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そもそも

私は書店員として働いたことがない。
学生時代にも書店でのアルバイト経験はない。
こんな状態で本屋さん、いいなあ……なんて、
いい大人がお花畑だと自分でも思う。

私はある年齢まで、
本当に好きなことは仕事にしてはいけない、などと思っていた。
たとえば学生時代、友人が夢の国でバイトしたい、と言っていたころ、
私はといえば、いや、あれは遊びに行く場所だ、
あんなに楽しい場所で働くなんて無謀だ、と思っていた。
今となっては不思議な発想だが、
実際に当時そんなこと言っていた、と久しぶりに会った友人から聞いた。

卒業後は氷河期、なんとか滑り込んだ会社であっという間に数年がたった。
その頃になってようやく、
まったくの異業種から出版業界に入るためにじたばたしはじめた。
たしか二か月ほどで校正とDTPを学び、派遣スタッフとして数社をまわったあと、
小さな専門書の版元で正社員として採用され、
それなりに経験を積ませていただいた。

それでも、私の仕事経験には大きな欠けがある。
営業や販売関係も、やろうと思えば経験できたに違いない。
とはいえ今となっては、あの頃はあれで精一杯だったと思うしかない。

幸い今は、本をつくりたい人、売りたい人に向けた本が数多く出版されている。
いろいろ読んでみてから考えよ……と決めた。


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