心とは何か(文学は心を扱う⑪)
文学は、心を扱う。
では、AI時代に、「心」とは何か?
外界の刺激に対して、何らかの反応をする、脳や心臓の中の、ブラックボックス。
心は、贈り物とか、表情とか、そういうものでも表現できるけれど、大部分、言葉によって表現される。
嬉しい、悲しい、寂しいなど、言葉は心の状態を名付けている。
ところでこれまで、私にとっての文学的な状態とは、心が動く状態だ、感動するような状態だ、と定義してきたのだけれど、心って、動かしたほうがいいものなのか?
凪、ではいけないものなのか?
静かでクールで冷静ではいけないものなのか?
人間は、泥にまみれて、意地汚く、ままならない心を抱えて生きていかなければならないのか?
好きとか愛するとか性欲とかいうことも、全ての人が持っているとは限らない。
愛着障害、アロマンティック、アセクシュアル。
衝動を、情動を、抑制して生きられる人も、いるのではないか。
(それでも、心のうずき、ゆらぎ、はあるか。)
ゴッホという芸術家は、その衝撃、情動が、激しかったという。
太宰治は、最期は愛人と入水自殺をした。
三島由紀夫は、割腹自殺である。
文学的であるためには、心を苛烈に燃やして生きなければならないのか?