やっぱり いちごミルク
小さい時、実家の畑の一画にいちご畑があった。いちごが赤くなり始めると、毎朝ザルを持っていちごを摘みに行くのが、私と妹の仕事だった。両親と子供4人。6人で食べるのに十分な量が取れたような気がする。
でも昔のいちごだから、酸味が強く、形も大きさもまちまち。コンデンスミルクをたっぷりかけて食べた。砂糖をかけることもあった。そのうち誰が始めたのか、砂糖をかけてつぶし牛乳をかけるという食べ方が始まった。いちごミルクだ。その当時我が家では、近所の乳牛を飼っているお宅から毎朝一升瓶で牛乳を買っていた。その牛乳を取りにいくのも私の仕事だった。絞りたての牛乳の入った一升瓶のほのかな温かさを覚えている。そのままでは飲めないので、鍋で沸騰させて殺菌してから飲んでいた。いちごも牛乳も地場産だ。
いちごをつぶすのにイチゴスプーンなんて洒落たものもまだ我が家にはなかったので、普通のスプーンでつぶしていた。つるんとすべってなかなか上手くつぶせず、時折顔にバシャっと果汁や牛乳がかかることもあった。そんなこんなでできたいちごミルクは、甘酸っぱく、爽やかでとても美味しかった。
その後家を離れ大学で出会った友達にも、いちごミルク好きがいた。こんな変な食べ方をしている人が他にもいたということを知ってうれしかった。彼女からはフォークでいちごをつぶすと顔にかからないと教えてもらった。彼女のアパートで作ったいちごミルクもやっぱり甘酸っぱく、爽やかだった。いちごミルクの甘さは、平和な思い出と共に優しい気持ちにしてくれる。そんな飲み物だ。
残念なことに、今、私の周りにはこの食べ方に賛同してくれる人は誰もいない。確かに今のいちごは甘くて大きくて、そのまま食べた方が絶対においしい。しかもいちごの値段を見ると、とてもつぶして砂糖をかけるなんてもったいなくてできない。だから、畑にいちご畑を復活させたいと思っている。畑の雪が消えたら、早速肥料をまかなくちゃ。雑草も、今年こそちゃんと抜かなくちゃ。そうしないと、すぐにドクダミとスギナに隠れて、どこにいちごを植えたのかさえわからなくなってしまう。
でも、畑のいちごができるのはかなり先だ。スーパーには今いちごが盛んに並んでいる。小粒いちごならいいかな。いちごジャムにするつもりで買ったけど、1パックでは、少ししかできないし…
ということで、やっぱりいちごミルクにして食べてしまった。いちごをつぶす時からわくわくする。まず、適当に砂糖をかける。そしてフォークで一粒一粒丁寧に潰していく。いちごの甘い匂いが広がる。いちご好きの愛犬が急にさわさわし出す。そして、最後に好きなだけ牛乳を注ぐ。できあがり。
うーん、たまらない。
家計をやりくりしている主婦としては罪悪感を感じるが…
ごめんなさい。
でも、やっぱりおいしい。市販の いちご牛乳とは違う爽やかさ。
是非ご賞味あれ!
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