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すずめの言葉【小説】
「すずめ、かわいいな……」
僕とサハラは口を揃えた。
サハラが手にしていたパンに寄ってきたようだ。彼は放課後になるといつもお腹を空かせていた。
「超鳴いてるな」
僕たちは川沿いのベンチに腰かけていた。護岸の柵に停まるすずめは、サハラをどうも意識している。ふっくらした羽毛から、小さな足がのぞく。
「ああ、超鳴いてるな」サハラは答えた。
すずめは僕たちが彼らの言葉を理解していると思っている
コードネーム【小説】#シロクマ文芸部 #風の色
「風の色なんだ」
「え?」
「俺のコードネーム」
僕は隣を歩く幼馴染の顔をちらりと見る。僕たちは川沿いを歩いていた。夕日が水面に反射して、彼の輪郭をやさしく照らす。
「風の色」僕は少し考える。「それって何色なんだろう」
彼はこちらの様子をうかがうように、視線を送る。
「ないよ。存在しない。つまり」
彼は言いよどんだ。
「つまり?」
彼はこちらをまっすぐ見る。
「つまり、俺は存在
世界を変える準備【小説】
晴れた日に布団を干したいから、仕事は辞めた。
それからは納期や顧客対応、日曜日の憂鬱、iPhoneのスヌーズ音からは解放された。でも、天気予報と、定期的に訪れる“暮れない一日”が、僕の新たな悩みの種となった。
生きている限り、全ての悩みから解放されるのは難しいらしい。
・・・
最寄駅から徒歩15分、アパートの2階にある僕の自宅を訪れるのは、サハラという友人くらいだ。
彼は鉄道会社に勤めて