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ハイパーテキスト小説、AIその2(文学とは何か⑧)

前回、「デジタルリンクなどの手法で、状況に合わせて内容が変化する小説」はすでにあるのか、と書いて、ちょっと調べてみたのだが、あった。

とりぶみ 書物の国の冒険

ゲームノベルに近くて、選択の連続で読み進めていく。
途中で言葉遊びなどが出てくる。

この方の書評で、井上夢人さんが2005年に完成させた『99人の最終電車』を知った。
こちらは、選択で結末が変わるわけではないが、結末に向かって、99人の乗客それぞれの、それぞれの時間の過ごし方を追うことができる。

もう1度言いますが、世界的に見ても、実験小説の歴史に残るすげー小説です。「ややエンタメに傾きがち」とおっしゃる方には「純文学とか大衆文学とかいうジャンル分けはもはや不毛」と言っておきましょう。
友だちがそう言ってました。

とりぶみさんの書評

小説は、新潮社から無料で公開されている。

99人の最終電車

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AIは既存のテキストを引用する。
なら、私は自分の体験、経験のみから引用しよう。これは、AIが学習できない領域だ。
他人の文章からは引用しない、と決めたら、AIに勝てるのではないか。
加藤周一氏は、文学は個人的なところからはじまる、というようなことを言っていた。
普遍や客観、科学的、というものとは違う、個別的なものごとを扱っている。
しかし、そこからもちろん、個人の中だけにとどまらず、その感動は広場へと広がる。

小さな窓から世界を見る、とよく言うが、小さな窓から世界を描いた結果、ほんとうの広い世界とつながれる。
BUMP OF CHICKENの『窓の中から』。

村上春樹の井戸の中、そこからうなぎのようなものを共有すること。


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