フィリピン元大統領ロドリゴ・ドゥテルテ氏
フィリピンの元大統領ロドリゴ・ドゥテルテ氏は、2016年から2022年までの6年間の在任期間中、フィリピン国民の生活や治安に大きな影響を及ぼす数々の政策を推し進めた。特に麻薬犯罪対策を中心とした「過激な政策」と、その強力なリーダーシップスタイルは国内外で賛否を巻き起こしながらも、フィリピン国民の圧倒的支持を得てきた。
過激な麻薬撲滅戦争
ドゥテルテ氏が掲げた「麻薬撲滅戦争」は、彼の市長時代から続く強硬路線を引き継いだ政策である。彼は、麻薬犯罪に関わる者に対し容赦なく「即時射殺」を許可し、取り締まりを徹底するという姿勢を示した。この結果、数千人の麻薬関係者が取り締まりの過程で命を落としたとされ、人権団体や国際社会から「人権侵害」として非難の声が上がった。しかしながら、こうした取り締まりによって治安が改善されたと感じるフィリピン国民の間では、その強硬な手法が「犯罪者への強い姿勢」として評価され、高い支持率につながった。
社会福祉政策と支持率の向上
ドゥテルテ氏は、治安改善の他にも社会福祉制度の整備や貧困層支援に注力した。これにより、2020年の時点でドゥテルテ氏の支持率は91%に達するという圧倒的なものだった。特に、貧困層を対象とした医療制度の拡充や生活支援策は、一般市民からの評価が高く、彼の人気を支える要因となった。
国際社会との緊張と親日家としての一面
ドゥテルテ氏の在任中、フィリピンは米国との伝統的な関係を見直し、中国との接近を図る一方で、特に人権問題に対する批判を受ける場面も多かった。しかし、彼は日本との関係には好意的であり、親日家としても知られる。2018年には日本と協力し、フィリピン国内のインフラ整備や災害支援を促進するなど、日本との外交関係を深めたことでも注目された。
賛否両論の末に残した「成果」と「課題」
ドゥテルテ氏は、麻薬犯罪対策を含めた強硬政策を通じて治安改善に貢献し、国内の貧困層の支援にも取り組んだ。しかし、彼の手法に対する人権侵害の批判は根強く、次期政権には彼の路線をどのように引き継ぐのか、あるいは改善していくのかが課題となっている。
ドゥテルテ氏の政治手法は、「力による支配」を象徴するものであり、一部のフィリピン国民にはカリスマ的リーダーとして支持される一方、強権的な姿勢が生んだ課題もまた、フィリピン社会に残されている。