて最高である。
それにしても今作を聴き込み歌詞をより理解すると歯と輸入のことが少しわかったような気がするのが面白い。確かに知識が無駄に沢山ついたね(そう言う意味じゃない)。
余談だけど、CDのクレジットにFAX GA NAIというパートが記載されていて面白かった。こういう遊び心、楽しくて愉快だから好き。
MV、小春さんが荒ぶったり急にかっこいい顔したりするから心臓に悪いね。最後の箱から出てくるはろりさんも超かわいい。
M13 三茶の駅
歌とアコーディオンだけで構成されて、場所が細やかに描写されている曲。
こんな曲、前にもあったな?
そう、ミルクティーである。私はミルクティーが死ぬほど好きなのでこの曲ももれなく大好きである。
昔の思い人、恋人に偶然出会う。よく知っていたはずの彼女が知らない姿で元気そうに歩いている様をみて“元気そうに歩く姿があの頃より可愛くなくてよかった”と表するのがあまりにも天才的すぎる。
自分が好きだった姿と乖離した今を見た時の少し複雑な気持ち、好きという気持ちは消えていること、関係のないところで元気そうに生きていることへの安堵。それらが詰まっているような気がして胸がきゅっとなる。
そういえば、先述のミルクティーがリリースされた時、私は15歳だった。15歳が最後に会った人が22歳の私を見たらどう思うのだろうか。変わったのか、変わっていないのか。いや、あんま変わってないかな。
M14 無限大
断りを入れよう。今から自分語りをする。隙がなくても自語をする。マジでこの曲が好きなんだ、私は。この曲の再録に世界一喜んでいるのは私である。だから許してほしい。
この曲がリリースされた頃、私は迷っていた。
就職活動もほぼ終わりを迎え、内定も複数得ていた。だが、そこで壁に直面した。どの企業を選ぶかという問題だ。ひとつはずっと自分から就きたかった企業だ。しかし、そこは新卒採用経験がない企業で、新卒には難しい業務も多い。もうひとつは就職活動をしていく中で開拓して見つけた企業だった。給与は安定はしているし、人材育成のノウハウもある。やってみたいのは前者だけど、安心を選ぶなら後者だ。すごく悩んだ。私はこれまで特段優秀と言われ育てってきたわけではないし、むしろ劣等生と呼んで差し支えなかった。何をしても一等賞にはなれなくて、不器用だからコミュニケーションをとるのも苦手で友達もいつも運任せに作ってきた。そんな私にできるのか、怖かった。だから、この曲を聴いたとき、嬉しくなった自分がいた。
“1人で部屋のすみ泣いてた 誰かより私はできなくて 最初にゴールしたあの子よりも 私はいつだって後だった”
自分のことみたいと思った。嬉しかった。
“間違ってないといつか言える「だって」とか「でも」とか言い訳はいくらでも言えるわ”
言い訳をして自分のやりたい事から逃げるのは違うのはわかっていたけど、改めてそう言ってくれたような気がして、背中を押されたような気がした。
未来は無限大だから、あの頃漕げなかった自転車が漕げるようになったように、間違ってないと言えるようにしたいと思えたのだ。私がこの曲が好きで自語りをしたいのはこのような所以がある。
よし、曲の話もしよう。(まだするのか)
これも「独立前夜」のために作られた曲で巣立ちがテーマの曲。旅立讃歌と似たような箇所があるのはおそらく意図的だと思っていて、旅立讃歌が自分たちの独立を奮い立たせる曲とすれば無限大は自分たちの独立だけじゃなくて誰かの独立を支えるような曲だからだと私は解釈した。
いつしかいっくよー!をアルティメットこの先のシナリオは貴方次第だと評したけれど、まさにこれはアルティメット旅立讃歌だと私は思っている。
アルティメットってつけると強そうでいいよね。
小春さんの書く字が好き。
好きすぎてアルバムバージョンじゃないけどMVのリンク貼っちゃった。
M15 Hi! Lonly
今作最後の歌モノトラックにして、最大の風評被害曲。私も仮面舞踏会の呪いにかかっているしなんなら踊り狂わさせられている。
閑話休題。
