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心を分析する(文学は心を扱う⑫)

ネットを検索していたら、よしもとばなな氏の小説についての学士論文が見つかった。

よしもとばなな小説作品の構造特性   ~主人公の心理のグラフ化をもとに~

小説の中の、主人公の感情の起伏を、心理状態で点数化して、グラフに表そうという試みである。

その中に、ローズマンがあらわした、認知次元と感情の関係表というものがあって、人間の感情について、リストアップされていた。

○喜び・・・幸せである、幸福である
○満足・充足・・・無かったものが満たされて、満ち足りている
○安心・安定・・・ほっとする、不安がない、安心する、心地よい、充実している
○希望・・・未来を想像する、期待を抱く
○決意・・・何かをなそうと決定する
○前向き・・・物事を肯定的に捉える、何かをなそうと意識する
○自信・・・自分を肯定する、自分の考えを肯定する
○感動・・・おもしろい、おかしい、かわいい、美しい、きれい、尊敬する、不思議、うれしい、快い、楽しい
○驚き・・・驚く、びっくりする
○好意・・・好き、微笑ましい、かわいい、恋愛感情、親しみ、感謝、感心
○感傷・・・懐かしい、しみじみとなる、切ない
○悲しい・・・悲しい
○さみしい・・・さびしい、さみしい
○絶望・・・現状に立ち向かう気力がない
○不安・不安定・・・心もとない、喪失感がある、安定感がない、心配、心細い
○孤独・・・孤独である
○フラストレーション・・・もどかしい、不満、辛い、困惑、卑小感、焦燥、落胆、緊張、ためらい、恥ずかしい
○恐怖・・・怖い、恐ろしい
○怒り・・・腹が立つ、むかつく、いらつく、不服に思う
○嫌悪・・・嫌い、気味が悪い、不気味

よしもとばなな小説作品の構造特性   ~主人公の心理のグラフ化をもとに~

論文著者は、これに「共感・願い・予感・思いつき・あきれ」を加えている。

また、ここには、罪悪感、恥ずかしさ、苦痛、誇りなどは入っていない。

文学作品の中には、かように複雑な心理状態が描写されていることか!

私は心理学にはとんと疎いのだが、科学的に、ヒトの心について考えることも、アプローチのひとつとしては重要なものだと思う。

あるいは文学は、作品全体で、心理学などには簡単に分類されない、新しい感情を言い当てるものかもしれない。
そういうものって、もやもやして、抽象的なものだ。
それを乗せるためのビークルを、文学は提供するのではないか。

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