[スマブラ]「原作再現」が凄いと評判のスマブラSPで、パックマンの「原作再現」を徹底的に解説する
スマブラSPは一般的な対戦格闘ゲーム(スマブラが「対戦格闘ゲーム」か?という議論はいったん置いといて)とは異なり、既に存在するゲーム作品からキャラクターを拝借して戦わせています。
それは任天堂のゲームだけに収まらず、他社の有名作品からも参戦するキャラクターが多数いて、任天堂という会社の懐の深さと交渉力には敬服するほかはないわけなのですが…
スマブラSPの凄いところは、単にキャラクターを拝借するに留まらず、そのキャラクターのオリジナルの特徴をかなり忠実に再現し、スマブラというゲームのフォーマットに巧みに落とし込んでいるところです。
例えば、「ストリートファイター」シリーズから参戦しているリュウ、ケンなどは、ストリートファイターシリーズで使える有名なテクニックがある程度そのまま使えるようになっていて、ストリートファイターのプロゲーマーをも唸らせるほどの再現度を実現しています。
さて、それでは私のメインファイターでもあるパックマン。こいつの「原作再現」度合いはどうなのでしょうか。
パックマンというキャラクターについて軽く説明すると、キャラクターの歴史という観点では、実はスマブラに参戦する全キャラの中で一番長い歴史を持っています(たれ込みがありました。実際はゲーム&ウォッチの方が1ヶ月ほど早いようです。訂正し、お詫びします)。そう、マリオよりも、です。原作は1980年にアーケードで登場した「パックマン」で、発売元はナムコ(現・バンダイナムコゲームス)です。「パックマン」はその後シリーズ化された作品であり、「パックランド」「パックマニア」あたりがその中でも比較的有名でしょう。
アーケードの世界で画期的な作品を次々とリリースし、ユーザーの心をがっしりと鷲づかみにしていたナムコの黄金時代とも呼ぶべき時代が1980年代で、「パックマン」はその口火を切った作品と言っても良いでしょう。
スマブラにおけるパックマンは、見た目からして異様な特徴・性質を持つ個性的すぎる技を駆使するファイターですが、実はその技の数々は「パックマン」のみならず、ナムコ黄金時代を築いた1980年代の複数のナムコ作品に由来しているのです。
当時をほぼリアルタイムで経験してきた世代である私は、スマブラ・パックマンが放つ技の数々に当時の興奮を思い出して胸が熱くなったものです。
というわけで前置きが長くなりましたが、今回は80年代ナムコゲームにどっぷりはまり込んでいた筆者が、スマブラSPのパックマンの「原作再現」の秘密について、徹底的に説明しようと思います。
そもそも「パックマン」って何者?
1980年にリリースされたオリジナルの「パックマン」については、プレイしたことはなくとも名前くらいはほとんどの人が聞いたことがあるのではないでしょうか。世界中で売れまくってギネスにも載っており、ゲームの歴史上で間違いなく後世に語り継がれる伝説的タイトルです。だからこそ、スマブラへの参戦が実現したとも言えるのですが。
スマブラでのパックマンのルックス
しかし待てよ、スマブラにおけるパックマンのあの姿はなんだ? と思う人がもしかしたらいるかも知れません。「パックマン」と言えば、この画面で認識している人が多いでしょう。
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ここに登場しているキャラクターは、黄色い円の一部が欠けただけのシンプルな形状です。にも関わらず、スマブラに登場しているパックマンは、手足の生えた球体になっていて、顔まであります。あれは一体何か?
