金木犀
"金木犀"
あの匂いがする季節がやって来る。
金木犀の匂いは、どこか懐かしい様なでもどこか切ない気持ちになる。
金木犀は9月〜10月に咲く。
この季節を密かに待ち侘びている。
僕が彼女を待っている様に。
金木犀は咲いていく。
前に彼女は言った。
"金木犀ってお花知ってる?
私あの匂いがとても好きなの。
でも銀木犀っていうお花もあるの。
その銀木犀のお花の花言葉はね、初恋って言うの。
ふふっ、私達にぴったりの言葉でしょう??"
そう優しく笑う彼女が居た。
でも彼女はこの世にはもう居ない。
僕の横に隣には居ない。
何も言わずに亡くなった彼女。
きっと彼女はもっと長く生きて人生を全うして…
考えるのはよそう。
僕はきっとこの金木犀の季節が来る度、彼女を思い出すだろう。
金木犀の時期が来る。
ふわっと風が舞うとあの匂いがする。
今年もまた彼女はこの空のどこかであの優しい顔で笑っているのだろうか。
END.