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雄叫びがこぼれた(日々の切取りエッセイ)

以前の記事で、

過去のわたしは、
「理不尽な場面でついヘラヘラして、きちんと怒りが出せていない」
といった内容を書いた。

なぜ、ヘラヘラしてしまうかというと、
その場をさらに修羅場、カオスにしたくなかったから、
というのが一番の理由。

そのために、自分がぐっとこらえるけれど、
結局その怒りは内に持ったままだから、
ぷすぷすとずっとくすぶったままで、
からだの内側を汚染してしまっている。


そんな内容を前回のセラピーでは丁寧に掘り下げて、
つくづく納得したと思えば、
数日後にはお試し課題がしっかりやってきた。
えらいもんだ。


水曜日、フレックスでたまたま早く戻ったら、
〇〇急便から不在届が入っていた。
当日の受付締め切りは18時までとある。

最近はQRコードで再配達を予約するけれど、締め切りまで30分あるので、
担当ドライバーに直接電話をした。

ドライバーは、何やらせっかちな印象があり、
わたしは「早く喋らなきゃ」と思い、ところどころどもってしまった。

「きょ、今日再配達できますか?何時頃になりますか?」
「まだこれから配達があるんで、何時になるかわかりませんねぇ」

と、ややもったいぶったように言う。

これから着替えてお風呂の準備もしたいし、
いつ配達に来るかわからないものを待てないなと思い、

「あ、わかりました。じゃあ今日は結構です。再配達の予約するので」

と、携帯を切ろうとしたら、
相手はえらい剣幕になり、

「今から出かけるっていうんですか!こっちは荷物全部はかせたいんですよ!」

と、かなり高圧的にかぶせてくる。
そうなるとわたしももう絶対無理なので、

「いや、いいです。再配達に、、、」

と声を発すると、終わらないうちに

「じゃあ何時だったらいいんすかー!いいんすかー!」

と、逆上して、次から次へ圧力のある言葉を早口にかぶせてきた。

我慢して、
しばらく相手の「きゃんきゃん」を聞いていたとき、、、


考える前に、
ほんとに何も考えてないのに、


腹の底からぽろりと、
言葉のかたまりがこぼれた。

「ぢょっとォォォーーーーーー!!!!!!」



再現ができなくて本当残念だが、雄叫びはご近所にまで聞こえてしまったのではないかと思うほどの大音量で、
かつ、厚みのある怒りがコーティングされた声音には、
漫画だと背景に斜線を引いて、ドゴゴゴと地下からあふれかえってくるマグマを表現したい。
もちろん、Gペンとマジックで表現する。

それくらいの地鳴りのような、
「ぢょっとぉぉぉーーー!!!!!」
だった(と自分では思う)。

雄叫びのあとに、
まくし立てていたドライバーは黙り込んだが、
それ以上にびっくりしたのはわたし自身だった。

え?こぼれた、勝手にこぼれた、言うつもりなかった。

こんな大声出した記憶が、今すぐにはさかのぼれない。
理性のわたしじゃない。
ああ、でももう引き返せない。

黙り込むドライバーに、

「その言い方は何ですか?もう結構です」

と、静かに携帯を切り、
すぐに内なる自分に謝った。

「ごめんなさい、びっくりさせてしまった?わたし自身がびっくりよ。ごめんね」

でも、なんかね、
スッキリしてるのよ!
何なの!?スッキリしてるのよ!

そう思いながら、さぁ、営業所にクレームのお電話しましょうと、
調べていたら、
五分もたたないうちにあわあわとドライバーはやって来て、
(すぐ近くにおったんかい!)

わたしは悠々とノーマスクで出て、

「キレてもて、すみませんね、、、」

と、ニヤニヤ笑いながら荷物を受け取ったら、訳のわからない言い訳を残し、転がるように階段をかけていった(ように見えた)。

弱い人間に横暴にふるまうタイプの人間が、
現在わたしの環境にいないことに対して感謝だな、と受け取った荷物を見ながらしみじみ思う。

そして、考え直す。
あ、実際弱かねぇわ。
ぷぷぷ。


一連が終わってから、
お試し課題だったね、と気づいてうっすらおかしくなる。

「ぢょっとォォォーーーーーー!!!!!!」

と、サポートしてくれたのはひょっとしたら、
「もう一人のわたし」かもしれない。


そして、怒りの出し方も100点ではなかったかもしれない。
他にやりようはいくらでもあったのだろう。

でも、
少なくとも以前のように、ヘラヘラ笑って、
怒りを内にくすぶらせることはなくて、
きちんと出せたことは50点くらいはいけたかな、と思う。

わたしに怒られに来たドライバーも、何らかの課題を持っているのだろう。


あとから、振り返りができたとき、
おもしろくって笑えてくるのだ。

いつもサポートしてくれる「もう一人のわたし」のキャラクターは、
高知でいえば「はちきんちゃん」そのもの!

たくましくって心強い。
いつもありがとう、あなたが大好きよ。

三國万里子さん。気仙沼ニッティングのデザイナーさんです。なにげない日々。でもとてもおもしろかった

「もう一人のわたし」でいえば、
最近やっと読み終えた三國万里子さんのエッセイ
「編めば編むほどわたしになっていった」
の中の、「編み物作家」の一部を抜粋。

展示会初日の朝のこと

「さわさわとした気配のようなものがわたしの寝床のまわりに満ちている。
 その気配のようなものは「今日だよ」と言っていた。「おめでとう」とも
 言っていた。わたしは体を起こして正座をし、「ありがとう」と言う」

この方も、ちゃんと身近に感じておられるのだな、とあったかい気持ちになった。
応援されてるのだな。
この道なのだな。
間違いはないのだな。


ちなみに帯を書かれている吉本ばななさんは、幼い頃からグレードが違う感じっぷりをされる方です。師匠☺


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