使われるもの、だからこその美
それは遊びに行く前日23時半のこと。
三砂良哉存じ上げない作家さんです、すみません状態―そう知識ほぼゼロ!
知らないからこそ何か出会いあるかもしれん、いくど!!で行ってきました『漆芸礼讃 -漆工・三砂良哉-』展。
漆も工芸の知識ないけど、いける?
三砂良哉は大正から昭和にかけて活躍した漆芸家で、今回の展覧会では彼が制作した茶道具、香合、懐石道具、菓子器などが展示されていました。
漆器や茶道は正直なじみがないので、新しい世界に触れることへわくわくしつつ、作品の魅力を理解できるのかなぁとも思っていました。
会場入り口に漆工用語解説のプリントが置いてあり、茶器の説明も作品の近くに掲載されていたので個人的にはほっと安心したポイント。
もちろん知識があったほうがより深く漆芸の世界に入り込むことができると思いますが、知らなくても驚きと楽しいにあふれた魅力を三砂の作品から感じることができました。
自由な発想と美のアハ体験
The 日本伝統な作品が展示されていると思っていたので、三砂の自由な発想で可愛らしい作品には驚かされました。例えば、茶道で使用される棗(抹茶を入れる器)は下のHP内の画像のように、紅葉や桜などの草木が描かれている日本の美!なイメージでしたが、
蓋と容器があわさる部分に楽譜がデザインされているものがあり、『え~~~~それもありなんや、めっちゃ自由じゃん!』と思わず手に取りたくなるような可愛らしさににっこり。
その「黒地歌劇雛祭楽譜蒔絵棗 逸翁好」の作品は展覧会のHPにも画像があります、ぜひクリックしてご覧ください。
ほかにも本物の栗の実の質感が伝わってくるような蒔絵(漆を使った工芸装飾法)が描かれている棗や、栗そのものの形をした香合(茶室で焚く香を入れる蓋のついた容器)もあってその発想もありなんだ!とビックリ!栗だけに🌰
そしてわたしが1番心動かされた作品は「夜桜塗」という技法が使われているお盆です。
一見、凛とした美しい真っ黒のお盆…と思いきや、ちょっと見る角度を変えるとほのかに浮き出る桜や紅葉に気づくことができるという、美のアハ体験。
自分がこんな素敵なお盆でおもてなしされたら模様に気づいたとき嬉しくなるし、誰かと一緒にお呼ばれされた席ならこのお盆の仕掛けについて話したくなるだろうなぁと楽しい気持ちになりました。
この『美しさに気づく』体験をぜひ展覧会で。
伝統を遠ざけていたのは私かもしれない
伝統工芸品=飾られるもの、という思い込みがありましたが、三砂の制作した茶道具、香具、菓子皿、器からは使う人に喜んでもらえるようにという彼のおもてなしの気持ちが伝わってきました。
誰かに使ってもらうことを考えられて表現された美が確かに彼の作品から感じることができます。
自分は普段、漆ではなくプラスチックや陶器の食器を使っていることや、茶道や香を楽しむことがほとんどなかったので、今回の展覧会における鑑賞のポイントや楽しみ方に自信がありませんでした。
ですが、正しく観賞しようと難しく考えるのではなくお店で食器を選ぶように『お!かわいい!』『なんか…好きだな』の感覚で鑑賞してもいいのかも、という新たな気づきをゲット。
今回参考にした本は展覧会の図録兼用書籍「漆芸礼賛ー漆工・三砂良哉 逸翁美術館」。
この作品もあったなぁと振り返れる図録って読んでいて楽しいですね。