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金曜日、僕は人を好きになる

あの曲を聞けば、恋をしたときのドキドキ感やワクワク感がよみがえる。そんな曲が皆さんにもきっとあるはず。

ちなみに僕の場合は英国のバンドThe Cureの「Friday, I'm in love」という曲が真っ先に思い浮かぶ。

これは、その名のとおり「彼女に会える金曜日を待ち焦がれる」男の子の気持ちを歌った曲だけど、僕はこの曲を聞くたびに中3のときに知り合った初恋の女の子のことを思い出す。

当時の僕は、確かに金曜日に塾で彼女に会えるのを毎週、心待ちにしていた。

けど、最初に彼女を意識するようになったのは、異性としてではなく、ライバルとしてだった。僕の通う地元の小さな学習塾で、彼女と僕は常に成績トップを争う好敵手だったのだ。

毎月の実力テストで1番を取ると月謝相当額の賞金がもらえることから、小遣い稼ぎをしたい僕にとって、彼女はまさに目の上のたんこぶ以外の何者でもなかった。

そんな僕の心境を変えたきっかけは、彼女の

まなざし

だった。

いつも教室の前の方に陣取る彼女。

かたや最後方に座る僕。

つまり、まるで教室の前半分が彼女の領土、後半分は私の領土みたいな感じになっていた。

しかし、いつからか僕が塾に来て席に着こうとする度に、彼女がこちらを振り返って僕を見つめるようになっていた。

彼女の顔をきちんと見たのは、実はそのときが初めてだった。

鼻筋のとおった端正な顔立ち。そして、銀縁眼鏡の奥の眼が大きく輝いている。

確かに頭は良さそうだ。

しかし、僕はそれより何より彼女の顔に浮かぶ、はにかんだような、それでいてどこか悪戯っぽいほほえみにズキュンとハートを撃ち抜かれてしまったのだ。

そして、その瞬間から、僕の世界は金曜日を中心に回り始めた。

まさにあの曲のあの歌詞のように。

I don’t care if Monday’s blue
月曜がブルーでも気にしない

Tuesday’s grey and Wednesday too
火曜と水曜は灰かぶりでいい

Thursday, I don’t care about you
木曜は君のことなんてどうでもよくなって

It’s Friday, I’m in love
金曜日、僕は恋に落ちる

そして、この話はこれでおしまいける、である。

そう、その後、意を決した僕は彼女に告白した

などというドラマティックな展開は何も起こらないまま、僕らは中学を卒業して、お互いに別々の高校に進学した。それ以来、彼女には会ってないし、今後、会うこともないだろう。

つまり、彼女が浮かべたあの笑顔の意味も永遠に謎のままだ。

そんな我ながら本当に取るに足りないささいなエピソードだけど、思い出すたびに顔がニヤニヤしてしまう。

おそらくあのときの僕はこんな僕でも人を好きになれることが分かって、それがとにかく嬉しかったのだ。

自分の中にLOVEとか愛とか呼ばれるものがなければ、誰かを好きになることなんかできないからね。

そして、最後に、この場を借りて、僕が大好きな家族や友人たちにこんな感謝の言葉を述べてこの記事を締めくくりたい。

こんなにもみんなのことを好きでいさせてくれてみんな本当にありがとな!


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