永遠な一瞬
GW真っ只中の5月某日、氏神様のいる近所の神社に、今までお世話になった(なんと15年間!)お礼をしに、家族三人で訪れる。
まずはお約束どおり、本殿の前でお賽銭を入れて三人横並びで神様に向かって話しかける。
僕はいつも決まってシンプルに、
神様ありがとう。これからもよろしく!
しか言わないからすぐに終わるけど、左隣の二人を見ると、まだ目を瞑って真剣に何かを語りかけていた。
もちろん何を話したかなんて野暮なことは聞かないけど、毎回
なんかおまえらイイね!
とは思っているよ。
そして、息子がおみくじを引きたい、と言うから、内心、不安に思いながら、百円を渡す。
だって先月も凶を引いていたし、この数年、あまりいいくじを引いてないからなあ。
すると、おみくじ箱?から出てきた数字は、なんと
一(いち)
だった。そして、宮司さんから一番のおみくじをもらうと、な、なんと
大吉
だった。
「やった〜!」
とまずはみんなで全力で喜びあう。
続いて息子はおみくじを開くなり、真っ先に、やうつり(転居)のところを見て、
「よかった。さわりなしだって!」
とうれしそうに僕たちに向かって報告した。
もし僕が彼の立場だったら間違いなくやまい(病気)のところを先に見るだろうに、ホントこういう風にいつも自分のことより先に家族のことを考えられるところが本当にすごいなあ、と毎回、尊敬してしまう。
そして、全力で抱きしめたくなる。できないけど(彼が寝ている時以外は)
久しぶりの外出で、途中、やはり疲れて気持ち悪くなってしまった彼だけど、どうしても、と頑張って、何とか境内にあるすべての祠にもちゃんとお参りできたね。
そして、お家に帰る前に、境内の梅林のそばにあるお茶屋さんで少し休憩をとることにした。
暑いからかき氷を食べる気満々だったけど、自分の好きなあんず味がなかったから、代わりにあったかい白玉しるこを頼む息子を見て、一抹の不安を覚えた僕は、きなこもちもついでにオーダーしておいた。
そして、食事が出来上がるまで、息子と二人で梅林をふらふらと歩き回る。
足元の小道に緑の小梅ちゃんがいくつか落ちていたから、ふと梅の木を見上げると、そこにはたくさんの梅の実がなっていた。
そして、しばらくの間、息子と二人でぼんやりと陽の光で輪郭がキラキラとかがやくその緑の玉を眺めていると、遠くの方から
「できたよ〜」という妻の声が聞こえてきた。
すると、その声に気づいた息子がお茶屋さんに向かって脱兎のごとく駆け出した。
それは時間にしてほんの数十秒の出来事だったけど、その息子の後ろ姿がやけに美しく感じられた僕は
「たぶん、これ永遠に忘れない光景だろうな…」
とふとそんな独り言をつぶやいていた。
ちなみに僕の予想通り、彼は白玉しるこではなく、きなこもちを食べていた。
そして、白玉しるこは熱かったけど、美味かった。