実は、これは「パックマン」のシリーズ作品である「パックランド」(1984年リリース)に登場するパックマンのルックスを採用しているのです。
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どうですか?ちゃんと手足があって、グローブとブーツ、帽子まで着用してますね。ちなみにこの時のパックマン、実は奥さんと子供がいたりしますwww
あと、ルックス面でネタをもうひとつ。スマブラでのパックマンの2P~6Pカラーは、羽根の付いたブーツを着用していることにお気づきでしょうか。
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これは、「パックランド」で、パックマンが妖精の女王から授かる魔法の靴です。
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これですね。この状態のパックマンは空中ジャンプが可能になります。スマブラと違い、その回数に制限はありません。なんでスマブラでもそうしてくれなかったんや…。私がパックマンの6Pカラーを常用しているのは、魔法の靴を履いていないパックマンが空中ジャンプできることに違和感があったのと、白という色が原作の魔法の靴に比較的近いからですね。
消火栓
あと、お気づきかもしれませんが、上の画面に見えている消火栓。スマブラでパックマンが下Bで設置する消火栓も、この「パックランド」から再現されたものです。消火栓から噴き出す水流も再現されています。水流に押し出されてモンスターに触れるなんてミスを当時どれだけ繰り返したことやら…。ただ、この消火栓はスマブラみたいに殴って飛ばすといったことはできません。あれはスマブラオリジナルの要素ですね。そもそも、パックマンが自在に設置できるアイテムでもないですしね。
あと「パックランド」の名前が出てきたことでお気づきの方もいるかもしれませんが、スマブラにおけるパックマンステージの名称がそもそも「パックランド」ですね。これはまさに「パックランド」のステージをフューチャーしており、しかもかなり再現度高いです。
スマッシュ攻撃
さて、消火栓の話が既に出てしまったので、ここからはパックマンの特徴的な技の数々の原作再現についてお話ししましょう。
とはいえ、弱攻撃、強攻撃、各種空中攻撃についてはとくに原作再現的なものはありません。
で、スマッシュ攻撃から説明しましょう。とはいえ、これはとてもわかりやすい。
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これはまさに上の画面にも出てきた「パックマン」の4体のモンスターそのものです。原作ではパックマンを追い回す敵ですが、スマブラではパックマンの武器としてコキ使われていますwww。
ちなみに原作ではアカベエがパックマンをまっしぐらに追いかけ回す一番手強いモンスターとされていて、スマブラでも横スマッシュが途轍もなく強力なのは、これもまた原作再現なのかも知れません。
パワーエサ
同じく「パックマン」からの原作再現として、横B「パワーエサ」。
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これは再現の仕方がちょっと特殊ですね。
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先ほどの「パックマン」の画面を再掲しましたが、「パックマン」は、モンスターの追跡をかわしながら、画面上にあるエサ(ドット)を全て食べ尽くすのが目標のゲーム。その中で、四隅にひときわ大きなドットが見えると思いますが、これが「パワーエサ」。これを食べると4体のモンスターが一定時間「イジケ状態」になり、パックマンとの力関係が逆転、パックマンがモンスターを捕食できるようになります。
横Bを放つときに描かれるドット列と大きな円形は、このエサとパワーエサの並びを再現しており、その後にパックマンがそのルートを追いかけてくるのは、原作でパワーエサを目指して突き進むパックマンを表現しているわけです。
また、スマブラ・パックマンの横Bは、パワーエサを捕食した直後にスーパーアーマーが8Fほど付与されますが、これも食べると無敵状態になるパワーエサの効力を「原作再現」したものと言えますね。
え?無敵が短すぎるだろって?
いえそんなことはありません。「パックマン」ではステージが進むにつれてパワーエサを食べた後のイジケ状態の時間が短くなり、しまいにはほぼ一瞬しかいじけないようなレベルになってしまいます。これもまた「原作再現」なのですwwww
フルーツターゲット
スマブラ・パックマンの代名詞とも言える、8種類の飛び道具・フルーツターゲット。
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これも「パックマン」からの原作再現です。各ステージでエサを食べていくと、あるタイミングでステージ中央に出現するのがフルーツターゲットです。
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このフルーツターゲットは画面上のエサと同様捕食することができ、通常のエサよりも高得点が得られます。ハイスコアを目指すなら欠くことのできないものですね。
出現するフルーツターゲットはステージごとに決まっており、ステージ1がチェリー、ステージ2がストロベリー、ステージ3,4がオレンジ、ステージ5.6がアップル、ステージ7,8がメロン、ステージ9,10がボス・ギャラクシアン、ステージ11,12がベル、ステージ13以降がカギです。
NBを溜めるときの出現順番は、これに基づいた原作再現だったわけです。
フルーツターゲットを食べたときの点数も、当然先に進むほど高くなり、チェリーはたった100点ですが、カギになると5,000点にもなります。
「ギャラガ」と呼ぶな!!
