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窮屈なわたしと、おおらかな天使さんたち
「わたしの考え方は窮屈」
が、猛威をふるっていた頃のお話。
ただただネガティブの嵐がすぎるまで、
そっとじっと、やり過ごすしかなかった若い頃の、
すくい上げられたときのお話を書いてみようと思います。
忘れもしない。
その日は遠方への出張だった。
バスで関空まで行き、飛行機にのって、さらに2時間ほどトランジットもあるかなりの長距離移動だった。
その日、絶賛ネガティブの襲来を受けていた上に、
出張に仕事に穴をあけてはいけないというプレッシャーも重なって、
朝から吐いたり、下げたり、挙句貧血をおこしてトイレの前でしばらく横になる、、、という状態になった。
気は確かだったので、
うっすら天井を見上げながら、貧血が通りすぎるのをまった。
出発するまでは20分ほど時間があるから、大丈夫だと言い聞かせた。
当日、出張をキャンセルするなんて、責任感だけは強いわたしにはあり得ないことだった。
当時、バス乗り場には、歩いて行ける距離だったことがありがたく、
でも、スーツケースをゴロゴロ引きながら、
悲壮感を全身から放ち、
よろよろとお取引さんとの待ち合わせ場所に向かった。
ちょうど、50m先のほう、
高架の下で、その人はわたしを呼んだ。
「〇〇さぁ~ん!」
ふっと見ると、彼はわたしの名前をのんきに呼びながら、
ちょうどビッグマックにかじりつくところだった。
ネイビーブルーのきれいなスーツ、きちんとしめられたネクタイ、
背丈のある見栄えの良い彼が、
足はきちんとそろえ、
でも上半身は前かがみで、
ビッグマックを思い切りむさぼり食う姿。
いや、ほんとに、かぶりつくというよりも、
首をすくめ、猫背気味にハンバーガーを食らう姿は、
「むさぼる」という言葉がぴったりだった。
わたしはそんなふうに「食らう人」を見たことがなかったので、
心底びっくりして、
そして不思議なことに、目の前で「パン!」と手をたたかれたように、
はっと目が覚めた。
無邪気にハンバーガーを食べる人を見て、
わたしはおかしくなり、すごく笑った。
彼はもごもご咀嚼しながら、
「なんでそんなに笑ってるんですか!」
と言いながら、食べるのをやめなかった。
目は笑っていた。
わたしはさらに笑った。
涙を流して笑っていると、
あれ?具合悪かったのどっか行ってる!
と、びっくりしたことを覚えている。
なんでわたし、貧血おこすほど悩んでたんだっけ?
今でもその原因は思い出せない、、、。
そして、明るく無邪気な彼にひっぱられ、
無事現地に向かうことができたのでした。
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それから数年後、
自然多いこの場所に引っ越してきたはいいけれど、
案外線路が近くて、音が苦手だったわたしは特急が通り過ぎる音だけがこの賃貸の難点だと思っていた。
昔なじみの、愉快な先輩たちが引っ越し祝いに遊びに来てくれたとき、
わたしはぽろっと、
「ベランダでガーデニングして、お茶飲んだり、ビール飲んだりしたかったのに、15分おきに電車通るからできひん」
みたいなことを言った。
すると、愉快な先輩の一人が、
「へ?じゃあ15分おきに部屋に入ったらええやん」
"何言うてんの?この子は”
みたいな呆れた表情で言うので、またしてもわたしは、目の前で「パン!」と手をたたかれたような気がして、笑った。
「ああ、そうですね、15分おきに出たり入ったりしたらええんや。
いや、めんどくさいわ!」
と、関西風味のやりとりをして、
笑って、
確かに15分おきに出たり入ったりはめんどくさいけれど、
やりようはいくつもあるんだ、と納得し、
おおらかでポジティブな先輩が素敵だと思った。
ちなみに彼の引っ越し祝いは、「アメトーーク!」のDVDだった。
笑えよ、ということなのだろう。
ここ最近、おおらかな天使たちは、
わたしの前に現れて、目の前で「パン!」と手をたたかない。
"ちょっとちょっと、大丈夫か?曇ってんで”、と
発想の転換を手伝ってくれる天使は現れない。
なんとなく、
その理由はわかる。
わたしはその後、いろいろな知恵をつけてもらい、
ネガティブの嵐にのまれる前に、
セルフで救済できるようにだいぶなってきたからだろう。
あいかわらず、
窮屈な考え方や視野の狭さは否めないけれども、
それもふと、「おかしい」と引き返せるようになってきたから。
過去から比べると、ずいぶんラクになってきたもんだ。
そのとき限りの天使さんたち。
彼らにとっては、とうに忘れている何でもない出来事だし、
たまたまそのときチョイスされた人選だとしても、
あのときの闇からすっと引き上げてくれた明るさは、
わたしにとって、
いまだに忘れることのできない宝物の一コマなのです。
こっそり言う。
ありがとう。