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毒親 第67話 暗躍する田嶋

第67話 暗躍する田嶋


朝日が差し込む中、サキとカイは警察署での証拠提出を終え、ようやく一息ついた。署内のカフェスペースでコーヒーを飲みながら、これまでの疲れを互いに労っていた。

「これで、少しは前進したかな。」カイがコーヒーカップを握りしめながら呟いた。

「ええ。でも、これで終わりじゃないわ。」サキはスマホを見つめながら返した。「田嶋が簡単に諦めるとは思えない。」

そのとき、カフェのテレビが警察の動きを報じるニュースを流し始めた。画面には、「医療不正疑惑」と大きくテロップが出され、田嶋の名前は伏せられているものの、内部告発に基づいた調査が進行中だという内容が伝えられていた。

「早速、ニュースになってる。」カイが画面を指差しながら言った。

「でも、まだ匿名の告発扱い。私たちの名前が公表されることはないはずよ。」サキは少し安心した様子を見せた。


その頃、田嶋のオフィスでは、彼が怒りを抑えきれない様子で弁護士と部下を叱責していた。

「警察にあそこまで踏み込まれるとは、どういうことだ!」田嶋は机を叩きつけるようにして叫んだ。「君たちは私を守るためにいるんじゃないのか!」

「田嶋さん、落ち着いてください。」弁護士が冷静に言葉を選びながら返す。「今は下手に動くより、法的な対応を整えるほうが賢明です。証拠を無効化するための手続きは進めています。」

「無効化するだと?」田嶋は嘲笑するように鼻で笑った。「奴らが持っているのは私を陥れるための捏造に決まっている!」

「ですが、現状ではその証拠が裁判所に認められる可能性があります。」弁護士は真剣な表情で続けた。「だから、こちらもそれに対抗する策を講じる必要があります。」

「そんな悠長なことを言っている場合か!」田嶋は立ち上がり、部屋の中を行ったり来たりしていた。「もういい。私が直接手を下す!」

弁護士と部下たちは一瞬驚きの表情を見せたが、田嶋の決意を止めることはできなかった。


その夜、サキとカイがホテルで一夜を明かしている間、田嶋は密かに新たな計画を実行に移し始めていた。彼は部下を使ってサキの過去を徹底的に調べ上げ、弱みを握ろうとしていた。

「奴らに反撃する材料を手に入れるんだ。」田嶋は暗い笑みを浮かべながら指示を出した。「もし何も出てこないなら、作り出せばいい。」

一方で、病院内では田嶋に忠実なスタッフが美和の動きを監視し、情報を流していた。美和が何か大きな動きを起こせば、すぐに田嶋に報告が入る仕組みになっていた。


翌朝、サキのスマホに一通の不穏なメールが届いた。差出人不明のそのメールには、サキが過去にアルバイトをしていた職場でのトラブルが捏造された内容として書かれていた。

「これ、田嶋の仕業ね。」サキはメールを見つめながら言った。「私を揺さぶろうとしてる。」

「無視するのが一番だ。」カイがサキの肩に手を置きながら言う。「彼の手口に乗る必要はない。」

だが、サキは毅然とした表情を見せた。「無視するだけじゃ、彼を止められない。次は、こちらから彼の行動を封じるための手を打たなきゃ。」

カイは少し考えた後、頷いた。「じゃあ、どうする?」

「まずはこのメールを警察に提出するわ。そして、私たちが安全でいられるように保護を求める。」サキは決然と答えた。


物語はさらに緊迫感を増し、田嶋とサキたちの攻防は一層激化していく。果たして、この戦いの果てに待つのはどんな結末なのか。波乱の展開は続く。



つづく

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