なお、原作におけるフルーツターゲットは、出現後に動くようなことはないものですが、知っての通り、スマブラにおいては飛び道具として使われます。
その中でも原作再現という点で注目したいのがコイツです。
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知っての通り、こいつは飛び道具としてはあまりにも独特すぎる軌道を描きます。少しまっすぐ飛んだ後、空中で一回転してからまたまっすぐ飛んでいく。
実は、このボス・ギャラクシアン、別の原作が存在しており、「パックマン」で登場するボス・ギャラクシアン自体が、その原作からの流用だったりします。で、スマブラにおけるボス・ギャラクシアンの独特すぎる軌道は、そちらの原作からの再現なのです。
その原作が、その名もズバリ「ギャラクシアン」(1979年リリース)です。
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このゲームは画面下のギャラクシップを操り、画面上部で隊列を組んでいるエイリアン「ギャラクシアン」を弾で撃ち落とし全滅させるという、「スペースインベーダー」タイプのシンプルなゲームなのですが、隊列の最上列にいる2体の黄色いエイリアン、これが「ボス・ギャラクシアン」です。
で、このエイリアン達は、弾を放ってギャラクシップを狙ってくるだけでなく、自ら隊列を飛び出して体当たりしてくるのです。これが当時としては画期的なアイデアで、この作品も大ヒットを飛ばしています。
エイリアンの数が残り少なくなってくると、全エイリアンが一斉にギャラクシップを襲ってくるのですが、その中でこういう動きをする奴がいます。
どうです?スマブラのボス・ギャラクシアンの軌道に似てるでしょう?
あと、ここで一つ声を大にして言いたいことがあります。スマブラにおけるこのボス・ギャラクシアンのことを「ギャラガ」と呼んでいる人が多い。実に多い。というか、そう呼んでない人の方が少ない。
この記事を読んでくれたあなたは、やめてください。いますぐに。
「ギャルボス」「ボスギャラ」などと略す分にはいいのですが、「ギャラガ」だと別のゲーム&キャラクターになってしまうのです。「ギャラガ」呼びは明白な誤りです。繰り返します。「ギャラガ」呼びは今すぐにやめてください。
困ったことに最上位勢すら「ギャラガ」呼びして憚らないのには、もはや噴飯ものです。
トラクタービーム
で、話の流れで「ギャラガ」の話題が出てきたので次はこいつにしましょうか。
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その場回避すら許さない、パックマンの持つ唯一無二の「掴み」。これこそが、実は問題の「ギャラガ」からの原作再現なのです。
「ギャラガ」は1981年リリースのゲームで、「ギャラクシアン」の後継作品に当たります。隊列から飛び出して襲ってくるエイリアンを撃ち落とす基本的なフォーマットは「ギャラクシアン」と同じですが、「ギャラガ」では自機のパワーアップ要素が追加されているのが大きな変更点です。
これをご覧ください。エイリアンがビームを発して自機を攫い、その攫われた自機を救出することでファイターがデュアル状態になって攻撃力が増えているのがわかるでしょう。
このエイリアンが自機を攫う際に発しているのが、トラクタービームと言い、スマブラ・パックマンの掴み技として採用されているわけですね。
ちなみに動画でトラクタービームを発しているエイリアンの名前が「ボス・ギャラガ」です。NBのボス・ギャラクシアンをギャラガ呼びするのが誤りであるというのが、改めてご理解頂けると思います。
なお、1984年には、さらなる後継作「ギャプラス」がリリースされていますが、こちらでは逆に自機がトラクタービームを発し、エイリアン達を捕まえて自機側の戦力にするという逆の構図になっています。
トランポリン
で、お次は、復帰の力強い味方であるこいつ。
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こいつの「原作」は、「マッピー」(1983年)です。
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「マッピー」は、ネズミの警察官・マッピーを操り、泥棒猫ニャームコの屋敷に潜入し、盗品を取り戻すという設定のゲーム。ステージ内に配置された全ての盗品を回収すると、ステージクリアとなります。
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で、これが実際のステージ画面になるわけですが、上の画面で2カ所ほど存在する緑色のラインがトランポリンです。マッピーは左右の移動は自由に出来ますが、上下の移動はこのトランポリンを使わないとできないのと、トランポリンで跳ねている間は敵に当たってもミスにならないので、ステージクリアにはトランポリンをうまく使わなければなりません。