あまりにも悟りを開いていると思いつつあまりにも歌詞がはろりなのでほぼはろりリリックかと思いきやほとんどが小春さんの所業と聴いて驚いた。
夜中のホテルでこの曲が生み出されていたと思うと少しじわじわくる。
誰かと添い遂げる、なんて幸せなこと。けれど別にそれだけが幸せではないから。でも、愛を信じられる人を肯定しているのもまた愛を信じられる人だと思う。等しく素晴らしいよ。自分のゴキゲンを自分でとれるのって最高じゃん。
MVもポップで楽しくて大好き。
別に誰か愛する人がいなくても友達もいるし、家族がいるし、それだけでも幸せなんだよな。いや、友達いなくても幸せだよね(全方位に配慮した発言)。ともかく、幸せの尺度など他人に決められてたまるか。
M16 Gardenia
私は幸せです。
ガーデニア(ケープジャスミン、クチナシ)の花言葉だ。紆余曲折してきたアルバムもとうとう次で最後。
散々な恋や散々な歯痛に無知に鞭を打たれたアコーディオン輸入、そして独立。色々あったけれど、ひとりだけど、それでも私は幸せです。と解釈できるような気がして、嬉しくなった。
きっと危ない茨の道を通ってきたけど、それでも幸せと言い切ってくれたような気がして、勇気が出てくる。
舞台「ケープ・ジャスミン」はおまじないのように、自分に言い聞かせるように歌っていた「それでも私は幸せです」という言葉だけど、自分たちの紆余曲折にこの言葉を投げかけることで、あの物語の登場人物たちも含めて浄化してくれたような気がして、心があたたかくなった。
M17 ぽかぽか -Accordion Version-
最後の曲だ。
ぽかぽかではじまりぽかぽかで終わる。
色んな“どんなの”を観てきた。でもそれで終わりじゃなくてこれからも紆余曲折な人生は続いていく。これから“どんなの”が来るんだろうね。明日が楽しみで仕方ない!
このアルバムは静かに幕を閉じようとしている。
紆余曲折なサーカスは終わってもこれからも紆余曲折な人生は続く。けど、リピートボタンを押せばいつだってこのサーカスは繰り返し楽しめる。
同じ曲を何度でも欲しいのならいつだって!
また、次のサーカスでお会いしましょう。
……と、全曲の感想をここまで書き連ねてきた。紆余曲折が感じられる歌詞のリアルさや悍ましさにドキドキさせられつつも時に楽しくなったり、勇気づけられたり、時に笑ったり。日常を切りとりしていてもそれをドラマチックに楽しくパッケージされていた。サーカスに似ている気がした。チャラン・ポ・ランタンの日常を切り取ったこのアルバムは一本のサーカスを作り上げていた。
このアルバムが発売された直後、シルクドゥソレイユ アレグリアを観た。小春さんがアコーディオンをはじめるきっかけになったサーカスだ。次々と繰り広げられるパフォーマンスにハラハラしながらもワクワクする。そしてそれに付随して奏でられる音楽。これがチャラン・ポ・ランタンの世界の血肉を作っているんだとはっきりとわかった。
そして、紆余曲折集は私は体験し得ない夜逃げ、壮絶すぎる歯の治療、輸入手続きをはじめとした危ない茨の道に進みながらも楽しく歌っている曲で溢れている。ふとあるキャッチコピーを思い出した。
“世界はあなたの劇場 日々はあなたの舞台 人生はあなただけの歌”
テアトル・テアトルのキャッチコピーだ。まさにこれだ。日常を切り取って、それをエンターテイメントにしてくれるのがチャラン・ポ・ランタン。手を替え品を替え、私たちを笑顔にしてくれるエンターテイナーなのだ。もうそんなチャラン・ポ・ランタンがつくる作品はまさにサーカスなのだ、というわけだ。
これからも色々な“どんなの”が来る。それをリアルタイムで現在進行形で目撃できる、なんて幸せなことか。紆余曲折集という最高のアルバムをこうしてリアルタイムで熱を持って楽しめているのも幸せで仕方がないのだ。
つまり、言いたいことをまとめると「これからも大好きでいさせてください」だ。
永遠なんてないので永遠なんて約束できないけれど、それでもできるだけ長く好きでいます。それだけで、私は幸せなのです。