ペヤング事件の真犯人は…
僕です!
ふぅ〜、これでようやく、あの日以来、喉に突き刺さってずっと取れずにいたウナギの小骨みたいに僕の心をチクチクしていた罪悪感から解放された。
えっ!どういうこと?
と、きっと口をアングリーしているだろう読者の皆様に、真相を告白しよう。
実は、あの事件当日、僕は、かつて僕もその開発の一端に携わった、ある商品の発売15周年記念パーティーに参加するために、I県M市を訪れていた。
パーティーでは、当然ながら、
メロンの上に生ハムが乗っかってるヤツ
とか
バケットの上にキャビアが乗っかってるヤツ
とか
いかにも高級な感じのごちそうが振る舞われた。
すごく美味しかったよ。
ああ、すごく美味しかったさ!
でも、同時に、どこか満たされない思いも抱いてもいたのも事実だ。確かに僕の心の中の鈴木雅之が
「違う、違う、そうじゃな〜い」
と熱唱していたし・・。
そして、僕は無意識に
「ペヤング食べたい…」
とつぶやいていた。
そうなったら、もう止まらない。僕はひとりでパーティー会場を抜け出し、近所のコンビニでペヤングを購入した。
そして、たまたま目に止まった一軒の住宅に家宅侵入し(奇跡的にドアの鍵が開いていたのだ!)、すばやく電気ケトルでお湯を沸かして、そのお湯を容器に注いで、シンクでしっかりと湯切りをして(ちなみにあのボコッという音はしなかった)、液体ソースと粉末スパイスを手際よくふり混ぜて、という一連の所作を、自分史上最速スピード(体感としては0.03秒)で行った後、ダイニングにあるテーブルで、一心不乱に麺をすすり始めた。
と、まさにそのときだった。
「ただいま〜」という声と共に、一人の男の子がドアを開けて、部屋に入ってきたのは・・・。
目があった瞬間、もちろん彼の目が丸くなったのは言うまでもない。
だって、見たこともない薄汚いメタボなおっさんが我が家でペヤングすすってんだから、当たり前田のクラッカーだ。
「……(や、やべえ)」
でも、彼は叫び出すこともなく、僕がペヤングを食べ切るまでずっと無言で待ってくれた。いや、それどころか、食べ終わったら、そっとゴミ箱の場所を指差してくれたのだった。
僕もまた無言のまま、ゴミ箱にペヤングの空容器と割り箸を捨てて、そそくさとその場を後にした。
玄関の前で、一度、振り返って、彼に向って深々とお辞儀したとき、一瞬、彼と目が合い、こんなアイカンバセーションを交わしたのだった。
「よっぽどペヤング食べたかったんだね。僕も経験があるから分かるよ」
「そ、そうなんだ。少年よ、ありがとう」
というのが、まあ
あの世間を震撼させたペヤング事件の真相だ。
まさかあの家がかすみさんのウチで、あの少年がタムくんで、彼が僕をかばって罪を被っていたなんて、想像だにしなかったけど。
世間って案外狭いものですね…。
というわけで、今更ながら、自首します!
けど、実はなんとなく、彼が、あのタムくんなんじゃないか、と薄々気づいていたのも本当のところである。
うん、僕はすでに君に会っていて、君があえてペヤング事件の濡れ衣をかぶるような、心の優しい男の子だって知っていたよ。
だって、君のお母さんの中には、いつだって君がいたからさ。
そんなわけで、怪盗ペヤング三世から最後に一言
タムくん、お誕生おめでとう!
僕はスプラはやらないけど、きっといつの日か君と再会できるはずと思ってるよ。
あと若い子の歌はあまり知らないけど、例えば、こんな曲を君に贈ってみる。