ただ、「マッピー」のトランポリンはステージ上の固定位置に配置されているもので、スマブラ・パックマンのようにマッピーが任意の位置に設置できるわけではありません。
トランポリンはマッピーが跳ねたときに限り、青→黄色→赤と色が変わり、赤いトランポリンを踏むと突き破ってしまいます。これがスマブラ・パックマンの上Bの仕様として再現されているわけです。ただし、色に関わらず跳ねる高さが常に一定な点がスマブラとは違いますね。
7650
パックマンの勝利シーンの1つ。
ここに出てくる「7650」とは何を意味しているのか。
これ、実は「ナムコ」の語呂合わせです。この当時の様々なナムコゲーム作品において、特別なボーナススコアとしてしばしば登場する数値ですね。私が記憶する限り、「パックランド」が初出だったはず。
パックランドでパワーエサを取ってイジケモンスターを捕食していくと、その数に応じて、200点→400点→800点→1600点→3200点→7650点と、得点が上がっていくのです。
ちなみにスマブラSPでは、パックマンの空中前攻撃のダメージ値が、1on1補正なしの状態で7.65%です。意図的にこの語呂合わせに合わせたのかは微妙ですが、小数点以下2桁までダメージが設定されている技は他にほとんど無いはずなので、おそらくは意図的なものでしょう。
なお、上の動画でも流れている勝利のファンファーレは、「パックマン」のゲーム開始音だったりします。シリーズでは共通で使われている曲で、1987年の「パックマニア」でも使われています。
ステージBGM
パックマンステージには、BGMとして11曲が用意されています。そのうち、「パックマン」関連の曲は実は3曲だけだったりしますね。他は、当時の他のナムコ作品から持ってきています。そのあたりにも軽く触れて、本記事のシメとしましょう。
<1>パックマン <2>パックマン(クラブMIX)
パックマン自体あまりBGMの無いゲームですが、ゲーム開始時のBGMや、ステージ合間のパックマンシアターといった、僅かに存在する短いBGMのフレーズを取り込んで大胆にアレンジしたものになってますね。
アレンジャーとして、これまたレトロゲーマーにはおなじみの古城祐三を引っ張ってくるあたりが、またマニア泣かせです。
<3>PAC-MAN'S PARK / BLOCK TOWN
1987年リリースのパックマンシリーズ作品「パックマニア」のBLOCK TOWNのBGMをアレンジしていますね。随分とノリのいい曲になったものです。
<4>ギャラガ メドレー <5>マッピー メドレー
それぞれ上述の「ギャラガ」「マッピー」のBGMで構成されたメドレーです。とはいえ、どちらのゲームもBGMの種類は少ないゲームですので、同じBGMを様々なアレンジで聴かせるようなものになっていますね。
<6>リブルラブル 原曲メドレー <7>メトロクロス・原曲メドレー <8>スカイキッド 原曲メドレー
それぞれ、同名のタイトルのゲームから、アレンジ無しの原音で構成したメドレーです。
「リブルラブル」は1983年、「メトロクロス」「スカイキッド」は1985年のリリースで、いずれもナムコ黄金期を支えたタイトルです。
当時のナムコゲームはBGMでも高い評価を受けており、それをわざわざ原音で収録したのは、明らかに私のような層をターゲットとした「オヤジホイホイ」でしょう。
<9>エリア1(ドラゴンスピリット)
1987年リリース「ドラゴンスピリット」のエリア1のBGMですね。これもほぼ原音です。
<10>ナムコアーケード'80s 原曲メドレー
オヤジホイホイその4。いずれも原音ですが、順に元タイトルと曲名を紹介すると…
「ギャラガ」オープニング
→「ニューラリーX」メインBGM、ステージクリア
→「マッピー」メインBGM、ステージクリア
→「ディグダグ」オープニング、メインBGM、ステージクリア
→「ドルアーガの塔」ステージスタート、メインBGM、ステージクリア
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<11>ナムコアーケード'80s 原曲メドレー
オヤジホイホイその5。80年代後半以降の作品で構成されていて、音源も段々リッチになっているのがわかりますね。
「イシターの復活」オープニング、メインBGM
→「ドラゴンスピリット」エリア1
→「ワンダーモモ」変身後BGM
→「ワルキューレの伝説」メインBGM
→「サンダーセプター」ネームエントリー
おわりに
いかがでしたでしょうか。マニア魂が爆発してしまった結果、当初の想定以上に長い記事なってしまいましたが…
ナムコ黄金期を知る世代としては懐かしすぎるエッセンスをこれでもかと詰め込んだのが、スマブラのパックマンだということがおわかりいただけたのではないでしょうか。まさか任天堂のゲームで、ナムコ黄金期へのこれほどの原作リスペクトを感じることができるとは…
まさしく、スマブラは神ゲーですよ、ええ。