夏が来た
梅雨が明けた。
セミの声が好きだ。耳の奥の方までワンワンと鳴り響く。朝、職場に向かう途中公園を通る。梅雨が明けた頃から、セミの鳴き声が一斉に強くなった。
「あー、夏だ。」
なんとなく、嬉しくなる。暑いのが好きなわけでもない。でも、セミたちが一斉に鳴き出すと、生命力を感じる。がんばれー、と思う。セミたちにとっては相手を探す恋の歌だから、なんとなく応援したくなる。
梅雨が明けると、毎年していることがある。近くの公園にセミの羽化を見に行くことだ。まだ子どもたちが小さい頃、公園管理のおじさんと話をしたのがきっかけだ。せっせとセミの抜け殻を集めていた私たちを見て、おじさんが、
「夜に来ると、セミの羽化が見られるよ。」
と、教えてくれた。それ以来、ほぼ毎年、梅雨が明けて夏休みが始まった頃、セミの羽化を見に行っている。
薄暗くなる19時半頃から公園に行くと、土の中からセミの幼虫がはい出してきている。20時頃になると、足元に気をつけて歩かないと、幼虫を踏んでしまいそうになる。羽化の瞬間は、何度見ても飽きない。美しいなと思う。羽化したばかりの白っぽい薄緑をしたセミは、妖精のようだ。これを見るのがすごく好きで、何度見ても感動してしまう。
夜が近づいてきた。そろそろ、セミたちが羽化の準備を始めるころだ。子どもたちを誘ってみようかな。もう一緒には行ってくれないかもしれないけれど、その時は、1人で行こう。子どもたちを喜ばせたくて始めたことだけど、今では私の楽しみだから。