デ・キリコ展を訪れデ・キリコの作品を哲学してみた。
デ・キリコという画家
イタリア人の両親を持ち、生まれはギリシャの画家ジョルジョ・デ・キリコという人を知っていますか。
形而上絵画という彼の代名詞と言えるジャンルを確立し、20世紀のアート界に多大なる影響を与えました。
あのサルバドール・ダリで有名なシュルレアリスト達の先駆けとも言われています。
そんな近代美術史において欠かすことができないジョルジョ・デ・キリコの大回顧展が東京上野の東京都美術館で4月27日から8月29日まで開催されていましたので行ってきました。(9月14日から12月8日までは神戸市立博物館で開催予定)
形而上絵画ってなに?
形而上絵画と言われてもー。という方がほとんどだと思うので簡単に解説しますね。
そもそも形而上というのは哲学の概念で、例えば魂や世界、神などの目には見えない抽象的な物の事を表している言葉です。
それらの物理的な現象を超えた領域、概念を研究する学問として形而上学というものが哲学の分野にあります。
デ・キリコが表現した形而上絵画とはつまり、目に見えない抽象的な概念を絵画で表現しようとした作品ということになります。
もっと言ってしまえば、抽象的な物を具体的に描いたのではなく、
抽象的な物をより抽象的に表現しました。
何気ない広場や室内という簡潔明瞭な構図の中で、歪んだ遠近法や脈絡のないモティーフの配置、幻想的な雰囲気によって日常の中に潜む非日常を表しています。
だからこそダリ達のような後のシュルレアリスト達に深い感銘と多大な影響を与えたのです。
デ・キリコの作品のメッセージ
デ・キリコの作品の主要なメッセージとして、ナンセンス(無意味性)というモノがあります。
これはそのままの意味で、あらゆる物事には本質的に決まりきった意味は存在しない、というものになります。
それは作品もそうですが、人生そのものにも意味は存在しない、又は意味を失っていると言います。
それでは無意味な人生を生きていく意味はないのか?というとそういうことでもないとも言っています。
むしろ、無意味だからこそあらゆる解釈が可能なのだと。
決まりきった意味や答えはないからこそそこにどんな意味を与えるのかは自由であり、人ぞれぞれでいい。
意味がないからこそ人生は生きる意味があるのだ。
こういったとても力強いメッセージが込められています。
この考え方は当時、デ・キリコが傾倒していたドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの思想に強く影響を受けています。
ニーチェのニヒリズム(虚無主義)やそれを乗り越えていこうとする超人思想、その先の試練としての永劫回帰思想などがデ・キリコの作品に見て取れます。
ニーチェの思想についてはまた別の機会に書いてみようと思います。
こちらの本がニーチェの思想を端的に知るのにオススメなのでご興味がある方は是非一度読んでみてください。
作品を鑑賞して
作品を鑑賞して、私もそういったメッセージやそれを感じさせる要素である情緒性(シュティムンク)や憂愁性(メランコリー)などを強く感じさせられました。
奇想のように思えるモティーフの配置や遠近法、画面の寂しげかつ訴えかけるような雰囲気は、一見するとハチャメチャなように見えて毅然としたメッセージを鑑賞者に伝えてきます。
作品をどのように解釈するかはあなたの自由ですよ。と。
同じく人生もあなた自身が見つけた答えや意味が正解なんですよ。と。
これからも力強く自分の人生を生きていこうと思いました。
皆さんも是非、美術館に足を運んでデ・キリコの作品から感じられる自分だけの意味を見つけてみてください。
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