見て見て、聞いて聞いて
「ねえ、見て見て。」
「母ちゃん、見ててよ。」
「聞いて聞いて。」
子どもたちが小さい頃、毎日必ずといっていいほど繰り返し言っていたセリフだ。仕事から帰ると、しばらくの間、「見て見て」「聞いて聞いて」が続く。保育園や学校で1日過ごし、その報告がたくさんあるのだ。
どんなことをしたのか、何ができるようになったのか、先生がどんなことを話したか、お友だちとこんなことをした、新しく習った歌、おやつは何を食べたか…、子どもたち2人の話は尽きない。楽しかったこと、うれしかったこと、悔しかったこと、悲しかったこと、色々なことが毎日起こる。キッチンでごはんをつくっていると、
「見て見て!」
子どもたちの声が聞こえる。ご飯を作りながら、適当に返事をすると…ばれる。
「ちゃんと見ててよ!」
一旦、炊事の手を休め、子どもたちの報告を聞いたり、できるようになったことを見たりする。
「おぉ、すごいやん。」
「そんなことがあったの。」
「へー、そうなんだ。」
ひとつひとつ、見たり聞いたりするうちに一応の報告も終わり、また子どもたち2人で遊び始める。忙しかったけれど、2人の報告は楽しく、おもしろく、今思い出しても胸がふわっとする。
子どもたちは高校生と中学生になったが、いまだに「見て見て、聞いて聞いて」が続いている。さすがに、頻度は減ったものの、やはり見て欲しいもの、聞いて欲しいものがたくさんあるらしい。憎らしい態度をとる日もあるけれど、やはりかわいいものだ。
「母ちゃん、見てて。」
数日前も、おなじみのセリフを言って、目の前で踊り始める高校生の娘。体育祭のダンスだろう。私が今まさに見ているテレビの真ん前で踊る。テレビは見えないし、娘の歌う声で、音も聞こえない。10年以上経っても変わらない娘の姿に、思わず吹き出してしまう。不思議な顔で私を見る娘。まさか、こんなに長引くとは思っていなかった「見て見て」だが、いまだに楽しませてもらっている。
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